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「幸せなリストラ」を実現するには?

リストラ=解雇が本来の意味ではない

長野県東北信を拠点とするスー

「幸せなリストラ」を実現するには?

パーマーケット「マツヤ」32店舗のうち、6店舗の閉鎖が決まり、地域に驚きの声が広がっています。また、ソニーがパソコン事業を売却することにより、その組み立てを一手に担っていた安曇野市の「ソニーEMCS長野テクノロジーサイト」も企業体制が大きく変わり、大規模なリストラが報道されました。企業の閉鎖、体制変化に伴って発生するリストラ。そもそも「幸せなリストラ」自体があり得るものなのでしょうか?

まず、リストラの正確な意味を確認しましょう。英語でRestructuring(リストラクチュアリング)と書きます。意味は広辞苑によりますと、「不採算部門の整理、人員削減等の手段によって事業内容を再編成すること、経済用語で再建の意味」とあります。リーダーズ英和辞典には、「業務内容の再編成、事業再構築」とあります。つまり、現在の日本人が一般的に認識している「解雇」という直接の意味ではありません。

法律は安易な解雇を認めない

「企業が事業を存続できなければ、雇用を継続させることはできない」ということは誰もが理解できることかと思います。そして、そのためには時流に合わせた事業の再編や、それに伴う人員整理があることは仕方ないというのも誰しも納得できるはずです。しかし、それが自社および自分の身に降りかかったら誰もが嫌だと思うでしょう。それが人間です。

国としてもリストラの一環として容易に従業員を解雇することを認めてはいません。労働契約法16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とあります。つまり、世間一般的に考えて「それじゃ仕方ない」というように認められなければ、解雇は認めないというのが、法律上の見解です(実際にはこんな単純ではなく、様々な要件を検討して有効か無効かを判定します。なぜなら、労働者は失業すると生活基盤を失いかねないため、安易には解雇をできないようにしているのです)。

「幸せなリストラ」は労使のWin-Winの構築で実現可能

簡単に解雇はできないと言っても、時代の流れに伴って企業や事業にも栄枯盛衰、諸行無常の波は押し寄せます。また、リストラは、それを実施する側の企業にとっても社会的信用やブランドイメージの低下というリスクをもたらします。リストラは会社にとっても社員にとっても痛手なのです。それでも時には断行しなければ、企業自体が存続できなくなります。そこで、どうすれば「幸せなリストラ」が可能なのかを探っていきましょう。

1.正社員は期間の定めのない社員だと心得る
正社員は期間が定められていないだけで、定年までの身分保証がされているわけではないと緊張感を持つことが必要です。

2.就職(就社)がゴールではないと心得る
今の時代「真面目で無遅刻無欠勤」なら評価されると思わず、社員各自が「明日は我が身」の緊張感を持って自己啓発に取り組む姿勢が必要です。まさに努力しない者は自然の法則と同じく淘汰されると心得ましょう。

3.自社にしか通用しないスキルを可能な限り無くす
企業は、自社にしか通用しない技能や資格を可能な限り排除し、他社でも通用するものを訓練や研修を通して社員に身に付けさせてあげましょう。

4.ジョブローテーションを導入する
企業は、ある一定の期間を区切ってでも良いので、他部署や他の業務に社員を就かせるべきでしょう(職種限定採用者は難しいですが)。そうすることで、いざ事業再編となって異動を打診されても拒む社員が減る可能性があります。

5.再就職支援を行う
企業は、どうしてもリストラしなければならない場合、対象者に転職先の斡旋をしたり、転職に必要な技能を身につける支援をしてあげましょう。再就職支援業者を活用するのも手です。会社が誠意を見せることで解雇された社員は会社への怨念がやわらぐはずです。

法律で解雇が制限されているとはいえ、企業の事業再編は避けられません。大事なのは、両者がWin-Winの関係になるにはどうすべきかを労使双方が考えて行動することです。 社員自身も常に「自身を再構築」するという気概を持って仕事に取り組んでいくことが必要といえます。

「人財」を育て企業の健全な存続を支援するプロ

佐藤憲彦さん(さとう社会保険労務士事務所)

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