モバイル空間統計ガイドライン

1.本ガイドラインの目的

本ガイドラインは、モバイル空間統計を作成・提供する際に遵守すべき基本的事項を定めることを目的とします。

2.用語の定義

本ガイドラインの用語の意味は、次のとおりとします。

モバイル空間統計

電気通信サービスを提供する過程で発生する運用データを、社会の情報基盤の構築・整備を目的として統計化した特定の個人を識別できない情報をいいます。公共分野、学術研究分野、産業分野などを提供先として想定し、運用データの一部である位置データおよび属性データに、非識別化処理、集計処理、秘匿処理を行うことにより作成します。

運用データ

電気通信サービスを提供する過程で発生するデータの総称であって、位置データおよび属性データを含むものをいいます。

位置データ

運用データの一部であり、携帯電話などの位置を示すデータであって、データが生じた時刻など、付随する情報を含むものをいいます。

属性データ

運用データの一部であり、電気通信サービスの契約などに際し、契約者から提供されるデータやローミングイン情報から得られる国番号のデータをいいます。

非識別化処理

運用データから氏名や電話番号、生年月日などの識別情報を取り除く処理であって、識別情報を構成するデータの削除、数値の丸め込み、不可逆符号への変換などを含むものをいいます。

非識別化情報

非識別化処理により得られる情報をいいます。

集計処理

非識別化情報から統計的な推計を行うことにより、統計的な「集団に関する情報」を導出する処理であって、人数分布の推計、移動人数の推計、性別・年代別などの属性別の人数構成の推計などを含むものをいいます。

集計結果

集計処理により得られる情報をいいます。

秘匿処理

集計結果に小人数エリアの数値が含まれないようにする処理をいいます。

3.モバイル空間統計の作成・提供に関する基本原則

  1. モバイル空間統計は、第4項ないし第7項に定める作成手順に従い、電気通信サービス利用者個人が特定されない統計的な情報として作成します。
  2. モバイル空間統計は、第8項に定める提供方針に従い提供します。

4.モバイル空間統計の作成手順

  1. モバイル空間統計は、運用データに非識別化処理、集計処理、秘匿処理を行うことにより作成します。
  2. モバイル空間統計として提供されるデータは、上記3段階の処理すべてが行われたものとします。
  3. モバイル空間統計を作成するに当たり、上記3段階の処理は、自動的に行われるものとし、そのシステムは関連する社内規程に従って管理します。

5.非識別化処理

  1. 非識別化処理では、氏名や電話番号、生年月日などの識別情報を取り除くとともに、集計処理用の不可逆符号※1を付与します。
  2. 上記集計処理用の不可逆符号の生成に当たっては、不可逆符号からの識別情報の復元を防止するため、安全な一方向性関数を用います。
  3. 上記一方向性関数としては、例えば、国内外の評価プロジェクトや評価機関※2により推奨されているハッシュ関数※3に基づく、鍵付ハッシュ関数※4を用います。
  4. 鍵付ハッシュ関数に係る鍵※5は、内部での鍵管理者を別にするなど、厳格な運用管理体制を敷きます。
  1. ある入力情報から生成される符合であり、生成に用いた入力情報をその符合から逆算することができない性質を持つもの。
  2. 例えば、国内における暗号技術評価プロジェクトCRYPTRECや米国の国立標準技術研究所(NIST)など。
  3. 出力された文字列からは、入力された文字列を得ることが不可能という特性を持つ一方向関数の一種。任意の長さの文字列を固定長の文字列に変換する関数であり、同一の入力に対しては、対応する同一の文字列が出力される特性を持つ。
  4. ハッシュ関数の一種であり、関数処理において秘密鍵を用いることで、安全性をより高めることができる。
  5. 鍵付ハッシュ関数の処理に用いられる電子的なパラメーター。

6.集計処理

  1. 集計処理では、非識別化情報を集計することにより、人数分布の推計、移動人数の推計、性別・年代別などの属性別の人数構成の推計などの統計的な推計を行います。
  2. 集計処理により得られる集計結果は、第5項における集計処理用の不可逆符号を含まないものとします。

7.秘匿処理

  1. 秘匿処理では、集計結果から小人数エリアを取り除く処理を行います。
  2. 秘匿処理は、公的統計での採用事例や国内外の技術開発動向を参考に、集計結果の有用性および個人特定防止の観点から適切な手法を用いて実施します。

8.モバイル空間統計の提供

  1. モバイル空間統計の提供に当たり、提供時の契約条件において公序良俗に反する利用を禁止するとともに、利用目的を定めるものとします。
  2. 提供先によるモバイル空間統計の公開や再提供については、提供時の契約条件により定めるものとします。

9.従業員および業務委託先に対する管理措置

  1. モバイル空間統計の作成および提供に係る組織の情報管理責任者(以下、管理責任者という。)は、モバイル空間統計を取扱う社員等に対し、本ガイドラインに基づく安全管理が図られるよう、必要かつ適切な監督を行います。
  2. モバイル空間統計の作成および提供に係る業務を業務委託する場合、管理責任者は、当該モバイル空間統計の安全な管理が図れるよう、当該委託先に対して必要かつ適切な監督を行います。

10.運用データ利用停止手続き

  1. お客様から、モバイル空間統計への運用データの利用を停止するようお申し出があった場合、当該お客様について、運用データの利用を停止します。
  2. 運用データの利用を停止したお客様から利用再開の許可を得た場合、許可時点以降に生成された当該お客様に関する運用データをモバイル空間統計の作成に利用できるものとします。
  3. 運用データの利用停止手続きおよび利用停止解除手続きはシステムに反映されるまで数日かかります。
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