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辻 知佐子
2013年10月19日 (土)

ママのアイデアを形に!江東区の「こどもまつり」を取材

ワークショップ「廃材でつくろう!自分だけのエコハウス」(画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部)
画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部

10月6日、江東区の「ティアラこうとう」で、ママや子どもたちのためのイベント『秋のこどもまつり~まちの子はぐくみフェスティバル~』が開催された。10以上のブースが出展し、1500人以上もの来場者でにぎわったこのイベント。江東区内に住むママたちが、力を合わせて実現した、なんともアットホームな雰囲気だった。今回はそんな『秋のこどもまつり』へ足を運び、開催のきっかけからイベントの魅力までを取材した。

ママたちの「こんなことやりたい!」が区の協力で実現

そもそもこのイベントが開催されたきっかけはどのようなものなのだろう? 運営スタッフの掛田さんに話を聞いてみた。

「区内のママたちがFacebookを通じて繋がり、地域の子育てを考えるグループ『まちの子はぐくみ隊』をつくったのがきっかけです。同じ江東区に住む仲間として、多くの人たちと育児について語り合いたい、一緒に楽しみたい、そして『まちの子どもたちをみんなで育むこと』についてみんなで考えるきっかけにしたい、という想いで企画しました」

彼女たちが目指すのは、かつての下町にあったような地域の結びつきの強化と、地域で子どもたちを見守るという意識の向上だ。

「女性の活躍推進が叫ばれる中、世界のスタンダードから見ても、この先共働き世帯が増えることは明らか。そうなると、子どもたちの健やかな成長には『地域力』が必要不可欠です。そして親自身も、『自分の子どもだけが良ければいい』という意識ではダメ。みんなで助け合いながら子どもたちを見守り育くむことで、いじめや虐待などの悲しい事件も減ると考えています。子どもたちには、たくさんの大人と関わりながら多様な経験を積み、その中で『自己肯定感』を育くんだり、彼らなりの『生きる力』を身に付けていってほしいと思います」

メンバーそれぞれの仕事は、広告代理店やイベント企画、看護師、教員などさまざまで、各々が専門性や強みを発揮しているという。今回のこどもまつりは、「ティアラこうとう」の依頼を受け、彼女たちがそれぞれ、友人・知人、地域の子育て支援団体等に声をかけてブース出展や企画をお願いしたという。行政や地域企業にも協力を要請し、江東区やスウェーデン大使館から後援を受け、必要な経費はすべて企業からの協賛金で賄った。地元のスーパーや子ども向け英会話教室、各種メーカーなど、活動趣旨に賛同した企業がイベントをサポートしている。市民発信による、行政・企業・支援団体との協働プロジェクトだ。

ママのアイデアを形に!江東区の「こどもまつり」を取材

【画像1】会場内の様子(画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部)

ママのアイデアを形に!江東区の「こどもまつり」を取材

【画像2】キッズゴスペルコンサートの様子(画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部)

「廃材を使ったエコハウスづくり」で住まいについて考える

こどもまつりでは、羊毛フェルトや押し花を使ったワークショップ、絵本の読み聞かせやリトミックなどのイベント、被災地支援の企画などが盛りだくさん。キッズスペースもあり、乳幼児も自由に遊べるようになっていた。メインイベントは、エコハウスづくりのワークショップと、ヨーロッパで広がる子育て方法「ポジティブ・ディシプリン」・「イエナカフェ」の紹介。放課後NPOアフタースクール(http://www.npoafterschool.org/)と清水建設・東京木工場(http://www.shimz.co.jp/mokkou/)がコラボしたワークショップ「廃材でつくろう!自分だけのエコハウス」には、年長~小学6年生の子どもたち約40人が集まった。今回は住まいに関連するこのワークショップを詳しく取材した。

ちなみに、放課後NPOアフタースクールは、主に小学生を対象とし、「社会で子どもを育てる」をモットーに活動しているNPO。放課後にさまざまな職種の方や地域のボランティアの方を『市民先生』として小学校などに招き、講座やワークショップを開いている。

「清水建設さんとのコラボレーションはこれが2回目。前回は親子で本棚やファイルフォルダーづくりなどをしました。今回は、工事現場で出た廃材を加工した床や壁などのパーツを組み立てて、小さなエコハウスをつくります。組み立てた後は、好きな絵を描いたり色を塗ったりして、自分だけのデザインに仕上げていきます」(放課後NPOアフタースクール・上原さん)

子どもたちの表情は真剣そのもの。出来上がっていくエコハウスも、ひとつひとつが個性的だ。壁には、大きな窓やドア、家族ひとりひとりの顔、かわいい動物たちや草花が。屋根も瓦っぽい模様があったり、虹色に塗り分けられていたり。最後にパーツの角の部分に紙やすりをかけたら完成だ。中には工作をするのは初めてという子もいたが、スタッフに手伝ってもらいながら、完成させることができた。

ママのアイデアを形に!江東区の「こどもまつり」を取材

【画像3】真剣な様子でエコハウスづくりをする子どもたち(画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部)

大人も子どもも一緒に、住まいや住む街について考えよう

10月19日は、住宅についての教育を考える「住育の日」。そこで、今回のエコハウスのワークショップに参加していた親御さんに「子どもとの住まい方」についてお聞きしてみた。

「子どもが生まれる前に江東区内に家を購入しました。主人の通勤の便と、公園など子どもたちの環境が決め手でした。リビングに娘たちが遊ぶスペースがあるので、どうすればおもちゃが片付くか、とか、どういう風に物を配置すれば遊びやすいか、といったことを娘たちと相談しながら進めるようにしています。また、机やベッドなど、子ども用の家具は、一緒に楽しみながら選んでいます。子ども部屋の確保については、ひとり部屋にするか同じ部屋にするか、私と主人で意見が分かれ、ちょっと悩んでいます」
(江東区在住・Aさん)

「現在は江戸川区に住んでいますが、子どもを江東区の小学校に入れたいので、この周辺で家を探しています。子ども部屋はつくらず、リビングに本棚を置いて、家族みんながリビングでなるべく過ごすようなスタイルにしたいですね」(江戸川区在住・Sさん)

子どもが生まれ、成長するにつれ、新しく家を購入しようと考えたり、同じ家でも住まい方を変えたいと思ったりする機会が増える。どのような住まいが理想なのか、家族でしっかり話し合ってみることも大切だ。また、住まいを考えるということは、住む街全体について考えるということに繋がる。

「私たちが注目するキーワードは『放課後』。子どもたちが多様な経験や学びを得られる場づくりをしていきたいです」と掛田さん。来月には「MACHI-KADOシンポジウム(http://kokucheese.com/event/index/118929/)」というイベントが開催される。今回のこどもまつりは、彼女たちにとってそのプレイベントという位置づけだ。「子どもたちの放課後」をテーマに、どうやって地域でつながりを強化するか、いかに子どもと大人の交流を図るか、といったことについて考える。

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【画像4】実行委員会のみなさん。山﨑区長とともに(画像提供:まちの子はぐくみ隊 こうとう本部)

自分や家族がどういった住環境を望むのか、どうすればよりよい環境をつくることができるのか、「住育の日」をきっかけにぜひ考えてみては。

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