群馬県桐生市と栃木県日光市の間を運行している列車、わたらせ渓谷鐵道。その沿線地域では「WATARASE Art Project」という、若手アーティストたちによる活動が続けられています。
2006年、群馬県桐生市で活動していた芸術系の大学生たち約10名により発足したこのプロジェクト。駅の放置車両をゲストハウスに再利用したり、文化財の建物にTシャツを貼り付けたり、土地から受けたインスパイアを形にしてきたそう。地域住民との交流も進み、今では参加者が累計100名を超えるほどに成長。新しい作品も次々と産み出されています。
なかでも特に注目なのが、プロジェクトのメンバーである海老由佳子さんが元新聞販売店をリノベーションした建物「シンブンシャ」。こちらのアートスペースで開催されたワークショップを通じて、地元の小学生たちも多彩な活動を行うようになったとか。今年8月には子どもたちが店長となり、自主的にカフェイベントを開催。その詳しい様子をWATARASE Art Project 代表の皆川さんに聞いてみました。
「過疎化の進む地域なので、子どもたちなりに町の魅力を観光客へ伝えたかったようです。それを形にするために起こしたアクションが“カフェ”というのも面白い発想ですよね。ちなみに、お店で提供したメニューは、すべて子どもたちが考えました。地元の和菓子店へ行ってオリジナルお菓子を発注したりして。もちろん調理などは保護者の方々がサポートしましたが、ポスターづくりから接客まで小学生の女の子たちが頑張ったんですよ」
限定出店のため1週間ほどでイベントは終了しましたが、結果は大成功。今後も純粋な視点でアイデアを出し合いながら活動を続けるそうです。
しかし、プロジェクトの根本にある考えは、子どもたちの想いとはずいぶんと違う様子。
「元々、自由に表現ができる場を求めていただけなんです。だから僕たちに“まちおこし”という意識は一切ありません。そもそも地元出身のメンバーもいないので、地域振興なんていうと押し付けがましいかなって。ただ、結果として地域の方々が町のためになっていると評価してくれるのであれば、とてもうれしいことですね」
今後は個人活動の集合体であるプロジェクトを、地元の企業や行政などと協力し、ひとつの大きなイベントに発展させたいという皆川さん。そんな若者たちが好きなことをできる環境が、なにより地域を盛り上げる"まちおこし"につながっていくのかもしれません。
WATARASE Art Project
HP:http://www.watarase-art-project.com