さまざまな作品展示のほか、住まいや庭の公開も立派なテーマ
自宅公開のテーマはさまざま。陶芸や手芸などの作品展示はもちろん、普段からお世話している庭を公開する人や、使っていない純和風の離れを活用して、知り合いの和小物を展示する人もいる。また、このイベント自体、他人様の家の中を公然と覗き見ることができる珍しい機会でもあり、作品を展示しているその室内空間自体に興味津々という人も（私も含め）多かったように思う。実際の公開の様子を、いくつか紹介してみよう。
【画像1】このイベントの発起人の一人、坂田さんのお宅では、自宅の一部と駐車場部分を開放して作品を展示。坂田さん自身はジュエリーや着心地の良い洋服などを制作し、ご主人が鉄アート、娘さんもバッグなどの制作を手掛ける。さらには、参加最高齢83歳の貞永さんの草木染手編みセーターなども展示し、ひっきりなしに多くの人が訪れていた。（写真撮影：古石真由弥＜スタジオケンゾー＞）
【画像2】毎週火曜日の午前中に、絵画好きの仲間が集まって絵を描いているという岡田さん。この日は、もとは八百屋だったという自宅の一角でメンバーの作品を展示。「このイベントのおかげで、同じ趣味の仲間も増えました。今はワンコインで気軽に参加できる絵画教室もやっています」。家の外壁を覆う見事なツタに、足を止めて眺めている人も。（写真撮影：古石真由弥＜スタジオケンゾー＞）
【画像3】今は使っていない純和風の離れに、和の雑貨を展示していた多田さん。「もともとはお客様があるときに、母が食事を振舞ってもてなすのに使っていたんです。こういう機会に、改めていろんな人に見てもらえるのもいいものですね」。和の庭とも美しく調和し、畳に腰を下ろすと、つい長居をしてしまいそう…。（写真撮影：古石真由弥＜スタジオケンゾー＞）
【画像4】300種類を超える草木を楽しめる、緑豊かな庭を公開していたのは高田さんだ。「できる限りつくり込まず、自然な形で草木を楽しめるようにしています」。バス停に近いので、普段から庭を気にしている人も多いのだそう。この日は珍しい木にはお手製の名札を付けて紹介。写真右の「小賀玉木」は、開いたつぼみに鼻を近づけると、甘いバナナの香りが！ （写真撮影：古石真由弥＜スタジオケンゾー＞）
玄関先で世間話をするように、気軽に楽しめるイベント
広島に来て20年近くになる私だが、五月が丘のイメージは、実は「高齢化が進む古い団地」という感じだった。しかし、この街を訪れてまず驚いたのは、この街の住人の「丁寧な暮らしぶり」。もちろん、築30年を超える古い家が多いのは事実だが、街並みはきれいで、庭先の草花を荒している家もほとんどない。1軒１軒が住まいや庭を大事に暮らしている雰囲気が伝わってくる。
そして何より、イベントに参加している住人たちがとにかくいきいきとしている！ 参加者の中心は60代というが、訪ねていくどの家でも、楽しい会話が留まることを知らない(笑)。展示や住まいはもちろんだが、はじめて会う人とも気軽に話して、なんだか不思議なパワーをもらったイベントだった。
