ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の宅配大手3社による、苛烈なシェア争いが繰り広げられる宅配業界。民間企業における日本の宅配便の先駆者は、ヤマト運輸の「宅急便」だといわれているが、はたしてそれは本当か。話題のビジネスノンフィクション『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)を上梓したジャーナリスト横田増生氏がその真相に迫った。(文中敬称略)
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宅配関連の年表をみると、ヤマト運輸が宅急便をはじめた1976年というのは、佐川清がライカのカメラ10台を担いで企業発の小口配送をはじめて約20年がたっており、翌1977年には東京佐川急便が設立される。当時、佐川急便はすでに100店舗近くを抱えていた。こうした国内の小口配送の成功例が間近にあるにもかかわらず、米UPSから宅急便のヒントを得た、とする小倉昌男(第2代ヤマト運輸社長)の説明には違和感を拭いきれない。
ヤマト運輸の第5代の社長を務めた有富慶二(74)は、この点について以下のように説明する。
「小倉さんは、佐川急便の小口配送を研究したと思いますよ。佐川急便は商業荷物で、ヤマト運輸は個人発の荷物という違いはありますけれど、当時20%近い利益を上げていた佐川急便を横目でみながら、個人間の市場にセグメント化したのが小倉さんの独自の考えだったと思っています」
生前の小倉と付き合いがある『月刊ロジスティクス・ビジネス』の編集発行人である大矢昌浩もこう話す。
「宅急便をはじめるにあたって、小倉さんは佐川急便をはじめとする伝統的な急便事業を熱心に研究し、その手の勉強会にも足しげく出席していた、と聞いています」
業界の常識や年表、事実関係から推し測ると、小倉昌男が宅急便をはじめるに当たって佐川急便を参考にしたという方が、米UPSを参考にしたというよりはるかに説得力がある。その意味で、民間企業における日本の宅配便の先駆者はヤマト運輸ではなく、佐川急便だったといえる。
※横田増生氏・著/『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』より