前回では契約書での注意点を説明しましたが、それで安心してはいけません。
敷金が戻ってくるかどうかは、「入居直後のチェック」と「暮らし方」も重要だからです。
ここでは入居直後~退去時での敷金を取り戻すテクニックをまとめました。
まず入居直後にしておきたいのが、入居時の部屋の状況の確認作業です。入居前のキズ、汚れをテジカメで日付入りで撮影、設備などの不具合もメモも残しておきましょう。退去時に「これは前からあった傷だ」「いや、違う」などの水掛け論を防ぐための、いわば証拠になります。キズや不具合をメモしたものはコピーし、一部不動産会社にも渡しておきましょう。「こうした一連の作業を賃貸の不動産会社にしてもらってもいいでしょう。そのうえで、漏れはないか自分で確認してみればいいのです」(長谷川さん)。国土交通省のガイドライン内には、入退去時の物件状況および原状回復確認リストのフォーマットがあるので、それを活用するのもいいでしょう。
賃貸における敷金返還のガイドラインでは「自然に生活してできる傷や汚れは大家さん負担」とありましたが、日常的な掃除を怠った結果の汚れや故障はこの限りではありません。例えば、飲み物をこぼしてそのままにしてできたカビ、クーラーから水漏れしたのにそのままにして腐ってしまった壁などは、「自然に生活していただけだ」と借り手が主張しても、「入居者負担」と判断されるようです。
というのも、入居者には「善管注意義務」という「賃借人は借りた部屋を善良なる管理者の注意を持って使用する義務を負う」義務があり、それに反して「不注意、管理・使用方法が悪い結果、部屋や備品を汚したり壊したりすれば、損害賠償義務を負う」ことになるからです。つまり、借りた部屋を日常的に掃除をする、設備は壊れたままにしない、キレイに暮らすことは、敷金を取り戻すための「入居者の義務である」ということを覚えておきましょう。
<これは入居者負担に~賃貸の善管注意義務違反の例>
・借主の不注意で雨が吹き込んだことによるフローリングの色落ち
・冷蔵庫下のサビ跡を放置し、床が破損した場合
・通常のクリーニングでは除去できない程度のタバコのヤニ(借主のその後の手入れ不足)
・クーラー(借主所有でも貸主所有でも)の水漏れを放置した結果の壁の腐食
・台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、通常の使用による損耗を超えるもの)
・風呂・トイレ・洗面台の水垢、カビ等
次回はいよいよ賃貸で敷金を取り戻すテクニックの最大の山場「退去時」での注意点です。