自然のチカラを味方にする「ナチュラルリフォーム」で夏も涼しく快適に

暑さが厳しい日本の夏。家で涼しく過ごせるように、「ナチュラルリフォーム」を考えてみませんか。内装には素肌に心地よい自然素材を取り入れ、太陽の熱や光、風の流れをコントロールする設計で、五感に気持ちのいい暮らしを実現するリフォームです。

自然素材を取り入れて風合いと手触りを楽しむ

ナチュラルリフォームの基本は自然素材の採用です。住宅でいう自然素材とは、土や石、植物など原料が天然の内装材や外装材のことで、風合いの良さ、手触りの良さが大きな魅力。合板やビニルクロスなどの新建材と比べて傷や汚れがつきやすいという弱点もありますが、それら新建材と違って、傷や汚れも見方によっては味になるのが特徴でしょう。ここでは、むく材のフローリングと塗り壁について説明します。

フローリングはむく材に。足裏のサラッと感が違う

床材の自然素材で代表的なのは、むく材のフローリングです。むく材には柔らかめで薄い色の針葉樹系と硬めで濃い色の広葉樹系があり、自然塗料やワックスで好みの色に着色もできます。最近は床暖房用に加工した材も出てきました。

ポピュラーな樹種の例を挙げるとすれば、針葉樹ではパイン、広葉樹ではオークでしょうか。パインは柔らかくて加工しやすく、手ごろな価格と節の多いナチュラルな質感が好まれています。薄い黄白色から深い飴色へ変わっていく経年変化も楽しめます。一方のオークは硬くて丈夫。細かく密な木目が美しく、落ち着いた空間に仕上がります。柾目（まさめ／年輪が平行な木目）に現れる虎斑（とらふ／虎の斑紋のような模様）が特徴です。

むく材は空気を多く含むため、保湿性や断熱性に富んでいるほか、室内が湿っているときは湿気を吸い、乾燥時は放出する調湿作用もあります。夏でもべたつかずにサラッとして、冬はじんわり暖かく感じられ、素足の感触が心地よいのはそのためです。

珪藻土や漆喰の壁で、室内の空気を快適に保つ

珪藻土や漆喰などの塗り壁は古くから用いられていただけあって、日本の風土に適しています。珪藻土は植物性プランクトンの死骸が化石化して堆積したもの、漆喰は消石灰が主成分の塗り壁です。

一般に調湿性や断熱性、消臭性、防音・防火性に優れているといわれていますが、特に調湿性や消臭性のような空気環境を整えるはたらきは、ナチュラルリフォームでも注目したいところ。優れた調湿効果で結露を抑え、カビやダニの発生を防ぐほか、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸着し、タバコやペットのニオイなども吸着・分解してくれます。

もちろん、他の自然素材同様に風合いも魅力的。独特の質感に加え、左官職人がコテや刷毛で仕上げてさまざまな表情を描き出してくれます。最近は、ＤＩＹ感覚で家族みんなで塗って楽しむケースもあり、家への愛着がより深まったという声も多く聞かれます。
　

日差しを遮り、断熱して、戸外の熱気をシャットアウト

自然素材のほかにもうひとつ、日差しと風通しを考えた設計もナチュラルリフォームの大事な要素です。夏の場合で説明しましょう。

夏に家で快適に過ごすには、まず、日差し（日射熱）をカットすることが重要です。軒を深くしたり、窓に庇やルーバー、オーニングなどを取り付けたりして、室内に日差しが入り込むのを防ぎましょう。よしずや緑のカーテンでも日差しを遮ることができます。

このとき同時に考えなければいけないのが断熱です。夏に家の中が暑いのは、日差しや戸外の熱気が室内に入り込み、家全体が熱をもってしまうから。日差しを遮る工夫と併せて、床、壁、天井に十分な断熱処理を施し、窓も断熱サッシや複層ガラスにするなどして、外気をシャットアウトしましょう。断熱すればエアコンの効率も高まります。

風の通り道をふさぐ壁を取り払い、涼を呼び込む

夏の盛りにエアコンを使わずに生活するのは無理ですが、それでも、朝晩など涼しい風が吹いているときには窓を開け、自然の風の気持ち良さを味わいたいものです。エアコンに頼りきりにならないよう、家の中に風を呼び込む工夫をしましょう。

風通しをよくするには、風の入り口と出口を確保することが重要です。風がどこから入ってどこへ抜けていくのか通り道を考えて、窓を設けたり、通り道をふさぐ仕切り（壁）をなくすような間取りにしましょう。壁を取り払って大空間をつくるリフォームが人気ですが、それだけでも風は流れやすくなるのです。建具も、ドアではなく引き戸を選ぶと開け放しておけて風通しを確保できます。

また、暖かい空気は上に上がっていきますから、上昇した熱気を外に逃がすよう高窓や天窓を設けても。室内に上下の空気の流れを起こす意味ではシーリングファンも効果的です。
風があると、人は実際の温度よりも涼しく感じるものです。体が喜ぶナチュラルリフォーム、ぜひ検討してみてください。

構成・文／今井早智