イラストレーターを「絵師」と呼称する風潮、その問題点とは?

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 イラストレーターを「絵師」と呼称する風潮、その問題点とは?
 イラストレーターを「絵師」と呼称する風潮、その問題点とは?

togetter「「絵師」という呼称の何が嫌なのか?」のスクリーンショット

アニメや漫画、ライトノベルやCDジャケットなどの作品に欠かせないイラストですが、このイラストを描いている方々を、皆さんは何と呼んでいるでしょうか? 近頃はいろいろな呼び名がありますが、その中でも、「絵師」という呼び方について、疑問が投げかけられています。

イラストレーター=絵師?

ニコニコ動画やpixiv、Twitterなどでイラストをアップしている(描いている)人のことを、総じて「絵師」と呼ぶことが多いようです。しかし、以前から、この絵師という呼び方については、やめてほしいという意見もあり、先日も議論が巻き起こりました。Togetterにまとめられた多数の意見は、延べ3万人以上が閲覧し、大きな反響を呼びました。

「絵師」という呼称の何が嫌なのか?
http://togetter.com/li/587404

「絵師」の意味の移り変わり

そもそも絵師という言葉は、かつての浮世絵師や、伝統芸能の絵を描く専門職の、所謂「職人」のことを指していました。しかしここ数年で、イラストを描くこと・発表することが当たり前の時代になってから、その状況は少し変わっていきました。

「絵師」という言葉の指す意味が、使う人によってバラバラになり、「〜という意味の絵師と呼んでほしくない!」と、認識のすれ違いから摩擦が起きる場面は増えていきました。そこで、「絵師」という言葉は、どのような意味合いで使われる場合があり、そう呼ばれることに対してどうして嫌がられるのか、簡単に大別してみました。

あなたはどういう意味で「絵師」を使ってる?

「オタク文化に関わるイラストを描く人」を指す
ジャンルを限定し、アニメ・漫画・ゲーム・音楽(特に「ボーカロイド」関連)周辺でイラストを手がける人を指す場合がある。そのため、オタク文化関係ではないイラストレーターに対しても、同じように「絵師」と呼ばれると、ジャンル違いである。
プロではないイラストレーターが自虐的に使う
イラストで生計を立てているイラストレーターではなく、イラストを趣味として楽しんでいる人が自らを「絵師」を指すことがある。時には、イラストに自信がなく、自分をイラストレーターなどと大層な肩書で表したくない際に使われることもあり、結果的に絵師=プロでもない、アマチュアという意味で認識されている。あくまで自虐として使われるため、他人から呼称されることを嫌がる。
プロもアマもひっくるめて呼ばれる
逆に、イラストが仕事・趣味という区分も関係なく、すべて同じイラストレーターとして「絵師」と総称するパターン。プロにとっても、趣味でイラストに興じる方にとっても、一緒にされてしまうためにあまり気分は良くない。
とても偉い人のように祭り上げられている感じがするから
元々の語源は、「師」という言葉からも推測できる通り、非常に優れた表現者であり、素晴らしい作品を世に送る職人のこと。そのため、そんな凄い方々と同じ名前でまとめて呼ばれていて気が引ける。そこまでの実力者ではないのに、あたかも実力がある優れたイラストレーター(絵師)であるかのように呼ばれていて違和感がある。

「自分はそんなつもりで使っていない」という主張もあるでしょうが、問題は、「呼ばれている方がどう受け取っているか」なのです。呼ぶ方、呼ばれる方、そしてその中でも「絵師」と呼ばれることを否定する派・中立派・肯定派で意見が分かれ、時として議論がヒートアップすることも。

絵師と呼ぶ・呼ばれることに対して嫌悪感を示す方々の中には、

・本当に絵が上手い人は、絵師と自称しない。
・プロとただの絵描きが一緒くたの呼び名なのはおかしい。
・2文字に略さずとも、イラストレーターとなぜ呼べないのか。
・職業に絵師という言葉は存在しない。
・サブカルチャー臭く、安っぽく感じる。
・イラストで生活しているプロに失礼。

……などの意見があるようです。

イラストを描いて仕事をしている方に、絵師と呼ばれることについて直接うかがったところ、

「ネットスラングや、イラストレーターを無理やり略した言葉のようで、俗っぽいように感じる。絵師=ニコニコ動画やpixiv出身の人=アマチュア上がりという認識で使われることがあるので好きではない」

という意見をいただきました。

否定意見ばかりなのか

しかし中には、「絵師」と呼ぶことに対して肯定的な方もいます。

・絵という言葉に親しみがある。iOS7の辞書にもデフォルトで入っている。
・仕事関係で絵師と呼ばれるので、当たり前かと思った。
・敬意を込めて「師」を付けて呼んでいる。
・イラストレーターと長いのは嫌だし、たった2文字で説明できる。

……なるほど、確かに短くてすぐに理解できそうですね。企業が絵師と呼んでいるならば、それが正解なのかと思う方もいるかもしれません。

ここまで肯定・否定とそれぞれの意見を見てきましたが、中立的な意見をみると、

・何と呼んでもいいけれど、押しつけるのは良くない。
・誰かが呼ばれている分には構わないが、名乗っていると違和感がある。
・師と呼ばれるほどの実力がないから呼んでほしくないのか、絵師=アマチュアだからプロの自分には使ってほしくないのかを、はっきりするべき。

当たり前ですが、人によっていろいろな考え方がありますね。

中にはこんな定義も…

ある大学の研究所では、『絵師とは、アニメや漫画などのポップカルチャーで発達した「目が大きく鼻や口が小さいイラスト」を描く人と定義できる』と言い切っています。絵師を定義することができるならば、このような問題は起きていないのですが……。このように、勝手に「絵師」という言葉の定義を決めてしまうことで、逆に言葉の意味が間違って伝わっている可能性も大いにあります。

もちろんこの場で、この呼び方が正解であり○○と呼ぶべきではないとは言えません。「絵師」と呼ばれることに嫌悪感のないイラストレーターの方もいれば、「絵描き」という呼称を好む方もいます。相手が嫌がらない呼び名であれば、皆さんひとり一人が正しいと思う呼び名で呼んで良いと思います。

これを機に、一度改めて“絵師”という言葉について考えてみるのはいかがでしょうか。

執筆者:ぴの

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