キラキラ系はファッションなどで人気だが、インテリアでも「光る素材」はひそかなブームとか。例えば、部屋の明かりを消すと壁一面に星がまたたく壁紙がある。その「蓄光クロス」の仕組み、使い方、魅力をプロに聞いた。
インテリアメーカー、シンコール株式会社仙台開発部ショールームマネージャーの岩水優子さんによると、「蓄光クロス」は十数年前に商品化されたロングラン商品だという。「もともと、筆に蓄光顔料をつけて壁に絵を描いてブラックライトで光らせていました。それが、カラオケ店やファッションホテルで人気に火がついて、飲食店やサロンのお手洗いなどに使われるようになり、住宅にも広がりクロスとして商品化されました」
光る壁紙には、ホログラムやグリッターのような反射により光るタイプもあるが、蓄光クロスは独自で光る特殊な素材。では、どのような仕組みなのか。
「蓄光顔料が、太陽光や照明などから光エネルギーを蓄えて、部屋を暗くすると光を放出して光ります。時間はだいたい5分~20分くらい。部屋の電気を消してから蓄えた光の容量分だけ発光するわけです」(岩水さん)
充電のような作業は必要なく、光源は、白熱灯、蛍光灯といった一般住宅用の照明で十分な効果が得られる。
子ども部屋やロフトの天井などで利用されることが多い蓄光クロスだが、子どもだけでなくオトナのリビングにも利用されているとか。
「一般住宅では子ども部屋に貼る方が多いですが、夜一人で寝るのが怖い人や、昼と夜で部屋の雰囲気を変えたい人にも好まれています。ホームバーなどにワンポイントで貼る場合もあります」
子ども部屋に蓄光クロスを使うと残像などが心配な人もいるかもしれないが、もともとが柔らかい光で、ベッドに入って電気を消してすぐは多少強く光るが、時間とともに光が弱まるので、目が冴える心配もないという。星空に包まれながらいい気持ちで眠れそうだ。
蓄光・発光は繰り返すことができる。クロスの寿命は「室内環境やメンテナンスにもよりますが、通常のクロスと同じで10年くらいが目安」という。子どもが成長するころ、飽きたころに別な壁紙に貼りかえればいい。また、蓄光顔料は危険な物質を含まないので、子ども部屋にも安心して使える。
さて「蓄光クロス」の光る仕組みや実態が分かってきたところで、どのようにわが家に採り入れるか考えてみた。岩水さんに聞くと、「四面クロスとして使うことは少なく、部分的に使うのが一般的です。部屋全体を真っ白のクロスにして、天井など一面だけに蓄光クロスを使うとキレイです。また、どんな照明をどう当てるかによっても雰囲気が変わります。通常より強く長く光らせたい場合は、ブラックライトの細い蛍光管を1本入れて照射すれば光の威力が増して、異空間を楽しむことができます」
「蓄光クロス」の仕組みは同じだが、定番の星、花火、海の中、ストライプなど色柄の種類がいくつかある。昼間は青空に雲が浮かんだりカモメが飛んでいる普通の壁紙が、夜電気を消すと満天の星が浮かぶ夜空に変わるのは、子どもじゃなくてもワクワクしてくる。子どもは空を自由に飛んだり、宇宙飛行士になった夢が見られるかもしれない。大人は、一日の疲れが癒やされそうだ。
「蓄光クロス」は柄合わせが難しく、糊付きの蓄光クロスがないためDIYは難しいという。「価格は1㎡が基本1090円の均一価格で、別途職人さんの施工料がかかります」
壁紙ひとつを工夫するだけで、手ごろな価格で気軽に部屋の雰囲気を変えることができる「蓄光クロス」。子ども部屋に使えば子どもをワクワクさせ、大人が使うとホームバーのムードを高める。音楽と組み合わせたりお酒を飲んだりと新たな楽しみが増えそうだ。秋の夜長、眠りに入るまでのひととき、蓄光クロスでプラネタリウム気分を味わってみてはいかが。