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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年5月8日 (水)

新築VS中古 購入者の「選んだ理由」「選ばなかった理由」は?

写真: iStockphoto / thinkstock
写真: iStockphoto / thinkstock
【今週の住活トピック】
「平成24年度住宅市場動向調査」を公表/国土交通省

http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000062.html

国土交通省が、「平成24年度住宅市場動向調査」結果を発表した。マイホームの住宅建設、購入、リフォーム等の実態把握・分析を行い、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的に、平成13年度より継続して実施しているもの。同じ住宅購入ではあっても、分譲(新築)住宅と中古住宅では、明らかな違いも見られる。詳しく見ていくことにしよう。

※国土交通省の調査では「分譲住宅」(新築の建て売り住宅または分譲を目的として建築された住宅)と記載しているが、この記事では「新築住宅」と書き換えてまとめている。
なお、「中古住宅」は新築後、他の世帯が居住していた住宅と定義している。

注文住宅、新築住宅、中古住宅の市場の特徴は?

「平成24年度住宅市場動向調査」では、住宅の種類ごとに、首都圏、中京圏、近畿圏を中心に訪問留め置きによるアンケート調査を行っている。住宅の種類は、注文住宅(N=921)、新築住宅(N=551)、中古住宅(N=519)、民間賃貸住宅(N=558)、リフォーム住宅(N=512)。

主な調査項目は、「世帯や住宅について」「建築や購入、入居にあたり影響を受けたこと」「今回の住宅と直前の住宅の比較」「資金調達方法」など。平成23年4月~24年3月に取得・入居した人に対して、24年9月18日~25年2月8日の期間に調査を実施した。

注文住宅、新築住宅、中古住宅別に、調査結果の特徴を比較してみよう。初めて住宅を建築または購入した世帯は、いずれも30歳代が最多であるが、平均年齢と平均世帯年収はそれぞれ、「注文住宅」で40.2歳、579万円、「新築住宅」で36.8歳、645万円、「中古住宅」で40.3歳、578万円であった。

工務店や住宅メーカー、購入した住宅を見つけた方法は、「注文住宅」では住宅展示場、「新築住宅」と「中古住宅」では不動産業者が最多で、特に中古住宅は不動産業者が6割近くを占めた。

また、直前の住宅に比べて、いずれも延べ床面積は広くなっており、高齢者対応設備や省エネ設備の整備が進んでいる。こうした設備の設置率が高いのは、「注文住宅」→「新築住宅」→「中古住宅」の順となった。

新築にこだわるか、価格や広さ、リフォームによる改修などの実を取るか

ここからは、新築の新築住宅と中古住宅の違いに焦点を当てて見ていこう。

今回購入した住宅に決めた理由を聞くと、新築住宅では「新築住宅だから」が63.2%と最多で、新築へのこだわりがうかがえる。一方中古住宅では「価格が適切だったから」が74.2%と最多で、価格の手ごろ感が決め手になっているようだ。新築でも中古でも、2番目には「住宅の立地環境が良かったから」が半数を占め(新築住宅52.7%、中古住宅47.6%)、立地重視の傾向が強いことが分かる。

さて、新築住宅を購入した人に「中古住宅にしなかった理由」を聞いてみると、これまでの調査結果と同様、「新築のほうが気持ち良いから」が73.2%と飛び抜けて高くなっている。また、次いで高いのは「リフォーム費用などが割高になる」38.2%、「隠れた不具合が心配だったから」26.3%、「耐震性や断熱性など品質が低そうだから」23.7%。中古住宅の品質がよく分からないから不安、改修するのに費用がどの程度かかるか分からないから不安といった、不安材料が背景にあることが分かる結果となった。

逆に、中古住宅を購入した人に「中古住宅にした理由」を聞いてみると、「予算的に手ごろだったから」が77.5%と飛び抜けて高く、次いで「新築住宅にこだわらなかった」45.5%、「間取りや設備・広さが気に入った」24.5%、「リフォームで快適に住める」24.3%となった。調査結果から、中古住宅を購入した人は、価格や間取り・設備などの条件を優先して、必要に応じてリフォームをするという現実的な選択をしていることがうかがえる。

【図1】(新築住宅購入者)中古住宅にしなかった理由

【図1】(新築住宅購入者)中古住宅にしなかった理由 (出典:国土交通省「平成24年度住宅市場動向調査」)

【図2】(中古住宅購入者)中古住宅にした理由

【図2】(中古住宅購入者)中古住宅にした理由(出典:国土交通省「平成24年度住宅市場動向調査」)

最終的な判断は、条件や品質の確認をしたうえで「自分自身」で

筆者は持論として、新築か中古かは、消費行動の違いによる向き、不向きがあると見ている。

新築住宅に向くのは、例えばレストランで“シェフお勧めコース”を選ぶような人。シェフがお勧めしているのだから、美味しいだろうと安心して選ぶタイプだ。一方、中古住宅に向くのは、レストランでアラカルトを選び、メニューの一つ一つを吟味して、前菜、メイン、デザートなどを時間をかけて決めていく人。料理の内容や金額、ボリューム、バランスを自分で選ぶことのほうが、満足度が上がるタイプだ。

中古の品質についての不安を解消するには、専門家に診断を依頼したり、住宅の性能や保証、保険を確認するなどのさまざまな方法がある。ただし、どういった方法があるか情報を集めたり、確認するための時間をかけたりと、手間も時間もかかることが多い。さらにリフォームをするとなれば、楽しい反面、費用も手間もかかるし、一定の専門知識も必要だ。

したがって、単に「価格が安いから」中古住宅を選ぶということは、お勧めできない。自分で学びながら、手間暇をかけることが苦にならず、満足度が高くなるという人こそ、中古住宅に向くと思っている。また、“シェフにお任せ”すぎるというのも、お勧めできない。新築であれば、すべてに安心というわけでもないので、希望条件に合うか、どういった品質になっているかは、きちんと確認したうえで物件を選んでほしい。

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