由緒ある国際映画祭のひとつ「ベネチア国際映画祭」が、8月28日~9月7日(現地時間)の日程で開催中だ。日本からは、宮崎駿監督の『風立ちぬ』、園子温監督の『地獄でなぜ悪い』などが出品されており、その評価も見どころだ。
さて、ベネチアといえば「水の都」とも呼ばれるイタリアきっての観光都市。世界遺産にも認定されているこの街は、至る所に運河がめぐらされており、水上バスやゴンドラで水上散歩を楽しむことができる。しかし、水との距離感が近いだけに、水害に頭を悩まされることも多い。とりわけ、「アクア・アルタ」という高潮が脅威で、街中が水浸しになる事象が何度も起きている。2012年には、大雨による洪水で街の70%が浸水するという事態も起こり、治水対策が急務となっている。
古い建築物が多いベネチアだが、水害対策の為に、建物にはどのような工夫が施されているのだろうか。ベネチアについて詳しく紹介された書籍『ヴェネツィア―水上の迷宮都市』によると、
との記述があった。また、住宅本体にもさまざまな工夫が施されているようで、ドア枠に膝下ぐらいのレールを設け、冠水しそうなときには、そこにステンレスの板を挟んだり、各部屋に繋がる廊下部分を水槽のように設計し、水が浸入してもそこで食い止めるような仕組みを採用しているという。
もちろん家だけでなく街全体にも対策が施されている。道路の真ん中には低い台をいくつも連ねたものが並べられており、洪水の際はその台が道代わりになる。浸水がひどいときには、外に机を並べて道をつくったり、板を浮かべて船代わりにしたり、という光景も見られるという。
こういった水害対策万全のベネチアでも、近年は浸水被害が深刻化している。洪水の頻度が年々高くなっていて、そのたびに住宅や店舗が浸水したり、路面や建築物の表面、基礎部分を浸食しているのだ。このままでは、歴史的建造物が倒壊する危険性もあり、大々的な対策が求められている。護岸のかさ上げや排水機能の強化策のほか、街全体を守ることができる可動式の“せき”をつくる、という大がかりな計画もあり、2014年にも完成する予定だ。
■参考資料
『ヴェネツィア―水上の迷宮都市』陣内秀信著(講談社刊)