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やまくみさん正方形
山本 久美子
2011年7月5日 (火)

2011年度の住まいの税金はどうなる?

■ようやく成立した税制改正

例年であれば、遅くとも3月末日までには決まっている住宅税制。2011年度に限っては、与野党逆転の政治の混乱で、宙に浮いたままになっていた。
3月末日で期限が切れてしまう「登録免許税」と「印紙税」の特例措置の税制のみ、『国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律』というつなぎ法案で、3カ月だけ(6月末日まで)延長をされたが、6月に期限切れを迎えた。
そこでようやく混乱を回避するために、2011年度の税制改正から切り離して、『現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律』が6月30日に成立し、住まいの税金についても具体化することになった。

■基本は延長政策でも、一部の変更に注意

では、具体的な内容を見てみよう。
これまで住宅の購入やリフォームなどには、諸費用となる登録免許税や印紙税で優遇措置がなされてきたが、これらが2年間延長された。また、住宅のリフォームについては、耐震改修やバリアフリーリフォーム、省エネリフォームをする場合、一定の条件を満たせば所得税や固定資産税が減額される制度がある(注1)が、このうち期限切れを迎える制度の2年間の延長が決まった。ただし、注意したい点がある。
政府が推進するこれらのリフォームについては、多くの自治体などで補助金が出る場合が多い。今回の所得税の税制改正では、補助金などを受けた場合は、工事費用の額から補助金を差し引くといった条件が加わったのだ。また、リフォーム工事で住宅ローン減税を受ける場合も、同様に補助金を差し引くことになった。この条件は、法律の公布日、つまり6月30日以降に契約するリフォーム工事から適用されるので、補助金を受ける場合には押さえておきたい点だ。

一方、住宅購入などの際に、親から援助を受ける人も多い。リクルートが2010年に首都圏で新築マンションを契約した人に行った調査では、27%の人が贈与を受けており、その平均額は779万円となっている。
贈与を受けた場合に利用できる非課税制度として、住宅取得資金などの贈与を受けた場合の「相続時精算課税制度」(注2)と「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」(注3)がある。これらの制度の拡充も当初は検討されていたが、今回は別途審議となり見送られた。ただしいずれも、住宅の新築に先行してその土地を購入する場合には、土地取得のための資金も非課税枠の対象とすることができるようになった。

なお、当初の2011年度税制大綱では、税収を増やすために相続税の基礎控除額を引き下げるなどの見直しや親・祖父母などからの贈与をしやすくする贈与税の見直しなども盛り込まれていたが、これらは別途審議となり、現行のままとなっている。

住宅の購入や新築、リフォームに関する主な税制改正

 

注1)所得税については、リフォーム全般において、住宅ローンを借りた場合に利用できる「住宅ローン減税」(控除期間10年)のほか、バリアフリーリフォーム、省エネリフォームについてはそれぞれローンに対する減税制度(控除期間5年)がある。また、ローンを借りずに自己資金でリフォーム費用を負担した場合にも、耐震改修、バリアフリーリフォーム、省エネリフォームのそれぞれに減税制度(控除期間1年)がある。固定資産税については、耐震改修、バリアフリーリフォーム、省エネリフォームのそれぞれに減税制度がある。ただし、いずれも対象となる住宅や工事の条件、申告時期などが制度ごとに異なるので、個別に確認が必要だ。

注2)親から子への生前贈与に対して2500万円まで非課税にし、親が亡くなって相続する際に贈与分を相続財産として精算する制度。一定条件を満たす住宅取得資金などの贈与の場合は、贈与時の親の年齢制限(65歳以上)がなくなる特例がある(2011年12月末日まで)。

注3)子・孫が親・祖父母の直系尊属から一定の条件を満たす住宅取得資金などの贈与を受けた場合、2011年は1000万円まで非課税になる制度(2011年12月末日まで)。

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