国内

防衛大卒業生25人が任官拒否 安保法制によるリスクも影響か

 安保法制関連法案の国会審議が始まったが、官邸が法案成立への「最大の障害」と懸念しているのは、野党でも国民世論でもなく中谷元・防衛相の存在だという。
 
 記者会見で「(今回の法案で)隊員のリスクは増加しない」と発言して野党の集中砲火を浴びている。失言を繰り返すようでは法案成立も危ういと、大臣のすげ替えも検討されているという。

 不安は自衛隊内にも現われている。この春、防衛大学校では大量の「任官拒否」が出た。卒業生472人のうち、25人が自衛官任官を拒否して民間企業への就職の道を選んだ。昨年より15人増えた。

 防衛庁官房長や防衛研究所長を歴任し、小泉内閣から麻生内閣まで安全保障担当の内閣官房副長官補を務めた安保法制の第一人者、柳澤協二氏(NPO法人国際地政学研究所理事長)が指摘する。

「国会では自衛隊員が攻撃されるリスクの議論ばかりだが、今回の安保法制の重大な欠陥は、逆に“敵を殺さなければならない”場合の法整備がないことです。

 具体的には、安保関連法案を先取りして締結された新・日米協力ガイドラインでは、平時から米艦船の護衛をするなどこれまでなかった運用が求められている。戦闘地域に行かなくても、護衛や後方支援で戦闘に巻き込まれる可能性は十分あり得る。攻撃を受ければ米軍とともに戦うことになり、戦闘では敵を殺すこともある。そうしないと身を守れないわけです。

 軍隊は任務遂行のために武器使用を行なう。使用が間違っていた場合、他国の軍人は刑法とは別に軍法会議で裁かれる。しかし、日本の憲法は軍隊としての武器使用を想定していないため、自衛隊員は警察官職務執行法に基づいて『正当防衛』『緊急避難』の武器使用しかできない。自衛官が戦闘で敵を殺害した場合も日本の刑法で裁かれるわけです。

 そんな状態で海外での後方支援活動をさせられることが、自衛官にとって大きなリスクなのです」

 安保法制は自衛隊員が敵に攻撃されたら“丸腰”で立ち向かえといっているも同然ではないか。任官拒否が増えるのは無理もない。

※週刊ポスト2015年6月12日号

関連記事

トピックス

裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン