イー・アクセスが下り291Mbpsを実現--20MHz×2幅のLTE実証実験

 イー・アクセスは9月18日、20MHz幅の1.7GHz帯を用いた実証実験の説明会を実施。最大で下り291Mbpsを実現するなど成果を明らかにするとともに、2013年に追加割り当てが見込まれている1.7GHz帯の獲得に向け、自社の優位性を訴えた。

 説明会の冒頭、イー・アクセス取締役名誉会長である千本倖生氏は、同社が追加割り当てを受けることの重要性を訴えるとともに、新帯域の割り当てに向けて3年前から準備していたと説明。「すでに設置しているLTE基地局も新帯域の実装が完了しており、割り当てを受けたら、イー・モバイルの利用者は端末を買い替えることなく、直ちに下り100Mbps以上の高速通信サービスが受けられる」と、割り当て後の準備が整っていることをアピールした。

 続いて同社代表取締役社長のエリック・ガン氏が、イー・モバイルのこれまでの実績を紹介。現在はデータ通信端末に加え、月額3880円で利用できるスマートフォン「STREAM X」の販売に力を入れているほか、顧客満足度を重視する方針も見せている。日経パソコンのスマートフォン・タブレット満足度ランキングで、通信サービス部門の総合1位を獲得したほか、カスタマーセンターを設置しアフターサービスにも力を入れたことで、日経ビジネスの2013年度アフターサポート満足度ランキングで、通信会社部門1位を獲得したとのことだ。

  • イー・アクセス取締役名誉会長の千本倖生氏

  • イー・アクセス代表取締役社長のエリック・ガン氏

  • 最近ではカスタマーセンターを設置するなど、顧客満足度の向上も重視するようになった

20MHz×2幅で高速性を実証、追加投資不要で速度向上

 こうした現状を踏まえた上で、エリック氏は今回の1.7GHz帯を用いた実証実験について説明。同社は現在、15MHz×2幅の1.7GHz帯を保有しているが、総務省の周波数再編アクションプランにより、同社が保有する帯域に隣接している、5MHz×2幅の周波数の追加割り当てが実施される予定となっている。そこで今回の実証実験では、同社が保有する周波数帯と、新規割り当て予定の周波数帯を合わせた20MHz×2幅を用いた性能評価をいくつか実施している。

  • 実証実験の概要。追加割り当てが予定されている帯域を含めた20MHz×2幅で性能評価を実施

 1つ目は、現在提供しているLTEと同様に、アンテナを2本用いた高速化技術「2×2 MIMO」を使った環境において、連続した20MHzの帯域幅を用いた場合と、帯域幅を10MHzずつ2つに分割し、それらをLTE-Advancedの要素技術であるキャリアアグリゲーション(CA)によって結合した場合の通信速度を比較。その結果、連続した帯域幅を用いた方が、CAを用いた場合より高速であり、制御用データが少なくて済むことから、周波数効率も高くなることが分かったという。

 2つ目は、20MHzの帯域幅と商用基地局を用いた上で、アンテナの本数を4本に増やし、一層の高速化を実現する「4×4 MIMO」を用いた通信速度を測定。この環境では理論上、下り最大300Mbpsの通信速度を実現できるが、実証実験では291Mbpsと、最大値に近い値を実現したという。ちなみにエリック氏によると、商用環境で4×4 MIMOを用いた実証実験をするのは、日本では初めてのことで、海外でも例がないのではないかと話している。

 なお、今回の実証実験は商用環境で実施したこともあり、STREAM Xなど、現在発売されているUE Category4(下り最大150Mbpsを実現)に対応した機種での測定も実施した。その結果、20MHz×2幅で下り140Mbps超、平均でも130Mbps台を実現したという。追加割り当てを受ければ、すぐにでも通信速度を向上できるとしている。

  • 商用ベースの基地局を用いた4×4 MIMOの性能評価では、下り最大291Mbpsと、理論値にかなり近づく速度を実現

  • エリック氏も自ら、実証実験環境でSTREAM Xを用いた測定を実施。平均で下り130Mbps程度を実現できたとのこと

  • 会場には、実証実験に利用した端末なども展示されていた

追加割り当ては競争上必要、7年後には下り最大900Mbpsを目指す

 最後にエリック氏は、現在のモバイルブロードバンド環境と、同社の取り組みについても説明。今後UQコミュニケーションズなどが下り150Mbpsを超える高速サービスの提供を予定しており、モバイルブロードバンド競争が一層激しくなると予測。追加割り当てのライバルと見られるNTTドコモも、東名阪のみの利用に制限された20MHz×2幅分の1.7GHz帯を所有しているが、この帯域は周波数再編アクションプランにより、今後他の地域でも利用可能になると見込まれている。

 それゆえ「今回の追加割り当てを受けられないと、速度が伸びず競争から取り残されてしまう」(エリック氏)と、イー・アクセスへの追加割り当てが重要であることを改めて主張。追加割り当てされる帯域と隣接しており周波数帯の利用効率がよいのに加え、1.7GHz帯のイコールフッティングを求める上で、現在保有する帯域幅がドコモより5MHz×2幅分少ないことからも、自社への割り当てを要望したいとしている。

 なお、追加割り当てを受けた場合は、早急にLTEの通信速度を下り最大112.5Mbpsに向上させるとのこと。さらにその後は、3Gに使用している分の帯域幅を空けて、下り最大150Mbpsの通信速度を実現するとともに、2015年以降に同社が利用可能になる700MHz帯とのCAにより、東京五輪が実施される7年後には下り最大900Mbpsを実現したいと語った。

  • 基地局や端末側は既に追加割り当て帯域への対応を進めており、割り当てされ次第追加投資なしで下り最大112.5Mbpsは実現できるとしている

  • 追加割り当て帯域はイー・アクセスの帯域に隣接しているため、最も利用効率がよいとも主張

  • 追加割り当て後は1.7GHz帯の高速化に加え、今後同社が利用可能になる700MHz帯とのCAでさらなる高速化の実現を検討している

 ただ、イー・アクセスは2013年に実質的にソフトバンク傘下となったことから、グループとして見た場合はドコモよりも多くの周波数を保有していることになる。この点についてエリック氏は、経営上同社が独立していることを主張した上で、「ソフトバンクグループの周波数帯を活用するには、既存顧客に端末を買い替えてもらわなくてはならない。顧客満足度を重視する上で、端末の買い替えが不要で高速化できる追加割り当ては必要だ」と答えた。

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