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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2012年9月3日 (月)

インターネットの“イケナイ不動産広告”って、どんなもの?

首都圏不動産公正取引協議会によると、インターネットによる不動産広告の重大な違反が増えているという。その多くが「おとり広告」と「不当表示」だというのだが、どういった広告なのだろう? こうしたイケナイ広告から身を守る方法はあるのだろうか?

インターネットで多い「おとり広告」の手口とは?

不動産広告は、不動産会社が好き勝手に広告を作成し、消費者に宣伝できないようにルールが設けられている。こうした不動産広告のルールを運用する自主規制機関が、全国に9つある。その一つである首都圏不動産公正取引協議会に、ルールに違反する広告にはどういった傾向があるのか取材した。

インターネットの違反広告でもっとも多いのが、賃貸物件のおとり広告。賃貸のおとり広告とは、実際には借りられない物件を広告することで、次の3つのタイプがある。
1)実際には存在しない、架空物件を広告するもの
2)契約済みで借りられない物件を広告するもの
3)そもそも貸す意思のない(借りられない)物件を広告するもの

ではなぜ、おとり広告を出すのだろうか? 相場より安いなどの魅力的な物件を見せたり、多くの物件数を見せたりすることで、ユーザーからの反響を得て一人でも多くの人を店舗に誘導したいというのが理由だ。広告の物件について知りたくて店舗に行ったら、「たった今借り手がついてしまった」とか、「その物件にはちょっと欠点がある」などと難癖をつけたりして、別の物件を紹介するというのが典型的な手口。

なかには、契約済みになったのに広告を削除することを忘れているという場合もある(その場合でもルール違反)が、契約済みと知っていて継続して広告を出している場合も多い。ほかの不動産会社にばれないように、物件情報の一部、例えば面積や築年月、さらには賃料を変えたりして、架空物件として出し続ける場合もある。

物件をよく見せようとする不当表示も多い

おとり広告のほかにも、広告の不当表示による違反は多い。不当表示とは、ルールに定められた項目などについて表示しなかったり、虚偽の表示をすること。物件をよく見せようというのが、その理由だ。
売買物件では、「特定事項の明示義務」違反がその例だ。例えば、土地の一部が傾斜地であったり、高圧線の下にかかっていたり、有効な利用を阻害する不整形地であったりといったマイナス情報を隠してしまうもの。当然ながら土地や住宅の価格は相場と比べて安くなるが、マイナス情報を隠して広告すれば「掘り出し物件」のように見えるからだ。

賃貸物件では、驚くような不当表示の事例もある。以下は同協会が実際に苦情を受け付けた事例だ。
・ルームシェア物件であることを表示しない
→ 例:賃料2万5000円と表示しているが、実際には15万円の総家賃を6人でシェアする物件だった。
・リノベーション(リフォーム)した時期を建築時期と表示する
→ 例:実際には1962年5月築のものを、リノベーションした2011年9月築としていた。
・安い賃料で表示する
→ 例:当初3カ月間だけ家賃半額キャンペーンを実施。キャンペーン自体は違反ではないが、賃料を正規賃料ではなく、半額賃料を表示し元々の賃料を誤認させた。

また、最近多い違反例が、賃貸物件の諸費用を表示していないもの。今年の5月末にルール改正があり、契約時に「保証会社に支払う保証料」や「鍵の交換費用」などを必要とする場合は、その旨を表示しなければならないと明文化されたが、それまでは悪意はなく単にルールを知らなかったという場合も多く、今回のルール改正が浸透すれば改善されるだろうということだ。いずれにせよ、契約時には敷金や礼金以外にも相応の費用が発生する可能性があると理解しておいたほうがよいようだ。

相場より安い物件は要注意

では、こうしたルール違反の広告から身を守る方法はあるのだろうか?
第1の方法は、相場観を養うことだ。住みたいエリアや駅からの所要時間、部屋の広さなどの希望条件を明確にして物件を検索していけば、ある程度の相場観が養える。相場より安い物件には必ず理由があるので、情報を隠したり偽ったりしている可能性もあると認識しておこう。

第2の方法は、不誠実な不動産会社とは付き合わないことだ。店舗に行ったら、隠された情報を伝えられたり別の物件に誘導されたりといった場合、「それならけっこうです」と断るのがよいだろう。また、明らかに不当な広告だと分かったら、物件を掲載していたポータルサイトの窓口や各地区の不動産公正取引協議会に連絡して調べてもらうこともできる。

なお「SUUMO」では、物件情報を掲載する不動産会社について事前審査を行っているほか、一部の物件をピックアップして、現地調査や掲載会社への物件情報の確認を行うことで、情報の信頼性を担保している。

■広告のルールや違反事例を調べられる
首都圏不動産公正取引協議会‐協議会の概要‐
HP:http://www.sfkoutori.or.jp/info/gaiyou.html
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
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