衝撃波は、高電圧による閃光から発生する超音速の高エネルギーだ。医療分野では1980年代から、尿路結石に対し、外から高強度衝撃波を当てて、結石を粉砕する治療が行なわれている。その後の研究で、狭窄している血管に体外から衝撃波を当てると、出力はわずかでも新生血管が形成されることが分かってきた。
現在は出力を弱めた衝撃波を狭心症や心筋梗塞患者に当てて、血管新生を促す治療が行なわれている。また整形外科分野では、アキレス腱の血流を促す治療に応用されるなど範囲が広がっている。近年、ごく弱い出力の衝撃波をED治療に生かす治療法が研究開発された。
順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科の久末伸一准教授に話を聞いた。
「ED治療はバイアグラ、レビトラ、シアリスという安全性と有効性の高い勃起不全治療薬が開発され、現在は内服薬治療が主流です。しかし、合併症で併用禁止薬を飲んでいる場合は、服用できないケースもあります。そうした患者さんのために、新しい治療法として注目されているのが低強度衝撃波療法です」
昨年、ED患者に対して、この治療の治験が実施され、改善が約30%、バイアグラ併用患者も含めると50%以上の患者に効果が認められた。
治療は陰茎部5か所に対して、各箇所1回300発ずつ照射する治療を週2回実施し、それを3週間継続する。その後、3週間治療を休み、再度5か所に300発を週2回ずつ3週間続ける。
「治療途中に3週間の休みを設けるのは、血管が新生するのを待つ目的があります。衝撃波といっても、ごく弱いので、ほとんど痛みを感じることなく外来での治療が可能です」(久末准教授)
低強度衝撃波療法は、血管性のEDには効果が認められるが、神経の障害が原因の神経性EDや内分泌の障害による内分泌EDなどに対しては大きな効果は期待できない。また、バイアグラなどのように早期に効果が認められない。血管新生を促しながら気長に治療することで、血流障害を解消する根本治療が期待できる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年8月2日号