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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年6月26日 (水)

インスペクションのガイドラインを国交省が策定。そのポイントは?

写真: liquidlibrary / thinkstock
写真: liquidlibrary / thinkstock
【今週の住活トピック】
「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定/国土交通省

http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000464.html

中古住宅流通市場の活性化策として、政府は「ホームインスペクション」の普及を掲げている。6月17日に、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定したと公表した。その背景とガイドラインの主なポイントについて、見ていくことにしよう。

インスペクションの適正な業務実施と、トラブルの未然防止が狙い

国土交通省がインスペクション・ガイドラインを策定した経緯は、こうだ。

中古住宅は、新築時の品質や性能の違い、その後の維持管理や劣化状況によって、「物件ごとの品質等に差がある」ことから、購入する際に品質などに不安を感じることが多い。その不安を払拭するためには、「売買時点の住宅の状況を把握できる」インスペクションが効果的で、消費者のニーズも高まっている。そこで、政府の『中古住宅・リフォームトータルプラン』においても、インスペクションの普及を掲げていた。

一方で、インスペクションについては、「現場で検査を行う者の技術力や検査基準等は事業者ごとにさまざまな状況」にある。そのため、ガイドラインを策定することで、「どの検査事業者が行ったかによらず同様の結果が得られる」ようにして、「インスペクションの適正な業務実施、トラブルの未然防止」を図ろうということだ。

今回のガイドラインは、目視を中心とする基礎的なもの

まず、ガイドラインの前提を押さえておこう。

実際にインスペクションは、さまざまな現場で行われている。新築入居時の内覧会での検査、リフォーム工事の竣工時の検査などでも活用されている。しかし、今回のガイドラインは、「中古住宅の売買時の検査」に限定している。

また、中古住宅の売買時の検査としてのインスペクションでも、中古住宅の現況を把握するための基礎的な「現況検査」、劣化の生じている範囲や不具合の生じている原因などを把握するための「詳細なインスペクション」、現況からさらに性能を向上させるために性能を把握する「性能向上インスペクション」の段階に分かれる。今回のガイドラインは、あくまで、一次的なインスペクションである「現況検査」に関するものだ。

したがって、ガイドラインの検査方法としては、目視を中心に、住宅の傾きやひび割れの大きさなどを測る一般的な計測器を用いるまでとしている。詳細なインスペクションを行うには、「破壊調査」を行うことになるが、それには住宅所有者の同意を得る必要があることから、対象外とされた。

目視可能な範囲の重大な劣化状況を検査

検査は、対象部位ごとに劣化事象の有無を確認するもので、主な劣化事象とは以下の通り。

・構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの
(例:蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等)
・ 雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの
・ 設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの
(例:給排水管の漏れや詰まり等)

ただし、目視可能な範囲に限定され、容易に移動できない家具などで隠れている部分については、目視できなかったことを報告することとされている。

中古住宅の購入検討者が、インスペクションを依頼する際には、住宅所有者の承諾を取り付ける必要があり、該当する住宅の基本資料を入手して提出することになっている。また、書面により業務委託内容を確認し、検査終了後には、チェックリストや写真などを活用した検査状況を報告書という形式で受け取ることができる。

なお、瑕疵(かし:重大な欠陥)の有無を判定したり、瑕疵がないことを保証するものではないこと、建築基準法などに適合していることを判定するものではないこと、検査時点以降変化がないことを保証するものではないこと、などの留意点があるとされている。

【図1】既存住宅現況検査における検査項目(一戸建ての場合)(出典:国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」より)

【図1】既存住宅現況検査における検査項目(一戸建ての場合)(出典:国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」より)

中立性の確保が盛り込まれた点に注目

今回注目したいのが、「中立性に関する情報」がガイドラインに盛り込まれたことだ。

第三者の検査事業者が検査することもあれば、瑕疵保険の加入を前提に検査したり、仲介会社が売買促進目的で検査することもあり、中立性を確保するために、以下の点がガイドラインに記載されている。

・自らが売主となる住宅については、インスペクションを実施しない
・検査する住宅において仲介やリフォームを受託している、あるいは受託しようとしている場合は、その旨を明らかにすること
・仲介やリフォームに関わる事業者から便宜的供与を受けないこと
・守秘義務を負うこと

など。

また、検査人の情報(資格や実務経験、講習受講歴)を依頼主に提供したり、検査事業者の情報(免許や検査項目の概要、料金体系等)をホームページなどで公開することなどについても、ガイドラインに盛り込まれている。こうした情報開示がされていけば、住宅購入検討者がインスペクションを依頼しようというときに、事業者を選びやすくなるだろう。

ガイドラインは、最低ラインを指針したもので、強制力のあるものではないが、検査事業者各社がこれに準じて、さらに質の高いインスペクションサービスを行っていくことを期待したい。

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