ライフ

夏の朝採れ野菜は帰宅後すぐ調理 常温1日で美味しさ半減も

「朝採れ野菜」の美味しい食べ方は

 夏になると増える「朝採れ野菜」はなぜ美味いのか。味を落とさず保存する工夫は? 夏の愉しみについて食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏のアドバイスを紹介する。

 * * *
 夏になると、スーパーやデパート店頭で「朝採れ!」「産地直送」などのうたい文句が増える。とりわけ8月には「朝採れ野菜」の代表選手、「ゴールドラッシュ」「ピュアホワイト」など生食もできるとうもろこしが店頭をにぎわす。北海道フェアなどでは、朝採れの野菜が「16時以降限定」という形で空輸されることまである。

 ここまで夏野菜の「朝採れ」が珍重されるのは、単に「新鮮」というだけの理由ではない。日がのぼる前の「朝採れ」が一番うまいからだ。植物は日中、日の当たる気温が高い時間帯には呼吸が活発になる。実をつけた状態のとうもろこしは、実に含まれる糖分をエネルギーとして使うことで、実の糖度が落ちる。つまり味わいを落としてしまう。日中には植物としての成長が優先され、日の落ちた夜になると呼吸が減る。成長のためのエネルギーが葉から実へと送られ、日がのぼる直前にエネルギーが満タンになる。つまりうまみが最高潮になる。だからこそ、朝が一番甘く──うまくなる。

 では空輸までして「産直」をする理由はというと、やはり「呼吸」がポイントとなる。とうもろこしをはじめとした、「青果」は収穫されたあとも「呼吸」を続ける。そのエネルギー源は当然実の糖分。つまり収穫後に時間がたつほど、味が落ちてしまう。当然、われわれ消費者としては購入したら帰宅後即、調理したいところ。どうにも調理できないときには、皮つきのままぴったりとラップに包んで冷蔵庫へ。ただし、常温だと1日でおいしさが半減するとも言われていて、以前取材で訪れたとうもろこし農家は「もいでしまったとうもろこしは、そのまま保存するより、早めにまとめてゆでてしまったほうがおいしい」と言っていた。

 以前、この項で枝豆農家に伝わる「枝豆は湯を沸かしてから収穫すべし」ということわざを紹介したことがある。枝豆もとうもろこし同様、収穫後に呼吸をする際に実に蓄えた糖をどんどん使ってしまい、鮮度が落ちるという。そして枝豆もとうもろこしも、呼吸量が多いため、おいしさがどんどん失われていってしまう。

 「いただきます」が「いきものの生命をいただく」ための儀礼であることはご存じの向きも多いだろう。そして同じものをいただくなら、よりおいしく、心に残るように味わう。そのために知っておいたほうがいい、いきものの仕組みは数限りなくある。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン