借りる
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上野 典行
2012年3月16日 (金)

【vol.05】「やっぱり大きな会社から借りる方が安心」なのか? その2

【連載】プリンシプル住まい総研「知って得する賃貸豆知識」Vol.05

前回のvol.4では、
・「大家さんは個人」で、大手も中小もない。
・「契約する不動産会社」の規模は、物件の良し悪しに関係がない。
と論じさせていただきました。

とはいえ、「SUUMOなどに掲載されている不動産情報サイトの物件だけでなく、いろいろな物件を紹介してほしい」という方も多いはずです。
今回は、「大手の不動産会社のほうが、たくさんの物件を持っていて、いい物件を紹介してくれるのか」について、論じたいと思います。

【vol.05】「やっぱり大きな会社から借りる方が安心」なのか? その2

■大手のほうがたくさん、物件を案内できるのか?

前回の図は、上のようなものでした。

「たしかに、契約行為だけなら、不動産会社の規模は関係ないかもしれないけど、大手のほうがたくさんの物件を知っているのではないか」こう思う方も多いはずです。たくさんの物件を知っているならば、店頭でたくさんの選択肢のなかから選ぶことができるというメリットがあります。

たしかに、一般的には、大手のほうがSUUMOなどの不動産情報サイトでもたくさんの物件を紹介しています。ただし、特定のエリアであれば、そのエリアに強い地元の不動産会社が、その会社の規模とは関係なく、たくさんの物件広告を出しているケースもあります。

専門的な話ですが、売買は、特定の不動産会社しか契約できない「専属専任媒介契約」などの取り決めがあって、「うちの会社でしか契約できない」という案件が本当にあります。一方で賃貸はそうした法的義務はないため 、実際には、中小であっても、大手と同じようにたくさんの物件を紹介することが可能です。

そもそも、今は、SUUMOなどの不動産情報サイトで、すでにたくさんの物件情報を見ることができます。かつてのように、不動産会社の引き出しの中から、掘り出し物が出てくるようなことは少なく、情報の入手は容易になっています。
みなさんが、ネットでたくさんの情報のなかから、自分にあった物件を探すことができていれば、その物件を紹介している不動産会社が大手であれ、中小であれ、同じように法律を守って 契約をしてくれるでしょう。

■たくさんの店舗をもっている会社の強み

とはいえ、「○○不動産は、たくさんの店舗をもっているので、千葉か埼玉かと迷っている私には、どちらがいいか、いいアドバイスをもらえそうだ」という考え方もあります。これは、たしかにメリットです。特に首都圏では、平均通勤時間が1時間。地方とは違って、県を超えた部屋探しは普通です。「この駅では、条件に合う物件は少ないですが、もう10分離れた駅には、結構ありますので、そちらの店舗に連絡しておきますから、今から回ってみてください」と言われれば安心です。

また、長年地域に密着している地元不動産会社は、「担当エリアに詳しい」という長所がありますが、反面、担当エリア外のことは、そんなに詳しくはないかもしれません。一方、複数店舗をもっている不動産会社であれば、「自分は、この地域に詳しいが、以前担当していた別のエリアも詳しい」という営業担当に出会えます。
こう考えると、「物件のエリアを変更する可能性がある」のであれば、たくさんの店舗をもっている不動産会社との会話は、メリットがあるでしょう。

■たくさんの物件を「管理」している、管理会社の強み

不動産会社のなかには、不動産契約を結ぶ「仲介」だけをしているわけではなく、そのあとも、大家さんに代わって、家賃の収納代行などを行う「管理会社」という立場の会社もあります。よく「当社の管理物件は、○○○○件」とか「この沿線では管理物件数が多い」などと、PRしている会社です。

先ほどの図でいえば、

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というような会社です。

「管理会社」の定義は、実は、不動産業界のなかでも諸説ありますが、ここでは「家賃を大家さんに代わって払う相手で、修繕管理やクレーム対応もしている」としましょう。こうした、「管理会社の大手」は、みなさんの物件探しにとって、メリットがあります。というのも、実際に毎月、物件の管理をしているので、物件のことをよく知っているのです。

例えば、「ペット可」かどうかは、仲介会社であれ、管理会社であれ、大手であれ中小であれ、不動産会社は物件資料を見れば分かります。しかし、実際に管理している会社であれば、近所の公園がペットとの散歩に適しているかとか、愛犬のほえ声で騒音の苦情など出そうかなど、さまざまなことを知っている可能性があります。
また、実際に家賃の収納をしていますので、「○号室は、再来月には退去するので空きが出る」といった事前情報を入手していることもあります。契約後も、その会社の管理物件であれば、ずっと関係が続くので、そうした点についても安心感があるという人もいます。

■フランチャイズの強み

みなさんが、「CMをやっている会社は大手」と思っていると、実は必ずしもそうではありません。「アパマンショップ」「センチュリー21」などは、フランチャイズといって、いくつかの不動産会社が、加盟料などを払って看板をつけているという形態です。「アパマンショップ○○店 株式会社××不動産」というケースでは、前者がフランチャイズ名で、後者が法人名。基本的には、法人が異なれば、社内ルールも規則も教育も異なる、別の会社ということになります。

もちろん、大手もフランチャイズに入っていることも多いのですが、なかには、1店舗でフランチャイズに入っていることもあります。ですから、「CMをやっているから大手」というのは、正しくはありません。

【vol.05】「やっぱり大きな会社から借りる方が安心」なのか? その2

しかし、大手であるかどうかは別として、フランチャイズ主催の勉強会に加盟店舗が参加していたり、全国のフランチャイズで同じキャンペーンをしていたりします。ですから、フランチャイズにはフランチャイズなりのよさがあるものです。

■まとめ

vol.4~vol.5と2回に分けて書きましたが、住まい総研としての賃貸不動産会社の選び方について、まとめさせていただきます。

・賃貸は、個人の大家さんと個人の結び付きで、大手中小は、物件の良し悪しには関係ない
・大手の不動産会社のほうが、たくさんの物件を紹介できるとは言い切れない。スーモなどにたくさん掲載されているので、そのたくさんの物件のなかから探せば、小さな不動産会社で契約しても問題ない
・小さな不動産会社は、地元のことをよく知っているといったメリットがある。とくに住みたいエリアが決まっているときにはよい
・複数の店をもっている会社は、エリアを決めかねている人にとっては、いい提案をもらえるチャンスもある
・たくさんの管理物件をもっている管理会社は、物件探しにメリットがある
・フランチャイズは大手とは言い切れないが、フランチャイズならでの教育を受けていたり、キャンペーンなどの特典もある。

こんなところかと思います。自分の物件探しにあった会社を探していくとよいと思います。

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