同社が供給した築30年前後の二世帯住宅で建設時の子世帯(243件)と孫(134件)に調査を行ったところ、同居開始時は平均で60代だった親世帯が現在は80代となり、約半数が亡くなっていることが分かった。
一方、平均で30代だった子世帯も、現在は同居開始の親世帯の年齢と同じ60代になり、当時平均で7歳程度だった孫は30代になりと、世代交代が進んでいる。ただし、孫は二世帯住宅から独立する傾向もあって、特に既婚の孫でその傾向が強い。
両親ともに亡くなった場合で、子世帯と孫世帯の二世帯同居に継承している割合は24%。両親の死亡と孫の独立により、平均同居人数は30年で5.5人から3.5人と減少している。
また、二世帯同居による満足度は91%(大変満足21%。まあ満足70%)で、特に親の老後の世話ができたことが高く評価されている。
さて、約30年同居した結果、二世帯住宅をどういった空間にしたらよいと思うか聞いたところ、世帯別に設置したいという要望が高い順に「キッチン」88%、「洗面台」85%、「洗濯機」80%、「浴室」68%、「玄関」44%となっており、水まわりに関しては分離していたほうがよいという回答が半数を超えた一方、玄関に関しては半数を割り込み、必ずしも2つなくてもよいことが分かった。
※旭化成ホームズでは、二世帯住宅を「世帯別のキッチンを持つ住宅」と定義し、キッチン設置数が1つの場合は調査対象に含まれていない。
キッチン分離には、別の着目点もある。
親世帯の介護をするようになると、介護保険のいろいろなサービスを利用するようになるが、「訪問介護」(自宅にホームヘルパーが来て、食事・排泄・入浴などの介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援をするもの)の利用割合で、二世帯の建物分離度による違いが大きいという。
際立っているのは、「融合型」(メインキッチンは1つで食事の空間を共有し、他方の世帯にサブキッチンを設けたプラン)で、訪問介護の利用率が8%しかなかったこと。「二世帯間で共用する空間が多くを占めるため、訪問介護者と家族が鉢合わせになる可能性が高く、訪問介護を受け入れづらいためと推察される」と二世帯住宅研究所では分析している。
次の疑問は、二世帯住宅で使わなくなったスペースは、どうしているのだろう?ということ。
詳しい調査報告書を見ると、両親が亡くなることで使わなくなった部屋は、物置として利用したり、家族や来客の寝室として利用したり、趣味や運動をする部屋として利用したりで、第二の個室として使っていることが分かる。特に寝室利用の場合は、別居している孫世帯の帰省時の寝室としてだけでなく、子世帯の夫婦が別寝室にすることで利用されている事例も多いという。
空いたスペースを何らかの目的で使っているとはいえ、単世帯で暮らす場合は掃除だけでも大変だ。有効に活用するには、自らの介護も視野に単世帯が暮らしやすいようにリフォームをしたり、賃貸化を検討したり、あるいは売却して新たな二世帯に譲り渡すことも選択肢になるだろう。
ひとくちに二世帯住宅といっても、立地条件や二世帯の分離度、それぞれの広さなどの条件によって、世代交代のされ方は変わるだろう。二世帯住宅を建てる場合は、世代交代も視野にプランニングをするとよいだろう。