地上滑走するF-15DJこんにちは、咲村珠樹です。9月8日、航空自衛隊百里基地で第29回航空祭が開催されました。今回はその模様をお届けします。

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地上滑走するF-15DJ


ドラマ『空飛ぶ広報室』の人気で見学者が激増している百里基地。来場者の大幅な増加が見込まれていましたが、当日は朝から雲が低くたれ込める天候。雨も予想されており、予定されていた展示飛行はほとんどキャンセルされてしまいました。朝に天候偵察で飛んだパイロットによれば、すぐに雲に入ってしまい、何も見えなかったそうですからやむを得ませんね。これにより来場者は7万5000人にとどまり、10万人規模の来場を予想していた基地側としてはやや少なめとなった感じ。ただ、バスツアーの来場者は前年より増加して、駐車場所の確保は大変だったようです。

基地側でもドラマ人気から、ロケ地を紹介したいわゆる「聖地マップ」を展示し、基地内で聖地巡礼ができるようになっていましたね。また、主人公が過去に所属していた設定の第305飛行隊では、撮影に使われていたヘルメット等も展示。

空飛ぶ広報室ロケ地マップ ドラマの聖地巡礼
ドラマで使用されたヘルメット等

展示飛行が実現したのは、低い高度で実施する百里救難隊のヘリコプターによる救助実演のみ。固定翼機は全て滑走路での地上滑走(ハイスピードタクシー)という、いささか寂しいものとなりました。バスツアーで初めて来場した人達からは、滑走路を共用する茨城空港を発着する旅客機は飛ぶのに、何故自衛隊は飛ばないのか……という声も聞かれましたが、計器による情報を頼りに決められた航路を飛ぶ旅客機と違い、戦闘機による展示飛行はより低空を自分の視界を頼りにして飛ぶ為に、より条件が厳しくなるのはやむを得ないところ。もちろん、スクランブルなどでは天候に関係なく飛ぶ訳ですが……。

前日の特別公開の時点でも、飛行中に盛大なベイパー(瞬間的に発生する一種の飛行機雲)ができていたので、非常に湿度の高い状態ではありました。午後から天候が悪化していたので、航空祭当日の雨も当然といえます。

ベイパーを発生させて飛ぶRF-4E

時折雨のぱらつく中、地上滑走に向かうパイロットは観客に手を振ります。RF-4Eに乗った第501飛行隊のパイロットは、バイザーハウジングのない新型ヘルメットと酸素マスクを装備。米軍のHGU-55/Pに準じた姿です。

観客に手を振るF-4EJ改のパイロット 観客に手を振るF-15DJのパイロット
観客に手を振るRF-4Eのパイロット

地上滑走は、ちょっと加速したと思ったらすぐエンジン出力を絞ってしまうので、会場の真ん中辺りに陣取っていた人にとっては、エンジン音も堪能できない状態だったかも知れませんね。F-15DJは機首上げ姿勢まで披露してくれました。F-4EJ改はAN/ALQ-131電子戦(ECM)ポッドを装着した機体が地上滑走を披露。

地上滑走するRF-4E AN/ALQ-131装着のF-4EJ改

2010年の航空祭以来となるブルーインパルスも、ウォークダウンと地上滑走のみ。時折晴れ間も見えた前日の特別公開でも、雲が低かった為アクロバット飛行はできずに編隊航過飛行でした。飛行隊長の田中1佐も「航空祭当日も、せめて飛べる天候であってくれれば」と語っていたのですが、残念な結果に。しかしその分、雨中にも関わらず、傘もささずに「みんな雨大丈夫かい? おれは平気だけど」と、遅くまでファンにサインをしていたのが印象的でした。ちなみに今年のツアーパッチは、震災を経てホームである松島に帰還したことを示すように、松島から飛び立つ6機のT-4と、6つの桜の花で作られたレイをかけたイルカ(T-4の愛称「ドルフィン」にちなむ)がデザインされています。

ブルーインパルスのウォークダウン ブルーインパルス2013年ツアーパッチ

そんな雨の中、茨城県立水戸商業高校のチアリーディング部「Blue Twinkle’s」は、元気にチアを披露。ずぶ濡れになりながらも、笑顔を絶やさない演技でした。

水戸商業高チア部

地上展示機で目立ったのが、海上自衛隊下総航空基地から飛来した、第203教育航空隊のP-3C。「第29回百里基地航空祭」にちなんで、わざわざ29号機(5029)を選んでカッティングシートでスペシャルマーキングを実施していました。9月28日には、下総航空基地で開設54周年記念行事が開催されます。第203教育航空隊には54号機(5054)もいるので、ひょっとしたら同じようなマーキングが見られるかもしれませんね。また、陸上自衛隊木更津駐屯地から飛来した、第4対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sに乗ってきたパイロットは、5月の木更津駐屯地航空祭(第33回「対戦車道、やってます!~第41回・木更津航空祭~」参照)で「対戦車道講座」の講師役を務めていた男性でした。

下総・第203教育航空隊のP-3C29号機 木更津第4対戦車ヘリコプター隊のAH-1S

雨ということもあって、来場者は屋根のある格納庫内展示に集中。今年は格納庫のひとつが改修工事の為に半分しか使えない状態だったので、余計に人でごった返しました。例年でも人気の戦闘機コクピット公開は、左右から見られるようにしていても最大で3時間近い待ち時間に。

F-15Jコクピット公開 F-4EJ改コクピット公開

展示飛行ができなかった分、パイロット達も機転を利かせてフル装備状態で登場し、あちこちで記念撮影に応じていました。

記念撮影に応じる305飛行隊長とパイロット

パイロット達の右肩には、間もなく始まる戦技競技会(戦競)に向けたスペシャルパッチが。今年はF-4部門とF-15部門が、ここ百里で開催される(F-2部門は三沢)ので、ホストスコードロンとして気合いが入っているようでした。第302飛行隊は風林火山、第305飛行隊は伝統の宮本武蔵に闘犬と、どちらも和のテイストで臨んでいます。

302飛行隊の戦競パッチ 305飛行隊の戦競パッチ

天候に恵まれなかった今回の百里。翌週の三沢も台風の影響で展示飛行のほとんどがキャンセルされるなど、天候はコントロールできないだけに残念です。百里基地は来年、三年に一度の航空観閲式が開催される為、航空祭はお休みです。2015年に期待しましょう。

(文・写真:咲村珠樹)