住まいの雑学
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SUUMOジャーナル ピックアップ
2013年7月10日 (水)

虜になる人が続出している熟成肉。自宅でつくっても大丈夫なの?

熟成肉はコク深い旨みが魅力だが、発酵と腐敗は紙一重。自宅でつくるのは控えた方が良さそうだ。

肉食女子を中心にグルメ好きから熱い注目を浴びている“熟成肉”。熟成肉とは、周囲を乾燥させながら熟成させる“ドライエイジング”というやり方で発酵させた肉のこと。一度食べるとやみつきになる深みのある味わいに、リピーターが続出中なのだとか。

そんななか、熟成肉を自宅でつくる人が増えているらしい。しかし、発酵と腐敗は紙一重。素人がつくって本当に大丈夫なのだろうか。東京・六本木の熟成肉専門店『KITCHEN TACHIKICHI 旬熟成』のオーナー・跡部美樹雄氏に熟成肉の製造法や、自宅でつくる際の危険性を聞いてみた。

「熟成肉の魅力は、なんといっても通常の肉料理とは一線を画したおいしさと深み。熟成されることで旨味が最大限引き出され、まったくの別物に変化します。また、ナッツのような芳ばしい香りも特徴的で、寝かせれば寝かせるほど甘い果実のような芳醇な香りを放つようになるんです。意外にサッパリしているので、女性でも200gは食べられると思いますよ」

なるほど具体的にどのような手順でつくっていくのだろうか?

「つくり方・考え方はお店によって違いますが、私たちの場合は“熟成庫”と呼ばれる専用の倉庫で、厳選した国内産の肉を4週間以上寝かせています。倉庫内は常に0度で、高湿の状態。牛や豚が生きているときの水分量の80~90%を保ちながら、じっくりと乾燥させていきます。そうやって熟成した肉が“旬”を迎えたときに炭火で調理すると、肉が持っている旨みを最大限に引き出すことができるんです」

職人が手塩にかけて育てた熟成肉は絶品。これは一朝一夕で素人がつくれるものではないだろう。跡部氏も「危険です」とキッパリ。

「熟成とはとても奥深く、その過程ではさまざまな事が起こります。牛も豚も切った瞬間に腐敗が始まっていきます。切り刻んだモノは非常に腐りやすい。言ってしまえば熟成と腐敗は同じ道を歩んでいるので、プロ以外がつくることは非常に危険だと思います。また自宅だと菌の状態も心配ですね。肉の外側に青カビがつくと他の菌を寄せ付けないため、質さえ良ければ腐ることはありませんが、上手に青カビを付着させることは至難の業。食中毒の危険もあるので、やめたほうがいいと思います」

衛生面の厳しい管理はもちろんだが、技術、知識、そして肉に対する深い愛情と情熱がなければホンモノの“熟成”には至らない。美味しい熟成肉は専門店でいただこう。

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