国土交通省が、「平成24年度住宅市場動向調査」結果を発表した。調査結果はすでに、第一弾を筆者の住活トピック(https://suumo.jp/journal/2013/05/08/43403/)で紹介しているが、ここでは第二弾として、分譲(新築)住宅と中古住宅の資金調達方法ついて詳しく見ていくことにしよう。
※国土交通省の調査では「分譲住宅」(新築の建て売り住宅または分譲を目的として建築された住宅)と記載しているが、この記事では「新築住宅」と書き換えてまとめている。
なお、「中古住宅」は新築後、他の世帯が居住していた住宅と定義している。
住宅の購入費用について見ていくと、「新築住宅」の資金総額の平均は3597万円(自己資金1135万円+借入金2462万円)、「中古住宅」の資金総額の平均は2192万円(自己資金1004万円+借入金1188万円)だった。資金総額に占める自己資金比率は、「新築住宅」で31.6%であるが、「中古住宅」で45.8%となり、過去5年間で最も高くなった。
もっとも調査対象のすべてが住宅ローンを借りているわけではない。住宅ローンを借りている世帯は、「新築住宅」では63.0%(ローン無し8.7%、無回答28.3%)、「中古住宅」では53.9%(ローン無し29.7%、無回答16.4%)という割合だった。「中古住宅」で住宅ローンを借りている割合が低いことが、借入額の平均額を引き下げているという点に留意が必要だ。
住宅ローンを有する世帯の年間支払額の平均は、「新築住宅」で111.9万円(世帯年収に占める返済負担率17.3%)、「中古住宅」で95.2万円(返済負担率16.4%)とこちらは大きな差が見られない。なお、過去5年間で見ると、「新築住宅」で年間支払額と返済負担率のいずれも、「中古住宅」で返済負担率が最も低くなっている。長引く不況の影響か、無理をせずに安全な資金計画を組んでいることがうかがえる。
借入金の平均返済期間は、「新築住宅」で29.0年、(多い順に「35年以上」53.8%、「20~35年未満」34.6%)、「中古住宅」で23.0 年、(「20~35年未満」53.3%、「10~20年未満」25.3%、「35年以上」19.9%)と、中古住宅のほうが返済期間は短い傾向にある。
これは、住宅ローンを借りる世帯主の年齢が、「新築住宅」(平均年齢39.0歳、30歳未満と30歳代の合計は63.1%)のほうが「中古住宅」(平均年齢42.0歳、30歳未満と30歳代の合計は47.3%)に比べて若いという要因もある。しかし、銀行ローンなどでは、築年の古い中古住宅については、返済期間を短くすることをローンの条件とする場合も多く、それが大きく影響していると考えられる。
返済期間が短いほど、毎月のローン返済額が増えるので、返済期間が長い場合よりも借入額を抑える必要がある。中古住宅で自己資金比率が高くなるのは、こうした背景もあるのだろう。
次に、住宅ローン減税制度の利用状況を見ていこう。
「新築住宅」で適用を受けるのは79.3%(「受けている」66.7%、「受ける予定である」12.6%)と8割に達するが、「中古住宅」では55.0%(「受けている」44.3%、「受ける予定である」10.7%)と低くなっている。
「住宅ローン減税制度」の適用を受けるには、返済期間が10年以上の住宅ローンを借りていること、購入する住宅の登記簿面積が50㎡以上であることなど、いくつかの条件がある。
中古住宅に関しては、さらに次のような条件が加わる。
(A)マンションなどの耐火建築物の場合は築後25年以内、木造など非耐火建築物の場合は築後20年以内であること
(B)新耐震基準に適合する建物であること
いずれかに該当する住宅であること
築年が(A)より古い住宅の場合、住宅ローン減税制度の適用を受けるには、一定の耐震基準に適合することの証明書を用意する必要がある。そのためには購入者が時間と費用をかけて、検査機関などに依頼しなければならないケースも多く、適用を見送るということがあると考えられる。
今年度からは、既存住宅瑕疵(かし)保険が加わったことで証明書を入手しやすくなったが、いずれにせよ「住宅ローン減税制度」の適用条件はあらかじめ押さえておきたい。
新築は、住宅ローンの組み方や減税制度の適用などで有利になる場合もあるが、住宅価格も高くなる傾向にある。また、ひとくちに中古住宅といっても、返済期間や減税制度の適用で新築と同様のものと、築年が古くて希望通りにならないものがある。「知識不足で後悔した」ということのないように、事前に関連情報を理解しておきたい。
ただし、減税制度の適用の有無だけが全てではないので、無理のない資金計画が組めるか、希望条件に合う物件かどうかをしっかり確認し、総合的に判断するようにしてほしい。
また、中古住宅を取り巻く環境は変わりつつある。リフォームで住宅の性能を向上させた中古住宅の担保価値を適正に評価するような検討も始まっている。ホームインスペクション(住宅診断)のガイドラインの公表も大詰めの段階に来ている。減税制度にかかわらず、住宅の状態を知るうえで住宅の診断を受けることなども検討してほしい。