ひときわ暑く、冷房がないとやり過ごせないことも多かった今年の夏。

ビル一括設定のオフィスの空調はキンキンに冷え、外回りや帰宅時には蒸し暑い外をテクテクと。仕事の後には冷えたビールをギュギュっと胃袋に流しこんで、汗ダラダラのまま家に帰ってとりあえず冷房のスイッチオン! ...そしてそのまま、うっかりベッドに入らず寝てしまう。

そんな生活を繰り返していませんでしたか? 冷房に晒され続けた身体は、カチコチに筋肉がこわばります。また、室内と屋外の過度な温度変化の繰り返しを受けた自律神経系も、疲れきって乱れが生じているでしょう。

日が落ちるのが早くなり、多少涼しさがでてきたこの時期だからこそ、「冷え」のケアをスタートすることが大切。今回は、秋の入り口の「今」のタイミングで取り組んでおくべきセルフケア術をお伝えしてきます。

「胃」について考えてみましょう

「胃袋」というものについて、考えたことはありますか?

胃は、内容物を詰め込めば1.2~1.6Lくらいの容量にもなる巨大な袋。胃壁は平滑筋という筋肉の一種でできています。正常な位置に胃があれば、お腹がいっぱいになると肋骨内側のみぞおちの下あたりがポッコリとするはずです。空腹の時にお水を一口飲み込むと、ツーっと冷たさが喉から食道を通って伝わり、胃の壁がひんやりするのを感じることができると思います。

つまり、冷たいものをたくさん摂るということは、巨大な水袋を身体の内側にぶら下げていることになるわけです。

その冷えた水袋の中に、脂っこい食べ物がポトリ、ポトリと落ちていくことを想像すると...、もちろん消化活動はされていきますが、冷めた角煮のように脂が白く固まる様子も想像できて、あまり身体によさそうな感じはしません。

身体の中央部に位置する胃の周辺には、肝臓、脾臓、胃、大腸、小腸など身体の大事な臓器が多数隣接していますので、胃の冷えは周囲の臓器にも影響を与えてしまいます。

また、身体本来のシステムとして備わっている、食べ物をかくはんするための機械的消化と、胃液の分泌で消化を促す化学的消化、そのどちらの能力も冷えによる胃壁の緊張によって、動きが鈍くなります。

つまり胃の冷えは内臓全体の冷えにもつながり、食欲不振、胃弱、胃痛、便秘や下痢、免疫の低下、身体のだるさ、疲れやすさなど、さまざまな不調を引き起こす可能性があるのです。

冷えを撃退する飲み物の選び方

胃の冷えを解消するためにオススメしたいのは、シンプルですが温かい飲み物を摂ること。冬場は暖をとるために温かい飲み物をチョイスしますよね。季節の移ろいに合わせて、まずは少しずつ冷たい飲み物から温かい飲み物に切り替えてみましょう。ただしコーヒー、紅茶、緑茶などカフェインを含む飲み物の多くは身体を冷やす傾向があるとも言われますので、杯数は少なめに。

いつもランチの後に飲むカフェラテを、よりカフェインが少ないほうじ茶や抹茶のラテに変えても良いと思います。もちろんホットで頼みましょう。特に抹茶は血行を促進してくれるビタミンEを多く含みますし、脂肪分のあるミルクと合わせることで脂溶性であるビタミンEの吸収が深まります。また、気持ちをリラックスさせる「テアニン」というアミノ酸を多く含むため、自律神経を安定させる効果も期待できるでしょう。

ハーブティーは手軽なティーバックでもさまざまな種類がありますし、身体を温める作用のあるハーブが配合されているものが多いので、オススメです。アソートパックなどをオフィスに常備しておいても良いでしょう。ハーブティーではおなじみのカモミールのほか、ジンジャー、シナモン、クローブなどのスパイスが入っているものは、身体を内側からホカホカにしてくれるはずです。

朝一杯飲むだけ! スーパードリンク「白湯」

毎朝飲んでほしい温かい飲み物が「白湯」です。白湯とは水を沸かしただけのお湯そのもの。ハーブティーなどと違い「なにも成分が含まれていない」ことが特徴で、だからこそ身体の中の不要物を排出するのに役立ってくれるのです。なにより、誰でもすぐに作ることができます。

