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2013/02/20 00:17

 

SWANSが知性と狂気の爆音で東京の夜を震撼させる――OTOTOY最速レポ

 

PHOTO:WATARU UMEDA

2013年2月19日(火) 、代官山UNITにてSWANSの来日公演が開催された。

事前にアナウンスされていたのは、バンド・サイドから、今回の来日に際して「2時間を超えるパフォーマンス」をおこなう事と、「サウンド・システムのヴォリュームにリミット無し」というリクエストがあったということ。その為、当日は余裕のある空間で彼らのライヴが体験できるよう、チケットの販売枚数は400枚に限定という、バンド側のライヴに対する自信と誇りが感じられる条件でのライヴとなった。正直、スワンズの音楽に造詣が深いとは言えない僕は、怖いもの見たさのような気持ちで会場に向かった。たった今SWANSのライヴを観て帰宅した結論から言うと、とんでもないものを見てしまった。音楽を聴きに行った、というよりは自分も音の一部になったかのような気分だ。

PHOTO:WATARU UMEDA

会場には20代後半から30代と思しき男性が多く、外国人の姿もチラホラ。なにか皆緊張感のようなものを感じさせる表情をしている。対象的に、会場のSEは「ミスターボージャングル」やブルースの「ローリン・アンド・タンブリン」、カントリー・ミュージックのバンジョーががゆったりと流れている。まるで嵐の前の静けさだ。また、あちらこちらで先日のマイブラッディヴァレンタインのライヴの話に花が咲いている。今日のライヴとの共通項、ノイズ・ミュージックが人の心を掴む理由はなんだろうか…などと考えていると、8時15分、暗転。

PHOTO:WATARU UMEDA

「ギラー! 」という男性の野太い声援が飛ぶ。そんな中登場したメンバー達。観客を両手で煽るフロントマンのマイケル・ギラにフロアが大喝采。ゆったりとしたスティール・ギターをイントロに曲が始まる。延々と続く残響にようやくギラのボーカルが乗る。まるで何かを祈っているかのような、ボーカルというより呟きだ。しばらくすると、バンドが一斉に爆音を鳴らす。とにかくボトムが太い。地響きが凄い。ひたすら楽器を掻き鳴らし、叩くメンバーたち。続いて重戦車が突き進むようなナンバーへ。前に出ようとする観客がフロアへと一気に押し寄せる。ギラが歌い出すが、爆音で何を歌っているかは聴き取れない。クラリネットが爆音の中で妖しく鳴り響く。リヴァーブがかかったギラの声は地獄からの唸り声のようにも聴こえるが、不気味なリフレインが徐々にグルーヴとなって観客を揺らし出した。

PHOTO:WATARU UMEDA

それにしても音が凄い。床からビリビリと感電したかのように身体中に音が響いてくるのだ。たまらず後ろに下がる者も出てきた。パーカッションがドラムと一緒に叩きつけるようなリズムを刻む。リズムと音がひたすら凶暴だ。ギラの声はディレイ、リヴァーブでサイケデリックでハードコアな空間を作り出している。はっきりいって頭がどうにかなりそうな程だ。チューブラベルが延々鳴らされる中、他のメンバーは楽器を掻き鳴らし続ける。観客は立ち尽くして音の洪水に身を委ねるだけだ。ギラは時折メンバーに耳打ちする等、指示を出しながらバンドをコントロールしている。一見無軌道にも思える演奏だが、ブレイクやシンコペーションは完璧に決まっている。そして、どの楽器も突出しないかわりに、集合した音が肉体となり人格を持ったように動き出す。プログレ・バンドとも違う、行き当たりバッタリにノイズを垂れ流すバンドでも無い、狂気の中に知性すら感じさせる演奏だ。後半、ギラが激しく両手を振りながら狂ったように踊り出す。曲が終わり観客に微笑んで見せる表情は満足げだ。

PHOTO:WATARU UMEDA

一曲が終わると、再びバンドが音を鳴らし、延々とジャム・セッションのようなものが繰り返されるが、ほとんど展開というものをしない。スワンズの音楽にはワンコードを延々とループさせるブルース、ファンクが深い所に潜んでいるのだろうか? 開演前のSEは、実は彼らのルーツだったのかもしれない。繰り返される重いビートに徐々に恍惚となる観客を前に、パーカッションがチャイナ・シンバル2台を激しく叩き、ギラはスティール・ギターと向き合いながらギターを掻き鳴らす。時折叫ぶギラの顔面が紅潮している。ただ爆音を鳴らすと言っても、これだけの音圧をバンド全体で出せるのは圧巻の一言。ラスト近く、ギラがギターも置いて何やら大きな数珠の様なものを手にフィードバック音の中でバンドの音をもっと上げろ! とばかりに両手を広げ煽る。激しくアジテーションしながら、首を切るポーズを何度も見せる。アンコール途中、いつ果てるともわからない、延々と続く爆音の繰り返しの中で、観客に背を向け両手を広げて指揮者のように振る舞うギラの姿は「羊たちの沈黙」のレクター博士の名シーンを彷彿させた。その光景が、爆音と共に頭から離れない。約2時間半に渡る、凄まじいライヴであった。
(岡本貴之)

PHOTO:WATARU UMEDA

〈SWANS来日公演〉
2013年2月19日(火)
代官山UNIT OPEN 19:00 START 20:00
観客限定400 名

セットリスト

1. TO BE KIND
2. MOTHER OF THE WORLD
3. COWARD
4. SHE LOVES US
5. NATALIE
6. THE SEER
7. OXEGEN

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