ビジネス

新入社員研修で企業が注力する項目は「怒られ方を学ぶこと」

 4月、桜の咲く季節は、新入社員の季節でもある。真新しいスーツを着こんだフレッシュマンは入社式を終えた後、会社が用意している研修を受けることになる。

「オイッ、そこ! 何で人の話を聞くときに腕組みしてるんだ!」

 穏やかに進んでいたビジネスマナー講座。突然、講師の男性が声を張り上げた。まだ学生気分が抜けないのか、なかにはウトウトしながら講義を受けていた新人たちもいた。だが、怒号で研修室の空気が凍り付く。

「腕組みは人を拒絶するポーズです。取引先との交渉や上司の指示を聞くとき、腕組みをしていると相手に悪い印象を与えます。今後はヒアリングの態度を改めてください」

 なぜ腕組みをしてはいけないのか。講師はわかりやすく合理的に説明した。だが、この“怒号指導”の肝は、そこではない。講師が新人たちに続ける。

「ビジネス現場に配属されれば、上司から怒鳴られることもあります。だけど、上司はあなたが嫌いなわけではない。活躍してもらいたいという愛情があるから、叱っているんです。ぜひ改善して仕事を成功させ、上司の期待に応えてみてはどうでしょうか」

 いま各企業が新入社員研修で注力する項目のひとつが、「怒られ方を学んでもらうこと」だ。

 日本生産性本部によると、今年の新入社員の特徴は「何事も安全運転の自動ブレーキ型」なのだそうだ。そのココロは、“頭の回転は速いものの、困難な壁はぶつかる前に未然に回避する”ということらしい。

 だが、少子化時代の若者たちは“困難な壁”にぶつかると弱い。厚労省によると、大学新卒の入社3年以内の離職率は3割前後。各企業にとってみれば、新人の「ストレス耐性」をいかに高めるかが、研修の重要な目的なのだ。

『人材教育』元編集長で、社員研修に詳しい根本英明氏の指摘。

「入社ホヤホヤの新人にいきなり強烈なストレスを与えるような研修を行なうと、パワハラやブラック企業などといわれかねない。そこで、最近では教育係の先輩社員に“叱り方の研修”をする企業もあります。人格を否定するのではなく、どうやって新人を前向きにさせるようにうまく叱るか。“新入社員教育のための教育”まで必要な時代です」

※週刊ポスト2014年4月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン