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大森 広司
2013年1月24日 (木)

税制改正で様変わり!?  2013年は購入VS賃貸 どちらがトク?

2013年度の税制改正大綱が与党から発表されたことで、消費税引き上げに伴う住宅税制の改正内容がほぼ明らかになった。そこから分かったことは、家を買うのと借りるのとでどちらがトクになるかが、改正の前後で様変わりする事実だ。

■現行の税制では購入も賃貸も「いい勝負」

消費税の引き上げは第1弾として2014年4月1日に8%へのアップが予定されているが、家を買うときの建物価格にも課税されるので影響は小さくない。そこで税制改正大綱では、消費税引き上げと同時に住宅ローン控除を拡充することで購入時の負担軽減を図ることとした。消費税増税による駆け込み需要とその後の反動減を緩和する意味もある。

大綱によると、2014年4月1日の入居からは住宅ローン控除の対象となるローン残高の上限を4000万円に倍増し、10年間で最大400万円の控除が受けられるようにするという。さらに住民税から控除できる額の上限を現行の年9万7500円から年13万6500円に引き上げ、それでも控除しきれない分は給付措置もとられるという。給付の内容は今夏までに詰めるということだが、現金が給付されることになりそうだ。

さて本題の「購入VS賃貸」だが、まず購入の場合、3000万円のローンを金利2.0%、35年返済(元利均等。ボーナス払いなし)で借りると、毎月返済額はほぼ10万円(9万9379円)となる。そこで3500万円の新築マンションを買うのに頭金500万円、購入費用105万円(購入価格の3%)を払い、住宅ローンを10年間(1200万円)返済したとすると、10年間の支払いはトータルで1805万円となる。さらに固定資産税などの税金や管理費・修繕積立金として年間30万円ずつ10年間で300万円払うと、支払額の合計は2105万円だ。

10年後の時点でこのマンションを売ったとしよう。買ったときより1割低い3150万円で売れたとして、ローン残高が2345万円、売却費用が126万円(売却価格の4%)で差し引き679万円が手元に残る。これに住宅ローン控除の最大控除額200万円を加えると、879万円が10年間でプラスになる計算だ。支払額の合計と差し引くと、購入の場合に10年間で負担する額は1226万円となる。

賃貸はどうかというと、家賃10万円として10年間の賃料は1200万円。入居時に仲介手数料と敷金を2カ月分(20万円)、2年ごとの更新料を4回(40万円)払うとすると、10年間トータルの負担額は1260万円だ。試算上の負担額としては、購入も賃貸も“いい勝負”といえるのではないか。

■消費税引き上げ後は購入の負担が逆に軽くなる!?

では消費税引き上げ後の2014年4月以降ではどうか。同じ条件で試算してみよう。まず購入について3500万円の住宅価格のうち2000万円が建物価格(税抜き)とすると、消費税が8%にアップすることで住宅価格が60万円上がって3560万円になる。頭金は500万円のままとすると、購入費用が107万円(購入価格の約3%)、住宅ローン返済額が10年間で約1216万円(月額約10万1300円)。これに税金と管理費・修繕積立金(300万円)を加えてトータルの支払額は2123万円にアップする。

10年後の売却収支を計算すると、売却価格が3204万円(3560万円の1割減)、ローン残高が約2392万円、売却費用が128万円(売却価格の約4%)で、差し引き684万円が手元に残る。これに住宅ローン控除をプラスするわけだが、控除額の上限が400万円にアップしているので、3060万円を借りたときの最大控除額は10年間で約270万円となり、10年間のプラス額は954万円となる計算だ。支払額の合計と差し引くと、10年間の負担額が1169万円となり、消費税引き上げ前よりも57万円軽くなった。

一方、賃貸は家賃に消費税がかからないから、10年間の負担は変わらない(仲介手数料は課税されるが少額なので省略)。その結果、10年間の負担額は購入が1169万円、賃貸が1260万円で91万円の差がついた。100万円近い差がつくのだから、「購入の勝ち」といってもよさそうだ。

もちろん、購入の場合は10年後にいくらで売れるかで負担額が大きく変わるので、この計算はあくまで机上のものにすぎない。ただ、消費税引き上げの前後で家を買うときの負担が大きく変わることは確認できたといえるだろう。

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