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自宅の一部を開放「家を開く」
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西村 祥子
2013年5月17日 (金)

30軒以上が自宅開放!街を元気にする活性化の新手法とは? 後編

五月が丘まるごと展示会参加を示すのぼり(写真撮影:古石真由弥<スタジオケンゾー>)
写真撮影:古石真由弥<スタジオケンゾー>
広島市西部にある「五月が丘」という古い団地で、5月1日から3日間開催された「五月が丘まるごと展示会」。団地内の住人が自宅を開放し、趣味や特技を活かした作品展示やお茶会、映画上映会などを行うこのイベントは、今年で7回目を迎えるという。多くの人でにぎわったイベント当日、開催の経緯を知る事務局の倉本さんに話を聞いた。

街の元気をアピールし、住民も元気になるイベント

「五月が丘まるごと展示会」が初めて行われたのは2007年のこと。発起人は、この団地に住む彫金作家の坂田玲子さんと、陶芸家の山田順子さんだ。五月が丘に縁のあった画家の宮迫千鶴さんから、街ぐるみのアートイベントとして有名な「伊豆高原アートフェスティバル」の話を聞き、「五月が丘でもできないだろうか?」と考えたのが発端だという。

「五月が丘が『高齢化が進む団地』と紹介されているのをテレビで見たことがありますが、住民は全くそんなことは思っていません。団地の外の人にも参加してもらうことで、こんなにパワフルな人が多く住むこの街のよさも、イベントで体感してもらえたら」と倉本さん。

はじめは20に満たない数だった参加者も増え、今では住民自体も楽しみに準備するイベントに。また、住民との触れ合いのなかで街の魅力を伝えることで、「ここに住みたい」というファンを増やし、街全体を活性化することにも成功しているようだ。

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【画像1】笑顔が素敵な事務局の倉本さん(写真撮影:古石真由弥<スタジオケンゾー>)

ルールはつくらず、自由に参加できるのがいい

そもそもアーティストが多く移り住んでいる伊豆と違って、五月が丘はごく普通の会社員家庭が多いベッドタウン。参加者も、アーティストではなく、趣味で作品をつくっている人が多い。「参加テーマは別になんだっていいんです。『趣味でこういうのつくってるんだけど、参加できるかな?』という感じで、気軽に参加してもらえれば…」と倉本さん。

また、「主体となっているのが女性たちということもあり、面倒な規制は一切なし。始めるのもやめるのも、お休みするのも自由。そんなゆるいつながりのなかで楽しくやっています」とにこやかに話してくれた。

住民たちの間に、新たなつながりを生み出す効果も

イベントを始めてから「同じ趣味の人が身近にいると分かって、交流できるようになった」と話す人も多いという。高齢化も確かに進んで一人暮らしの世帯も多いなか、「イベントで知り合って声を掛け合うようになった」という声も。「ほかの街から引越してきて、イベントを通して街に溶け込みつつある人もいますよ」と、倉本さんが紹介してくれたのは、パッチワークや布小物などを制作している谷さんだ。

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【画像2】「義母が1人で暮らしていた夫の実家に引越してきたのですが、知り合いも全くいなくて…。そんなとき、このイベントを知って、思い切って問い合わせしてみたんです。参加をきっかけに同じ手芸関係の制作をされている方から連絡をもらったり、少しずつ知り合いも増えてきました。今では娘も一緒に、作る楽しさを満喫していますね」(谷さん)(写真撮影:古石真由弥<スタジオケンゾー>)

全国的にも、高齢化が進む団地が増えている昨今。街やそこに暮らす人々を元気にする試みの一つとして、「五月が丘まるごと展示会」の開催はとても面白いケースだと思う。街の元気は人に伝わり、結果的に新たな住民を街に呼び込んで、団地にとっての好循環を生み出している。来年はまた参加して、参加住民の方との楽しい会話を楽しみたいものだ。

若手アーティストにもアピールの場を

倉本さんは、自身が出会ったアーティストにも声をかけ、イベントに誘っている。この日は、若手日本画家の荒川智史さんやパフォーマーのKURAUさんが参加。KURAUさんは団地内のお肉屋さん前で「動くマネキン」のパフォーマンスを披露。道行く人の注目を集めていた。 

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【画像3】団地の一角に立つ「動くマネキン」パフォーマンス(写真撮影:古石真由弥<スタジオケンゾー>)

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自宅の一部を開放「家を開く」 自宅の一部を教室やカフェにしたり解放スペースにしたり。仲間や地域との交流を楽しむ暮らし方があります。
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