街・地域   |   リフォーム・内装
街を変えるリノベーション
111
矢部智仁
2014年4月8日 (火)

進化するリノベーションスクール@北九州。創発されるまちのあり方(2)

写真: iStock / thinkstock
写真: iStock / thinkstock

北九州市の都市政策である「小倉家守構想」をもとに、中心市街地のにぎわいと雇用の創出の実現を図るための核として平成23年から始まった「リノベーションスクール@北九州」。リノベーションスクールについてはSUUMOジャーナルでも2013年9月に第五回の様子を伝えている(https://suumo.jp/journal/2013/09/10/51440/)。そこでも伝えているとおり、核となるスクールのプログラムは実際に存在する遊休不動産を題材に、全国から集まった受講生が、与えられた不動産でどのような事業を展開し、そのために必要なリノベーションプランを練り、アイデアと収支を事業計画にまとめ不動産オーナーに提案するまでを四日間で行うというもの。

それだけでも十分に実践的な再生活動だと思えるが、第六回である今回のリノベーションスクールでは、当初の目的であった「中心市街地のにぎわいと雇用の創出の実現」にむけてさらに進化を遂げている。

今回はスクールに関わった人々の様子からその進化をお伝えする。

全国各地から集結した多様な参加者

全国各地から集まった受講生はさまざまな背景を持っている。実際の遊休不動産を対象に四日間で事業計画を立て不動産オーナーに提案するリノベーション事業計画コース、実際の遊休不動産を活用できるように自ら施工をするセルフリノベーション実施コース、今回から新設された公共空間活用コースの3コースを合わせて、総勢102名の受講者が集まった。

100名超えという規模もさることながら、それだけの人々が九州近隣県を含め26都府県(市区郡単位でみればなんと50以上の自治体)という広範な場所から小倉に集結したことは大きな驚きである。またリノベーションスクールというイベント名から建築や不動産に関わる仕事の方が大半ではないかと想像しそうである。

しかし今回の受講生をよく見ると、実は専門ではない一般市民の参加が目立った。社会人の受講生74名の内、ほぼ1/3は建築業や不動産業に関わる受講生、別の1/3は行政関係者やまちづくり・まちおこしに関わる受講生であったが、注目すべきは残りの1/3がそのどちらにも分けられない、いわゆる専門家ではない市民の参加者であり、職業的な関心あるいは勉強機会というよりは単純に一市民としてまちへの関心や興味を持つ受講者が多く存在するということである。

その場にしかない“人との出会い”が人を進化させる

「圧倒的な熱量と上下も左右もない想いで繋がった共同体」、「“はじめまして”から始まるチームが、4日間で企画案を立ち上げるというエキサイティングさは未経験ゾーンの快楽…」。これはあるユニットマスター(受講者のファシリテーション役)がスクール終了後に発信したリノベーションスクールについて述べたコメントである。また別のユニットマスターは「すごい人と会える、というのが参加の動機だ」と語っている。

一方で受講者も「どんな仕事の人がどんな風にリノベーションスクールやまちづくりに関わっているのかを知りたいという気持ちで…」と参加の動機を語り、あるいは「アンテナを張り、そこから見えるヒントを掻き集めて、事業を進めていくチームで試行錯誤していくステキな仕事」という参加後の感想を語っている。

こうして追ってゆくと、実は受講生としての参加者だけでなく、提供側のユニットマスターたちも「人との出会い」に期待を寄せ、そこから生まれる新たな関係構築によって進められるユニットワークをより価値の高い提案につなげている様子が伺える。

リノベーションスクールが生み出す成果について、人とまち、人と人の関係自体をリノベーションし、にぎわいを創出し、そしてエリア価値の向上につながる好循環を生み出す、そのようなアイデアを提案し具体化する挑戦であると前回書いた(https://suumo.jp/journal/2014/04/04/60533/)。

しかし、場所を飛び越え、職能やキャリアを飛び越え、小倉に縁のない100名を超える人々がたまたま集って起きたにぎわいから、新たな発見がもたらされ、その発見が編集され価値が創造される、実はリノベーションスクールの在り方そのものが挑戦の成功イメージを世に示しているのではないか、そのように見えることは大変に興味深い。

●リノベーションスクール@北九州
HP:http://renovationschool.net/kitakyu/
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/3a9a4888f83c306f244d19ea30e6e783.jpg
街を変えるリノベーション シャッター街や空き家をリノベーションで再生し、地域を元気にする動きがあちこちで始まっています。
16
前の記事 進化するリノベーションスクール@北九州。創発されるまちのあり方(1)
次の記事 進化するリノベーションスクール@北九州。創発されるまちのあり方(3)
SUUMOで住まいを探してみよう