住まいの雑学
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2012年5月22日 (火)

【今週の住活トピック】親の「思いやり消費」が子どものマイホームを後押し

今週の気になるニュース3 ・親世帯から独立した子ども世帯への支出額、3年間で162万円 ・中古流通事業にインスペクションや瑕疵保証などを導入 ・タワーマンション、全国で今後10.45万戸建設
今週の気になるニュースの中から、親から子への思いやり消費ついて深掘りしてみたいと思う。

経済的に余裕のない子ども世帯が住まいを買うときに、親世帯が資金の援助をするケースは多い。しかし、子ども世帯の中には、「もらう」ということに抵抗を感じる人もいるようだ。
今回の調査結果で面白いのは、贈与ではなく「家族の思いやり消費」ととらえている点。思いやりの大小にかかわらず、子どもから親に対してより、親から子どもに対してのほうが、消費額は大きいようだ。

■13.5%が子どものために住宅の取得・リフォーム資金を支出

株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメントが、18歳~74歳の首都圏の一般生活者に実施した「家族の思いやり消費」に関する調査によると、首都圏の生活者では「子どもから親へ」「親から子どもへ」の双方向でプレゼントや高額消費のための資金援助など、いわゆる「思いやり消費」が活発に行われている実態が明らかになったという。
この3年以内に親のために何らかの支出を行った人は48.0%で、3年間での合計金額は平均34万6000円。これに対し、独立した子どものいる人のうち3年以内に子どもや孫のために何らかの支出をした人は70.5%で、合計金額は平均162万7000円。
親から子どもへの「思いやり消費」では、「孫の小遣いやプレゼント」が最多(66.6%)だが、「子どもが住む住宅の取得・リフォーム資金」も13.5%にのぼっている。親の平均消費額のほうが高いのは、100万円以上を支出した割合が44.4%と多いからで、住宅資金や結婚資金、車の購入などで高額援助をしていると考えられる。

■子どもの住宅の取得・リフォーム資金なら贈与税が非課税に

親子といえども「思いやり消費」をしたら、受けたほうに贈与税がかかる。これを免れるためには、年間110万円までの基礎控除内に抑える必要がある。年間110万円を超える贈与に対しては、金額が増えるほど税率も高くなるが、最低でも10%の贈与税がかかる。
これには例外があり、子どもや孫の住宅の取得・リフォーム資金であれば、「贈与の非課税制度」が利用できる。非課税枠は、贈与を受けた年と住宅の質によって異なる。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠
(1)所定の省エネ性・耐震性を満たす住宅の場合
   平成24年 1500万円
   平成25年 1200万円
   平成26年 1000万円
(2)上記以外の住宅
   平成24年 1000万円
   平成25年 700万円
   平成26年 500万円

ただし、非課税制度の適用を受けるにはいくつか条件がある。まず、平成26年までの制度であること。贈与を受ける子や孫は、20歳以上で贈与年の合計所得金額が2000万円以下であること。住宅の床面積は50㎡以上240㎡までで、リフォームの場合は工事費用100万円以上などである。

なお、「相続時精算課税制度」を利用した非課税枠(2500万円)もある。これは、親からの生前贈与に贈与税はかからないが、相続時に生前贈与分を相続財産とみなして精算するというもの。相続税との関係もあるので、利用する場合は税理士などの専門家に相談をしてほしい。

■思いやり消費は住宅が効果的

子どもの結婚資金や車の購入などに援助をした場合、贈与税が非課税になるのは基礎控除110万円までという制約があるが、住宅の取得・リフォーム資金への援助なら、最低でも500万円(平成26年)+基礎控除110万円=610万円までは非課税になる。
利用目的によって非課税枠が違ってくるので、どうせなら非課税枠が大きいものに援助してもらうのが得策。しかも、住宅は長く住むうえ、頭金が増えて住宅ローンの借入額を抑えられるなどのメリットも多い。つまり、住宅への「思いやり消費」が最も効果的ということだ。
「もらう」「やる」と思わずに、「思いやりによる消費」と考えて、援助を受けた子ども世帯は新居に親を招く、孫のお祝いを一緒にするなど、思いやりで返すという関係になればよいのではないか。親世帯も、お金より思いやりのお返しのほうがうれしいだろうと思う。

■今週の気になるニュース元
・親世帯から独立した子ども世帯への支出額、3年間で162万円/(株)リサーチ・アンド・ディベロプメント

・中古流通事業にインスペクションや瑕疵保証などを導入/ナイス(株)
PDF:http://www.nice.co.jp/release/pdf/2012/0508.pdf

・タワーマンション、全国で今後10.45万戸建設/(株)不動産経済研究所

https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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