(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A))
京都でR不動産などを運営するOpen Aが設計を手掛ける「堀川団地再生プロジェクト」。この取り組みでは新しい住み方を実験する4住戸を用意し、住む人(コラボレーター)を募集。選ばれたコラボレーターは実際に住戸に住みながらセルフビルドし、アイディアを実現させるという、今までにない、画期的な団地再生プロジェクトです。今回はDIY実験住戸が完成し、これからセルフビルドがスタートするということで、完成住戸の内覧会にお邪魔しました。
「面影度」の異なる実験住居で居住&セルフビルドがスタート
今回のリノベーションでは、各住戸の特徴的な内装などが「面影」として残されています。4住戸の「面影度」は10%、25%、50%、75%とさまざま。それぞれ異なる面影を残す実験住戸ですが、現段階では、セルフリノベーションをこれからスタートさせる、正に白紙のキャンバスのようなもの。その住戸をコラボレーターたちがどのように暮らし、働き、交流し、新しいものを創り出していくのかが、今後の団地再生のカギになっていきます。
内覧会ではコラボレーターとして選出された4名の方々が、リノベーションされた実験住戸で、各々のプランをお話しされました。
【画像1】今後の抱負を語る、4名のコラボレーター(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A))
【画像2】奥の和室を残した面影度50%のプランは外廊下側に土間が、奥には和室が設けられ、パブリックとプライベートが分けられた住戸になっています。堀川団地が今後新しいクリエーターが育成される場となるように、とこの部屋のコラボレーターには未来の陶芸家が選出されました。土間にはウレタンコートで塗装されているので、小型の電気釜を設置して陶芸の工房として利用する予定だそう。陶芸を通じて、地域の方との交流の場にしていきたいとのことでした。内覧会に参加された居住者の方も、「陶芸教室なんかもやってくれるの?」と興味津々でした(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A))
【画像3】実験住戸の中で一番面影が少ない、面影度10%のこの部屋は土間仕上げのプラン。鴨井や欄間、配膳窓や食器棚、土壁などが残されています。こちらの住戸のコラボレーターはインテリアコーディネーターということで、『近未来と原点回帰』というコンセプトを『コンクリートと畳』に置き換えてバランスを取るというアイディアを中心に、ヴィンテージの家具などを取り入れて今後セルフリノベーションを行うそうです。コンクリートの土間の上に置く3畳の畳は寝室、ワークスペース、リビングなど、幅広い用途で使う予定だそう(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A))
【画像4】面影度25%のこのプランでは、外廊下側に和室が残され、玄関からキッチンまで土間が続くようになっており、外から訪れた人が和室にほっと立ち寄れるようなイメージ。この部屋のコラボレーターは、堀川団地が京都の新しいモノづくりの拠点となるようなシンボル的な人に、ということで選出された海外でも評価も高い、眼鏡作家で現代美術家の方ということで、土間は工房として、和室は徹底した和の空間に仕立て、店舗兼展示スペースとして利用していく予定だそう。今後は海外からのお客様をおもてなしするような形でも利用していきたいと話されていました(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A))
【画像5】クリエーターではなく、『コミュニティ管理人』というコンセプトで選出されたのは、面影度75%の住居をセルフリノベーションするコラボレーター。和室2室が残された、最も当時の面影を残したこのプランは、2つの和室を玄関から続く土間が緩やかにつなぐ、京町家の雰囲気が色濃く残るもの。在宅時はできるだけ扉を開けた状態にし、外廊下側の和室はセミパブリックな場所として活用。押入れは本棚に改装し、自由に貸し借りができるライブラリーとして、奥の和室は寝室など、プライベートスペースとして利用する予定だそう。住民とクリエーターを繋ぎ、新しいコミュニティをつくるハブになる、というコンセプトが非常に興味深かったです(画像提供:株式会社オープン・エー(Open A) ※写真は内覧会後にDIY済みのもの)
「堀川団地は京都の人々の記憶や歴史を内包して存在している場所。歴史の文脈を活かしながら、住みながらつくる、住みながら働くなど、現代のものづくりアーティストが住むような場所になってほしいと思っています」。東京R不動産ディレクターでOpen A代表の馬場正尊さんは内覧会でこのように語られました。
古い建物の中で、まだ日本のどこにもない、最先端の暮らし方を実現させていこうという新しいケーススタディ。この試みが今後、新しいプロトタイプになればいい、という馬場さんの言葉が印象的でした。堀川団地全体のリノベーションは今年の5月ごろに完成予定。これからセルフリノベーションをスタートさせる実験住戸の今後が楽しみです。