住まいの雑学
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2013年2月9日 (土)

札幌観光のついでに見ておきたい、雪国ならではの建築事情

雪国ならではの"長い冬を楽しむため"の建築事情。地域性と建築の密接な関係とは(写真: iStockphoto / thinkstock)
写真: iStockphoto / thinkstock

現在「第64回さっぽろ雪まつり」が開催中だ。今年も大雪像や市民雪像、そして国際色豊かな雪像など、バラエティに富んだ数々の雪像が展示され、また、氷彫刻コンクールなどのイベントも行われる予定となっている。

ところで、この札幌がある北海道といえば、言わずもがな雪国だ。それゆえに、本州とは違った雪国ならではの工夫がなされた家々がみられるという。例えば、屋根が三角に尖っていたり、玄関フード(寒さを防ぐためドアが二重になっている)があったりなど、さまざまな特徴があるらしいのだ。

そこでここでは、北海道の建築設計事務所に、雪国ならではの住宅の特徴を聞いてみることにした。今回お答えいただいたのは、札幌市の1級建築士事務所、株式会社ATELIER 02の代表取締役である大杉崇さん。個人住宅をはじめ、病院、別荘などを数多く手掛ける、1級建築士だ。

「以前の北海道は雪の重みの問題から、落雪屋根といったいわゆる三角屋根が主流でした。しかし都市化が進むにつれ、近隣との雪の問題から、箱型形態の建物も多く見られるようになりました。玄関フードは、玄関前に小さな前室を設け、冬の冷たい風が直接家の中に入り込まないようにした北国ならではの工夫です。ただ現在では暖房設備も充実していることから、玄関フードを新築で設ける家は少なくなりつつあります」

なるほど、最近では三角屋根や玄関フードは、減少してきているようだ。ほかにはどんな特徴があるのだろうか?

「北海道の建築は寒冷地がゆえに、本州と比べ暖房負荷が大きく、現在では断熱、気密を向上させてエネルギー負荷を削減する工夫がなされています。窓ガラスを見ると、新しい住宅ではLow-E(ローイー)ガラスといった、断熱性に優れたものを多く用いています。また、歴史的建造物以外では本州のように瓦を用いた建築はほとんどありません。これはかつての入植時に、本州から瓦を運び入れる手間があったり、瓦自体が高価であったこともあり、一般に広がらなかったようです。さらに、本州のように台風の心配もあまりないことから雨戸がある家をつくることもほぼありません」

気候だけでなく歴史の面からも、本州とは異なる建築の地域性があるということか。また、大杉さんは次のようにも語ってくれた。

「北海道の家は、暖房設備が大変整っているので、本州の家に比べてむしろ暖かく過ごせるかもしれません。私が進学のため本州からこの北海道に来た当時、友人の自宅に招かれたときには、室内はまるで春か夏のような温度となっており、みなさん薄着で過ごしていたことを思い出します。現在ではエネルギー事情の問題から、当時のような光景はあまり見られなくなってきていますが、北海道の冬の住宅は暖かで、とても気持ちのよい環境です。長い冬を楽しむ工夫なのだと思います」

南北に長い日本列島。たしかに台風が多い沖縄など南の地域では、石積みの塀や低い屋根など、それぞれの“工夫”がなされた建築が見られる。当たり前のことかもしれないが、地域性と建築には密接な関係があるというワケだ。

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