ちまたでじわじわと話題になっている本がある。高村友也氏の著書「スモールハウス」だ。
スモールハウスとは、駐車場一台分(約12m2)くらいの土地があれば建てられる「極端に小さな家」のことを意味するのだが、高村氏は実際に東京の郊外にこのスモールハウスを建てて生活しているという。なぜこのような生活を選んだのだろうか、高村氏に話を伺った。
「小さい分、普通の家より安価だったり、掃除やメンテナンスの手間が省けたりして、お金や時間の節約になります。何より、子どものころにつくった秘密基地のような、自分だけの小さな空間を得られることができます。また、“小さく住む”ことを心がけることで、大きなローンに縛られない、シンプルな生活が得られるのではないでしょうか。家が小さければ、余計な物を買い込むこともできませんから、何が必要で何が必要でないか、何が幸せに結びついて何が幸せを遠ざけるかを、よく考えながら日々過ごすことになると思います」
なるほど。手が届く範囲に自分の必要なものを置くことで、本当に必要なものが分かるということか。ちなみに、スモールハウスを一戸建てるのに必要な予算はいくらなのだろうか?
「値段は千差万別で一概には言えませんが、販売の先駆けとなったアメリカのTumbleweed社の製品は約370万円です。デスクや収納、ガスヒーター、冷蔵庫、コンロ、流し、温水器、水道管や電線への接続器具などがすべて整っています。材料と設計図では約160万円です。日本にもスモールハウスを専門に扱っている会社がいくつかありますので、問い合わせてみるといいと思います」
高村氏によれば、スモールハウスという選択肢は、これからの社会における生き方の多様性を支えてくれる存在だという。
「スモールハウスとはいわば『究極の断捨離』。『物は少なくていい』という考えを突き詰めていくと、『物を入れておくスペースも小さくていいんじゃないか』という考えに至ります。膨大な資源を消費して巨大な家を建築し、ローンを返すために働き続けるという生活形態に疑問を感じている人は多いはず。住居に何千万円も支払う必要がなければ、人生の選択肢も広がると思いますし、もっと別のことにお金をかけることもできるようになるでしょう」
これまでとは違った価値観によって生まれたスモールハウス。もしかしたら、こうした家が未来のメインストリームになる日が来るかもしれない。