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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年7月10日 (水)

2013年の路線価では、都市部で回復基調。ただし、相続税に注意を

写真: iStockphoto / thinkstock
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【今週の住活トピック】
国税庁/2013年分の路線価を公表、5年連続下落も回復基調

http://www.rosenka.nta.go.jp/
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/rosenka/index.htm

国税庁が2013年分の路線価を公表した。前の年を平均で1.8%下回ったが、宮城県と愛知県では、リーマン・ショック以降5年ぶりに上昇し、残る45都道府県も、下落率が縮小した。回復基調にある路線価だが、相続税の増税が気になるところだ。

「路線価」は相続税の課税額を算定するためのもの

公的な価格指標としては、国土交通省が公表する「地価公示」、都道府県が公表する「基準地価」、国税庁が公表する「路線価」がある。このうち、「土地の取引価格の指標」となるのが「地価公示」で、半年後に公表される「基準地価」はそれを補完する役割を担っている。

一方、「路線価」は、「相続税や贈与税の課税価格を算定する基準」となるもの。路線(道路)に面した標準的な宅地の1㎡当たりの土地評価額が決められている。また、路線価による評価額が時価を上回らないように、路線価は地価公示の8割程度の水準になるように評定されている。

路線価は、市街地のほぼすべての路線(道路)に対して価額が付けられるため、2013年1月1日時点における「路線価」の標準宅地は約35万6000地点となっている。ちなみに、2013年1月1日時点における「地価公示」の標準地点数は約2万6000地点、2012年7月1日時点における「基準地価」の基準地点数は約2万2000地点となっている。

2013年の路線価は、5年連続で下落しているが、底打ち感が強まっている

2013年7月1日に公表された路線価は、前年を平均で1.8%下回り、5年連続で下落した。しかし、3大都市圏をはじめ各地域で下落幅は縮小しており、都道府県別では宮城県と愛知県が上昇に転じるなど、底打ち感が強まっている。

都道府県庁所在地の最高路線価をみると、前年上昇したのは札幌市と名古屋市のみだったが、札幌市(札幌停車場線通り)、さいたま市(大宮駅西口駅前ロータリー)、横浜市(横浜駅西口バスターミナル前通り)、金沢市(金沢駅東広場通り)、名古屋市(名駅通り)、大阪市(御堂筋)、那覇市(国際通り)の7都市が上昇した。

また、東京国税局各税務署管内における最高路線価をみると、最も高い上昇率となったのは浅草税務署の雷門通りで前年比9.0%上昇、次いで川崎南税務署の川崎駅東口広場通り(5.7%上昇)、川崎北税務署の溝口駅前広場通り(5.4%)、横浜中税務署の横浜駅西口バスターミナル前通り(5.1%上昇)、足立税務署の北千住駅西口駅前広場通り(4.6%上昇)など18カ所で上昇した。

路線価が上昇しなくても、相続税は増税になる点に注意

路線価が上昇している地点は、例えば、東京スカイツリー効果や駅前再開発などによる効果によるところが大きい。こうした地点は土地の売買価格が高くなるが、路線価は相続税や贈与税の算定基準となるので、路線価が上昇すると納税額が増える可能性がある。

さらに、相続税の課税強化が予定されているため、路線価がまだ下落している地点が多いとはいえ、油断はできない。適用されるのは2015年以降の相続となるが、税制改正により相続税の基礎控除の額が大幅に縮小され、高額な相続については税率が上がるようになる。

特に、相続財産の一定額が課税されない基礎控除が、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から「3000万円+600万円×法定相続人の数」に縮小されることで、これまでは相続税が課されなかった人が課税対象になるケースが大幅に増えると見られている。

これを背景として、新たなサービスも登場している。東急リバブル(株)が税理士法人レガシィと業務提携し、新制度「相続税立替払サービス」を開始すると公表した。相続対象となる不動産の簡易査定等を無料で行い、納税方法などをアドバイスするとともに、東急リバブルが一時的に納税する相続税を立て替えることで、相続税の納付期限(相続開始後10カ月以内)を守りながら対象不動産を売却できるようにするという。

【図1】東京国税局各税務署管内における最高路線価において2013年分で上昇した地点 (1㎡当たり)

【図1】東京国税局各税務署管内における最高路線価において2013年分で上昇した地点 (1㎡当たり)(出典:国税庁)

日本の場合、相続財産の大半が自宅というケースが多い。特に東京都などの地価が高い地点では、路線価で算定する課税価額も高くなるので、基礎控除を上回る額になってしまう可能性が増大する。これまで以上に路線価について、関心を高めたほうがよさそうだ。

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