平日のゴルフ場のクラブハウスは、談笑するシニア世代で溢れかえる。接待ゴルフ利用が減り続ける一方で、リタイアした団塊世代は、いまや日本の娯楽ゴルフの中心となっている。だが、そうしたシニアゴルファーの最大の悩みは、やはり「飛距離」なのだという。
今から5年前、団塊世代の定年退職が始まった。それと時を同じくして、ゴルフ界から姿を消したのが、いわゆる「高反発ドライバー」だ。2008年のゴルフ規則改正で“使用禁止”となったのである。
「米国のプロツアーでの飛距離が伸びすぎたために、1999年に反発係数を抑えるルール変更が実施されたのが発端です。日本でも2008年からゴルフ規則に導入したため、前年の2007年から各メーカーは高反発を製造しなくなりました」(ゴルフ誌記者)
それに伴って、ゴルフショップの店頭から高反発クラブは姿を消した。
「海外向けの商品を扱っているゴルフショップもあったが、違反クラブというイメージが強く、ショップ側も置くことを躊躇していた」(都内のゴルフショップ)
では、なぜ“違反クラブ”がここにきてシニアゴルファーの手に届いているのか。別に昔のクラブを引っ張り出してきたわけではない。「新品の高反発クラブ」が、今まさに市場では大人気となっている。ユーザーの「どうしても飛ばしたい」という要望に応える形で、昨秋頃から高反発ドライバーの生産を再開するメーカーが出てきたのである。
ここで心配なのは、「高反発ドライバーは違反ではないのか」という点だ。日本ゴルフ協会に聞いた。
「規則を統括する立場としては、ゴルフ規則で使用できない道具でプレーされることは容認できません。ただし、健康や親交を深めるためのプレーなど、個人の目的まで否定しません」
つまり公式戦や月例会などの競技では使えないが、プライベートで使うのは自由という見解だ。実際に競技に出場するアマチュアゴルファーは「ゴルフ人口の数%」(ゴルフ誌記者)だけに、大半のゴルファーは高反発ドライバーを使える立場にあるといえる。
会社のコンペなどでは、主催者の判断次第ということになる。高反発ドライバーの使用をOKしているコンペの幹事はこういう。
「ゴルフはハンデが与えられるスポーツという考えから、60歳以上や女性、初心者には高反発ドライバーの使用を認めました。すると伏兵がドラコンを獲得したり、意外な優勝者が出たりするなど、大いに盛り上がりました。ただし使用する場合には事前申請を条件としています。そうすることで参加者全員がハンデを容認し、心から祝福することができます」
※週刊ポスト2012年11月16日号