住まいの雑学
100
末吉 陽子(やじろべえ)
2013年11月21日 (木)

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

URの団地で、ヤギを使った除草実験が展開中(写真撮影:筆者)

2013年9月24日から11月29日にかけ、東京都町田市にあるUR都市機構の「町田山崎団地」で、ヤギを使った除草の実験が行われている。国内の住宅団地においては、初の試みとなる「ヤギが雑草を食す」という極めてシンプルな除草法。どのように実施されているのかレポートしたいと思います。

コストカットだけじゃない! メリットいっぱいの「ヤギ除草」とは?

ヤギが除草を担当するのは、全116棟3920戸の大規模な団地内にある、約5000㎡の都市計画道路用地。普段は利用されていないこの場所は、もともと自治会が管理しており、団地の運動会やお祭りなどが行われていたのだとか。

今までは年に1~2回ほどのペースで、機械を使った除草を行ってきたが、今回コスト削減を狙った新たな試みとして、除草の任務を託されたのがヤギ4頭(オス1頭とメス3頭)。それにしても、なぜヤギなのか? 団地を管理するUR都市機構の持田太樹さんにお話を伺った。

「ヤギを使えば、機械除草のように騒音や排気ガスを発生させたり、CO2を排出してしまう心配はありません。近隣に住む人や環境に優しいのがヤギ除草の特徴です。現在、動物による除草は羊やエミューなどを使って行われることもありますが、ヤギは特に大人しく、人なつっこい性格なので、たくさんの人が住む団地に適していると考えました」

飼いやすく環境への適応力も高いヤギは、スイスやフランス、東南アジアなど幅広い国で飼育されている。日本でも戦後間もないころは、30万頭ほどいたといわれるが、現在は約2万頭まで減少。かつては当たり前だったヤギや羊による除草も、現代的な生活が進むにつれて衰退していったようだ。

しかし、数年前から建設会社や環境保全事業を進める企業が、動物を使った除草をシステムとして構築。エコ意識の高まりもあり、河川敷や公園などで、動物による除草を取り入れる地方公共団体も増えてきた。

ちなみに、ヤギの生態は24時間食べるか寝るかのどちらか。基本的に、ヤギの管理とレンタルを請け負っている会社が、3日に1度ほど健康チェックに訪れる以外は、放牧したままなのだとか。1頭あたり1カ月で100㎡分の草を食べるともいわれている。ちなみに、糞はあまり臭わず、すぐに土へ還るという。

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像1】除草前の状態。成人男性の身長くらいの高さにまで伸びた雑草(画像提供:UR都市機構)

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像2】ヤギを放ってから10日で、ご覧の通り見事に除草。ちなみに、ヤギが好んで食べるのは栄養価が高い「くずの葉」(画像提供:UR都市機構)

住民同士のコミュニケーションづくりにもヤギが活躍

また、ヤギを放つ利点は除草だけに留まらない。動物が近くにいることによって、アニマルセラピーという癒やしの効果も期待できるのだとか。

「住民の方が、ヤギの姿を眺めている光景を目にすることがあります。ヤギの穏やかな雰囲気が、人に安らぎを与えてくれるのかもしれません。また、ヤギとの触れ合いを通して、住民のコミュニケーションが活発になればいいなと思います」(同)

行き交う人々からは「何をやってるんですか?」「ヤギが除草してるんですって」「今日もヤギは元気だね」といった会話が聞こえてくる。住民同士の交流のきっかけづくりにも、ヤギが一役買っているようだ。

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像3】この場所に掛かる橋の上からの一枚。真ん中にあるのはヤギの小屋。一応、縄で柵をしているが、塀が高いので逃げ出せない仕組み。東京都内とは思えない、何とも牧歌的な風景

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像4】ちょうどこの日は、団地の近隣にあるカナリヤ幼稚園の園児たちが、ヤギを見学に訪れていた。ヤギと触れ合う前に、除草と環境の関係について紙芝居でお勉強

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像5】ヤギを初めて目にするという子がほとんど。最初はおっかなびっくりの園児たち。先生に促されて、やっとの思いで葉っぱをあげていたが…

ヤギが雑草を食べてお掃除! 団地で始まったエコな除草作戦

【画像6】物静かなヤギに慣れるにつれて、子どものハートに火が付く。「白くてカワイイ」「柔らかくて気持ちがいい」と大人気。なかには、ヤギに抱きついて離れない子も

ちなみに11月23日には、この場所で自治会主催による収穫祭が実施される。今回は、町田市にある桜美林大学山口ゼミの学生も協力する予定だ。その日は、除草で活躍中のヤギも間近で見ることができるコーナーも予定されている。

今後、ヤギによる除草は、全国にあるUR都市機構が管理する団地への導入も視野に入れているそう。まずは、町田山崎団地での実験終了後、除草効果の検証と住民アンケートの結果をみて、実用化が可能かどうか判断されるという。

除草もできて、住民のコミュニケーションにも貢献している有能なヤギ。取材中、のんびりしたヤギの動きに目をとられ、仕事を忘れそうになる瞬間もあったり…。広い庭さえあれば、筆者も飼いたいな、とふと思いました。

●UR賃貸住宅 東京・町田エリア 新着情報一覧
HR:http://www.ur-net.go.jp/akiya/tokyo/machida/wn/index.html#at14
前の記事 海外ではおなじみのホームウエディング! 日本で成功させるポイントとは?
次の記事 加湿器を使わなくてもできる? 手軽な加湿対策を実際にやってみた
SUUMOで住まいを探してみよう