マンションの共用施設も進化をみせ、最近では「女子会ルーム」や「囲炉裏部屋」、「カプセルカラオケ」が設置された物件も登場しているようだ。早速現地を訪ねて、マンション共用施設の最前線をレポートしてきた。
マンションの共用施設にもさまざまなものがある。特に大型物件では販売促進の目玉として、プールや温泉、フィットネスクラブといった豪華な施設が設置されることもあった。しかし、メンテナンスのコスト、運営や維持管理面を考えると必ずしも成功と呼べないケースもあり、最近では”ハデ”な施設は少なくなってきている。しかし、そのトレンドに逆らうようなマンションが登場した。
「ザ・ミリカシティ」は大阪府吹田市の丘陵地帯、MBS千里丘放送センターの跡地で建設が進む総戸数1284戸の超大型マンションだ。そのうち、先行開発された「ミリカ・ヒルズ」(総戸数633戸)ではすでに入居も始まり、現在は「ミリカ・テラス」(総戸数651戸)が販売中。この「ミリカ・テラス」に女子会ルームや囲炉裏部屋という斬新な共用施設が設けられるそうなので、現地を訪ねてみた。
このマンションギャラリー(販売センター)は単なるモデルルームではない。代表的な共用施設を実物大で再現し、その使用感を体験できるのだ。1300戸近い大規模物件だからこそできる仕掛けで、まるでテーマパークのようでもある。
「ミリカ・テラス」の街づくりのコンセプトは「人生を楽しむ家」。共用施設も、人生を楽しむための設備がそろっているようなので、まず特徴的なものをご紹介しよう。
「女子会ルーム」「囲炉裏部屋」「ログハウス」は午後0時から翌朝9時まで、「キッズハウス」は午後3時から翌朝10時まで使用でき、料金は1日1000円。
どうだろう、共用施設の常識を覆すようなものばかりで驚く読者も多いのではないだろうか? それもそのはず、これらの施設に共通するテーマは「週末、秘密基地」とのこと。どういった狙いがあるのか、開発事業者である大京の岡本史夫業務管理部長にお話を伺ってみた。
「大切にしたのは住み手の方のひとりひとりの顔です。施設を使う人を”居住者”という言葉でくくるのではなく、父親、母親、子ども、祖父母といった「個人」がそれぞれに使いたくなる施設、また個人の集合である「家族」や「友人」、「仲間」たちと楽しめる施設、そしてコミュニティを広げていくための基地となるような施設を目指しました。施設を指す名称も基地にあやかってミリカベースと名付けました」と語る。
この考えは3つに分けられた「ミリカベース」のグルーピングをみてもハッキリしている。
●コモンゾーン…学習施設「スタディラボ」、「フィットネススタジオ」など
●アジトゾーン…「女子会ルーム」、「キッズハウス」、「囲炉裏部屋」、ドラムやキーボード等完備の防音仕様「ミュージックスタジオ」など
●コクーンゾーン…ひとりで音楽や映画を楽しめる「フリーカプセル」、「カプセルカラオケ」、ネットカフェのような個別空間「カプセルスタディ」、ひとりで運動ができる「カプセルフィットネス」など
「コモン」⇒「アジト」⇒「コクーン」になるほど「個」のための施設という色合いが濃くなっていく。特に「コクーン」は「まゆ」という意味でもあり、まさに「まゆ」に包まれるようにひとりきりで過ごすための施設になっているのだ。
このほかに、木製遊具で遊べる「冒険の丘」、宿泊施設「ログハウス」、「バーベキューテラス」、「ドッグラン」といったアウトドア空間の施設や、クルマの整備やDIYにも使える「ミリカガレージ」、ヘルシーメニューで人気の「タニタ食堂」のメニューが食べられる食堂も設置されて食事もできる予定だ。
実は共用施設はこれだけではない。先行して開発された同じ敷地内の「ミリカ・ヒルズ」(総戸数633戸)には、多くの住人が集まって利用できるような大型施設がすでに完成しており、相互利用が可能なのだ。一例を挙げると
・英語教育を重視した保育園「キンダーキッズインターナショナルスクール・ミリカ」(入園手続きが必要)
・番組制作も学べる「ミリカラジオステーション」
・英語が飛び交うカフェ「インターナショナルカフェ」
・異文化を味わえるクッキングスタジオ「グローバルキッチン」
・バスケットもできる体育館「スーパーアリーナ」…などだ。
万博公園にも近接し、世界に情報を発信してきた放送センター跡という”土地の記憶”を大事にして、この街で育った子どもたちが世界へ羽ばたいていけるようにと「グローバル&情報発信型」で、個性の強い施設が設けられているのが特徴。こうした大型施設がそろっているからこそ、「ミリカ・テラス」では個を重視した秘密基地をつくることができたということもいえるだろう。
共用施設に関しては、「ハード(設備)をつくっただけでは活用されない、いかに運営(ソフト)するかが重要」ということがよく言われるが、「ザ・ミリカシティ」ではハードとソフトの融合がすでに動き始めている。
例えば、「ミリカ・ヒルズ」では今年2回目となるハロウィンパーティーが先日開催され、800名以上の参加者で大いに盛りあがったそうだ。管理組合が主催するもので、参加者は仮装が必須なのだが、撮影大会や、大人向けのパーティー、仮装コンテストも実施されて大盛況だった。このイベントは、何百人もの参加者を収容できるアリーナという「ハード」が存在しているから実現できたともいえるだろう。
さらに、ミリカ・テラスが完成すれば「集団」と「個」のバランスをうまくかき混ぜながら、コミュニティの潤滑剤となったり、住み心地をアップさせてマンションの価値を高める役割を果たしてくれるかもしれない。
大京の岡本氏はこうも語る。
「”使われない共用施設は悪だ”、と考えて全体の設計をしました。管理費を圧迫しないように設置コストやメンテナンスコストも抑えているので、利用料はいただがなくても運営できるのですが、無料にすると混乱を招きそうなので、安価な設置をしています。住民の皆さんが積極的に活用して、どんどん使いやすく改良していただくのが理想的ですね」
マンションの共用施設は住み手のもの。「ザ・ミリカシティ」は共用施設における「ハード」と「ソフト」、そして「集団」と「個」のバランスを保っていくことを目指した、新しいタイプのマンションだといえそうだ。
実際にどう使われていくのか、5年後10年後の姿に興味を掻き立てられる。
※共用施設の利用規程や料金は2014年10月時点のものです