インドの伝統医療アーユルヴェーダでも白湯は身体の毒素を排出し、エネルギーのバランスを整える「スーパードリンク」と称されています。アーユルヴェーダ的には、水を火にかけて、沸騰後10分煮立たせて風の要素を入れこむ...などの本格的な白湯の作り方が推奨されていますが、もちろんそこまでやらなくてOK。仮に電気ポットしかなかったとしても、飲むと飲まないでは飲んだほうが良いのです。

シンプルにお水を沸騰させてカップに注いだら、チビリチビリと「すする」ようなイメージで体内に取り込みます。もっとも排出に適している朝のひととき。一杯の白湯を摂るだけで、ぐっと身体が温まります。代謝や消化力も上がり、身体の調子が整う上、必要なのは「水」だけ。やらない手はありませんね。

一度に熱いものをガブガブ飲むと、それはそれで身体に負担がかかかりますので、身体に点滴するような気持ちで少しずつ飲んでみてください。朝だけでなく1日を通じて飲むのもおすすめですが、たくさん飲みすぎると逆に体内に必要な成分が流れていってしまいますので、1日あたりカップ5~6杯までを目安にしましょう。

足首回しと手首回しで身体を活性

身体の中に熱を生み出すのは内臓と筋肉です。温かい飲み物で身体の内側から温めたら、次は筋肉を動かして熱を生み出してみましょう。筋肉は伸縮することで熱を発生させ、血液がその温かさを身体の隅々まで運びます

となると、なんらかの運動をするのが一番なのはもちろんですが、なかなか億劫でできない人も多いですよね。そんなズボラさんでもすぐにできる簡単エクササイズが「足首回し」「手首回し」です。

「前へならえ」のように腕を前方にニュッと突き出したら軽く拳をつくります。その拳を内回りで、あるいは外回りで回転するだけです。

ベトナム発の顔反射療法「ディエンチャン」の創始者Dr.チャウによると、手首は「首」「足首」「股関節」など関節全般の反射区だそうです。この手首回しを毎日やると、さまざまな部位が楽になるとのこと。実際にやってみると20回~30回くらいでも身体がポカポカするだけでなく、パソコンやスマホ疲れした前腕のデジタル筋をほぐすのにも有効です。手首回しだけで四十肩が楽になった例もあるそうなので、疲れない程度に休憩時間にやってみてくださいね。

お家に帰ったら、テレビを見ながら足首回しをしてみてください。片脚を伸ばした状態でもう一方の足を太ももの上に置き、手の指と足の指を組んで足首の関節をしっかりと20回程度回すだけ。日中、靴の中で縮こまった足指がほぐれ、脚全体の重だるさもとれてきます。お風呂に入りながらできれば、一石二鳥ですね。

冷えてしまいがちな、手や足のような身体の末端部分の筋肉を動かしてあげるだけでも、身体の熱を生み出す能力は高まります。

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また、以前の記事でも紹介しましたが、ふくらはぎや足裏の筋肉は、下半身の循環に関する大事なポンプの役割を果たしており、足裏には内臓の反射区やさまざまなツボが分布しています。

フットマッサージを受ければふくらはぎのポンプ機能が活性化するのはもちろんのこと、反射区も刺激され、筋肉と内臓を同時にケアすることができます。

冷えと自律神経系を整えるための全身ケアとしてのフットマッサージ。CHILL SPACEでもご提供していますので、ぜひお試しください。

小松ゆり子/パーソナル・セラピスト

komatsu_profile2014.jpg音楽、カルチャー、リラクゼーションを融合する「relacle」「CHILL SPACE」スーパーバイジング・ディレクター。南青山のプライベート・アトリエ「corpo e alma」を中心にセラピー・セッションやセミナー活動を行う。東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「VITAL touch therapy」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行っている。約12万人以上を動員する音楽フェスティバルSUMMER SONICで10年連続セラピーブースを展開する他、新宿のシェアオフィス「HAPON」でのオフィスリラクゼーション、アパレルブランド「かぐれ」でのセラピーや講座など他業種とのコラボレーションも多数。現代人が都会でバランスを保ちながら生き抜く知恵やプリミティブな五感を取り戻す方法をさまざまな角度からナビゲートする。