街・地域
街を変えるリノベーション
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三浦恭子
2013年6月18日 (火)

江戸の面影を残す四間道・円頓寺商店街がモダンな街に再生。その背景とは

昔ながらの蔵や長屋を活かした街づくりに取り組む四間道(写真撮影:青木譲)
写真撮影:青木譲

名古屋駅の北、円頓寺商店街の堀川沿いにある「四間道(しけみち)」。江戸時代をしのばせるこの界隈は今、おしゃれな雑貨店やレストラン、カフェなどが次々にオープンし、時間の厚みと新しい情報発信を同時にキャッチできるエリアに生まれ変わりつつあります。その背景を取材してきました。

人の流れが駅前に向かい、空き店舗が目立つようになってしまっていた

「四間道」とは、江戸・元禄時代の大火で多くの商家や町家が消失したため、大火を防ぎ、商業活動を活性化する目的で、道幅を四間(約7m)に拡幅したことから名付けられた古い町。当時、このあたりは堀川を利用して名古屋城の城下町へ米や味噌、酒などを供給する商家が軒を連ねていたといいます。その面影が今も残り、昭和61年には名古屋市の「町並み保存地区」に指定されました。

今でこそ四間道は、江戸時代の面影を残す古さと、新しい感性が融合したユニークな街に生まれ変わりつつありますが、この四間道と四間道につながる円頓寺商店街では、30年ほど前から空き店舗が目立ち始めていました。名古屋駅前に人の流れが集中し、古い商店街から客足が遠ざかってしまったためです。

江戸の面影を残す四間道・円頓寺商店街がモダンな街に再生。その背景とは

【図1】長屋を改装した甘味処や古道具店が並ぶ(写真撮影:青木譲)

商店や建築家、学者などが協力して空き店舗対策にのりだす

このため、円頓寺商店街振興組合では、下駄屋を営む高木麻里理事長を中心に、もう一度商店街の活性化を目指そうと「那古野下町衆」を立ち上げました。四間道・円頓寺商店街の商店主や、この地域に関心を持つ建築家、学者なども次々と加わり、フリーペーパーの発行やフリーマーケットの開催などで、商店街の住人と客をつなぐ一方、落語や和服などレトロな街並みを活かしたイベントを開催したりすることで、広く集客を図る取り組みにチャレンジしたりしています。そして、商店街空洞化の根本原因の一つでもある空き店舗対策にも皆が知恵を出し合い積極的に取り組んでいます。

戦火にもあわずに多数残っていた古い蔵や長屋を街の魅力としてとらえ直し、そこにモダンなセンスや意匠を加えることで、没個性的な商店街からの脱却を目指しました。

新しく商店街に加わってもらう店の選定にあたっては、今までの商店街の客層と異なる層を誘致できる、実績のあるカフェやバルなどの店を話し合いでリストアップし、誘致しながら、新しい経営者を周りの商店主たちがサポートすることで、新たに10数店の新店が誕生しました。その結果、古い商店街に新しい客層が訪れ、徐々に活性化し始めています。

理事長の高木さんは「ただ若い人たちだけが集まるような街づくりではなく、お年寄りや子どもたちが安心して暮らせる居心地のよい商店街を目指しています。生活に利便性をもたらす市場の開設も構想として立てていて、具体策についてはこれから検討していく予定です」と話しています。

江戸の面影を残す四間道・円頓寺商店街がモダンな街に再生。その背景とは

【図2】四間道の象徴、屋根神様が商店街の取り組みを見守る(写真撮影:青木譲)

成功した地域をまねるだけでなく、街のそのままの良さを活かすことで独自の価値を見出し、差別化、ブランド化する例は全国的に増えつつあります。古い歴史的な遺物を大切にしながら、新しい街の魅力づくりを進める名古屋の四間道・円頓寺商店街の試みも、そんなトレンドの一つとして注目されます。

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街を変えるリノベーション シャッター街や空き家をリノベーションで再生し、地域を元気にする動きがあちこちで始まっています。
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