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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年1月30日 (水)

2013年度「税制改正大綱」決定。今後の住宅税制と購入環境への影響は?

2013年「税制改正大綱」決定。今後の住宅税制と購入環境への影響は?
Photo: iStockphoto / thinkstock
【今週の住活トピック】
2013年度の与党「税制改正大綱」決定

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf085_1.pdf

自由民主党・公明党が決定した2013年度の「税制改正大綱」が公表された。そのなかで、住宅に関する税制を取り上げて見ていくことにしよう。

住宅関連減税は軒並み延長だが、消費税増税の影響を緩和する内容も

実は、例年の税制改正大綱の内容と大きく異なる点がある。通常は予算の手当ての問題もあり、2013年度に新設する税制や期限切れ(=適用期限が2012年12月末日まで、または2013年3月末日まで)の税制の延長や拡充・縮小についてまとめられていた。ところが今回は、2013年に期限切れとなる税制以外についても言及されている。

現行の住宅に関する減税としては、大きく分けて以下のようなものがある。
(1)住宅ローンを利用して住宅を購入したり、リフォームしたりする場合、ローンの一部を所得税などから最大10年間控除する(住宅ローン控除)
(2)長期優良住宅を新築する際に、性能強化にかかった費用の一部を所得税から控除する
(3)住宅の耐震、省エネ、バリアフリーリフォームをする場合、工事費の一部を所得税から1年控除する(投資型減税)
(4)ローンを利用して、住宅の省エネ、バリアフリーリフォームをする場合、ローンの一部を所得税から最大5年間控除する(ローン型減税)
(5)住宅の売買やリフォームの契約をする場合、印紙税を軽減する
(6)住宅の所有権や抵当権について登記する場合、登録免許税を軽減する
(7)住宅の耐震、省エネ、バリアフリーリフォームをする場合、固定資産税を減額する

このうち、期限切れを迎えるのは、(3)(5)(6)(7※耐震を除く)のみだが、今回の税制改正大綱では上記すべてで減税措置を延長するとしている。しかも、(1)(2)(3)(4)(5)については、2017年末日まで延長し、2014年4月以降は拡充するようになっている。
※ただし、省エネ、バリアフリーリフォームの減税については、控除額は拡大するものの対象となる工事費用の条件が30万円から50万円に引き上げられて厳しくなる。

その理由は、もちろん「消費税増税の影響を緩和する」ことにある。消費税率は2014年4月に8%、2015年10月には10%まで引き上げられる予定だ。1997年に消費税率が3%から5%に上がった時、増税前年の駆け込み需要があったが、増税後はその反動で需要が減少したと言われている。そのため、住宅の新築や購入、性能を強化するリフォームも含めて、需要を平準化しようというのが狙いだ。

消費税の影響は減税拡充で平準化されるのか

住宅購入の場合の消費税は、土地は非課税だが建物価格(※)には課税される。例えば、土地価格が1000万円、建物価格が2000万円のマンションであれば、消費税は現行の5%で100万円、8%なら160万円、10%に引き上げられると200万円となる。一方、住宅ローンを3000万円借りたとしたら、住宅ローン控除の最大控除額(10年)は現行で200万円、増税により拡充されると約265万円(金利2%で固定した場合)となる。消費税が現行の5%の場合と8%の場合では、消費税アップ分と住宅ローン控除の拡充分がほぼイーブンになるが、10%に上がると消費税増税の影響が大きくなるという計算になる。
※消費税納税業者ではない個人が売主の中古住宅の場合は、消費税がかからない

もちろん、建物価格やローンの借入額、金利によって計算の結果は異なる。建物価格が高いほど消費税増税の影響が大きく、ローンの借入額が多いほど住宅ローン控除拡充の影響が大きくなる傾向がある。さらに、各世帯の納めている所得税の額によっても違いが生じる。所得金額の低い人や家族が多いなどで控除額が多く所得税の納税額が少ない人などは、所得税を全額控除しても控除枠が余る場合が多い。住宅ローン控除の額を所得税で差し引きできない分を住民税で控除することができ、その額を引き上げる(最高で年間9.75万円→13.65万円に拡大)としているが、それでもなお差し引きできない分については、具体的な内容は決まっていないが給付措置を検討することとなっている。また、消費税が10%に上がるときには、軽減税率の導入が検討されており、その内容によっては10%に増税された場合の影響が緩和される可能性もある。

両親や祖父母からの資金移転を促進し、富裕層には増税を

ほかにも、今回の税制改正大綱には、相続税や贈与税についても言及している。2017年以降の贈与や相続に適用されるので、まだ先のことではあるが、両親や祖父母から子や孫への贈与はしやすくなる一方で、それ以外の場合で高額な贈与については税率が上がる。相続税については、控除される額が大幅に縮小されるので、相続税を納める世帯が増加するとともに、高額な相続については税率が上がるようになる。

住宅取得時に両親や祖父母から贈与を受ける場合は、2014年までは非課税枠(500万~1200万円)があるので、これを利用することをお勧めする。多額の贈与であれば「相続時精算課税制度※」を利用する方法もあるが、相続時精算課税制度の利用については、慎重に検討したほうがよいだろう。というのも、これまでは相続税の控除額が大きかったので、相続税が課税されるのは5%以下しかいなかった。相続時精算課税制度を利用した贈与分は、相続時に相続財産と見なされるのだが、控除額の枠内におさまれば相続税を納める必要はない。しかし、上記のように控除額が大幅に縮小されると、相続税が課税されるケースが増えてくるからだ。
また、遺産額が多く相続税が課税されると予想される世帯は、現金等より不動産で相続させたほうが課税額は減る場合もあるので、長期的かつ総合的な視野で、子や孫に住宅取得の支援をする方法を検討するのがよいだろう。
※相続時精算課税制度とは、親から子どもへ2500万円までの生前贈与については贈与税として課税せず、相続時に相続財産として課税対象とするもの。

さて、税制改正大綱についてはまだ政府案であり、最終的に決定するのは国会での可決が必要となる。期限切れの延長については2012年度中に決定すると思われるが、国会審議の行方などによっては年度をまたいで成立するものが生じる可能性もある。

住宅購入環境については、住宅取得やリフォームに関する優遇措置が軒並み延長されるので、好環境が続くことになる。一方で、消費税増税が目前に迫り、増税前後の損得勘定の算盤をはじく必要がある。契約から竣工までの期間が短い一戸建てやリフォームの場合と竣工まで期間が長い新築マンションなどでは、段取りや駆け込み需要の大小に違いもあるだろう。また、景気次第では住宅ローンの金利が上昇し、負担が増える可能性も無視できない。
予測が難しい要因が複雑に絡んでいるだけに、けっきょくは金銭的な損得より、家族で快適な生活を送れる住宅となるかどうか、そんな基本に立ち返ってマイホームを考えるのがよいだろう。

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