マネーと制度
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年4月16日 (水)

急増しているサービス付き高齢者向け住宅 整備事業の募集で今後も増える?

写真:iStock / thinkstock
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【今週の住活トピック】
「平成26年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業の募集開始について」/国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000110.html

国土交通省は、平成26年度の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」の募集を始めた。サービス付き高齢者向け住宅とはどういったものか、どんな現状にあるのかについて見ていくことにしよう。

サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のための補助金を継続

比較的低額で介護サービスが受けられる、公的な高齢者介護施設の代表格である「特別養護老人ホーム(特養)」に、入所できていない高齢者は全国で52万4000人に上る(厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」平成25年度)。高齢化社会が急速に進展するなか、高齢者の住まいの受け皿として注目されているのが、「サービス付き高齢者向け住宅」だ。

平成21年10月に「高齢者住まい法」が改正され、従来あった高齢者向け賃貸住宅や有料老人ホームの一部を再構築する形で創設したものだが、国土交通省では、平成22年から10年間で60万戸整備する目標を掲げている。

供給を促進するために、サービス付き高齢者向け住宅の新築では建設費の10分の1、改修では改修費の3分の1(いずれも戸当り100万円が上限。ただし高齢者生活支援施設を合築・併設する場合はいずれも施設当たり1000万円が上限)について国の補助が受けられる。平成26年度もこの措置を継続し、補助対象となる事業の募集(募集期間4月8日~平成27年2月27日)を開始したのだ。

事業要件としては前記のほか、サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録するもの、家賃が周りの同種の住宅の額と同等程度のもの、家賃の徴収方法が前払いに限定されていないもの、事業に要する資金の調達が確実なものなどが挙げられている。

サービス付き高齢者向け住宅といっても千差万別

サービス付き高齢者向け住宅は、平成26年3月時点で4555棟、14万6544戸が高齢者住宅財団に登録されている。介護系や医療系事業者、不動産・建設関連業者などの事業拡大や新規参入により、新築の登録施設が増えていることもあって登録戸数は急速に増加している。

では、どういった住宅をサービス付き高齢者住宅として登録できるのか。
まず、住宅の規模・設備では、バリアフリー構造(段差のない床や手すりの設置、廊下幅の確保など)であることに加え、一定の面積(原則は専有面積が25㎡以上)や一定の設備(共用部分に十分な設備がある場合などを除き、専有部分に台所やトイレ、収納、洗面など)を有することが条件となる。

次に、必須のサービスとして安否確認と生活相談サービスが提供されることも条件となる。ケアの専門家が日中には常駐し、これらのサービスを提供する必要がある。また、消費者保護の観点から契約形態についても、必ず書面で行い、長期入院などを理由に事業者から一方的に解約できないこと、家賃などの前払いを受領する場合は算定方法を明示することなどが主な基準となっている。

実際に供給されたサービス付き高齢者向け住宅は、どうなっているのだろう?国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(平成25年8月末時点)」調査によると、専有部分の面積では18㎡以上20㎡未満が最多の57.4%で、平均面積は22.4㎡となっており、緩和措置(共同部分に十分な広さの設備があれば専有面積は18㎡以上で可)が適用されているものが多いことが分かる。

また、必須のサービス(安否確認と生活相談サービス)のほかに、食事の提供サービスが95%提供されており、入浴等の介護サービスや調理等の家事サービス、健康の維持増進サービスなどがほぼ半数程度で提供されているという結果となった。

急増しているサービス付き高齢者向け住宅 整備事業の募集で今後も増える?

【図1】サービス付き高齢者向け住宅の専有部分の床面積(有効回答数12万2086戸)
国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」(平成25年8月末時点)

急増しているサービス付き高齢者向け住宅 整備事業の募集で今後も増える?

【図2】サービス付き高齢者向け住宅において提供されるサービス(有効回答数3765件)
国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」(平成25年8月末時点)

賃貸住宅としてはハード面では高齢者向けの一定の基準があるが、ソフト面の日常生活を支援するサービスや介護、医療のサービスについては必須条件(安否確認と生活相談サービス)しかないので、物件によってサービスの選択肢や住宅部分に併設される施設(訪問介護やデイサービス施設、食事サービス施設等)の有無や内容は異なってくる。

なお、サービス付き高齢者向け住宅は大半が賃貸住宅(賃貸借契約を交わす)なので、賃料を支払う(別途提供されたサービスの対価を支払う)ことになり、入居時に敷金を預けるものの高額な一時金を支払うものではない。また、介護型の施設に比べると、生活の自由度が高いなどの特徴もあるので、自立して暮らす高齢者や要介護度が軽い高齢者に向いているといえるだろう。

サービス付き高齢者向け住宅の新設や改修に補助金が出ることもあって、新規参入も相次いでいる。今後も増加すると予測されているが、事業者ごとに追加できる家事や生活支援、介護、医療のサービスに違いも見られる。どんなサービスをどういった体制で提供するのか、契約内容はどうなっているのかなど、事業者の実態をしっかり確認する必要があるだろう。

国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」
「平成26年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業の募集開始について」/国土交通省
http://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_02.pdf
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
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