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山本 久美子
2014年9月25日 (木)

坪単価340万円超の「プラウドタワー立川」が早期に売れた理由

JR中央線立川駅直結となる「プラウドタワー立川」完成予想図(写真提供:野村不動産)
写真提供:野村不動産

「プラウドタワー立川」」は、駅直結のタワーマンションなので、人気が出ることは分かっていた。しかし、坪(3.3m2)単価340万円超えと聞いて、その売れ行きに注目していた。それが正式にモデルルームをオープンしてからわずか2カ月前後で、第1期250戸(1次230戸・2次20戸)を完売したという。その理由を探ってみた。

坪単価340万円超なら都心のマンションが買えるのに?

まず筆者は販売のスピードに驚いた。全戸319戸のうち、販売対象は292戸なので、第1期1次の230戸だけで約8割を販売したことになる。これだけの規模であれば、一般的に第1期は半分程度として、その後も何期かに分けて販売を続けるものだ。

正式にモデルルームがオープンしたのが6月21日、第1期1次が完売したのが7月20日なので、営業期間わずかに1カ月。その2週間後には、第1期2次を完売しているので、未販売住戸は42戸。販売戸数全体の14%を残すのみという勢いだ。もちろん、野村不動産の会員や事前問い合わせ客などに行う「事前案内会」を5月10日から開始しているが、それでも驚きのスピードだ。

もちろん割安な物件であれば、販売スピードは上がるが、この物件は坪単価340万円超とむしろかなり高い。同社では、少し前に同じ「立川」駅徒歩4分の新築マンションを販売しているが、その坪単価は253万円だった。同じ駅で比較しても開きが相当あるうえ、2013年秋に販売され、大規模再開発として話題になった「富久クロス」(東京都新宿区富久町、総販売戸数992戸)を上回る価格設定なのだ。かたや新宿区のど真ん中。つまり、それだけの価格帯のマンションを買える人は、立川よりもっと都心部のマンションでも買えるはずということだ。

野村不動産では、7月10日に報道関係者向けの発表会を行っており、筆者もそれに参加した。街としての成長著しい立川駅に直結する、タワーマンションではあるが、292戸をその価格で売り切るのは大変ではないかと危惧したものだが、野村不動産としては勝算があったということだろう。

駅直結の地元ナンバーワン物件、その希少性に地元の富裕層が注目

プラウドタワー立川の販売チーフ栗林巧さんに、契約者の動向をうかがった。

エリアでは、立川市とその西側周辺(青梅市、日野市、あきる野市、昭島市等)が大半で、ローンを組まずに購入できる地元の富裕層がこぞって買ったという構図だ。年齢層としては、30代~40代の働き盛りの世代も4割強いるが、55歳以上=プレシニア層以上が4割と多い。居住人数は平均で2.6人。2人が4割、3人が2割、単身が1割、残りが4人以上で、2人居住ではシニアカップルとDINKSと呼ばれる共働きカップルが半々程度だという。

では、契約者はどこを評価したのだろう?
契約者が最も評価したのが「駅直結」という点。「当社では駅直結の大規模マンションを何棟か手掛けていますが、駅直結のマンションは評価が高いことが分かっていました。加えて、JR中央線特別快速停車駅の立川駅直結というのは、さらに希少性が高まります」と栗林さん。

単に駅徒歩2分とは違うのだろうか?
「駅に近いマンションは供給される可能性が高いですが、駅直結となると同じ条件の物件が供給される可能性が極めて低いので、資産価値も高まります。また、契約者の方は、生活上の利便性も評価されています」(栗林さん)。立川駅の場合は、駅周辺に百貨店などの商業施設や図書館、スポーツクラブなどが集約されており、それらがデッキでつながっているため、上り下りすることなく回れるというのだ。

【写真1】デッキでつながれた周辺の商業施設など(写真撮影:山本 久美子)

【写真1】デッキでつながれた周辺の商業施設など(写真撮影:山本 久美子)

【写真2】駅前から続くデッキで上り下りなく移動が可能(写真撮影:山本 久美子)

【写真2】駅前から続くデッキで上り下りなく移動が可能(写真撮影:山本 久美子)

【写真3】徒歩500m圏内までデッキが続いている(写真撮影:山本 久美子)

【写真3】徒歩500m圏内までデッキが続いている(写真撮影:山本 久美子)

駅直結のプレミアムに、立川駅のポテンシャルの高さが加わり、その相乗効果を上げたという点も、プラウドタワー立川の大きな特徴。立川駅は、JR中央線、南武線、青梅線が乗り入れ、多摩モノレールへの乗り換えもできるターミナル駅で、伊勢丹や高島屋といった老舗デパートに加え、IKEAやららぽーとの出店が決まり、ますます利便性を高めている。

また、立川エリア最高層のタワーマンションなので、ステータスシンボルになるという点も大きいようだ。“駅直結のあのマンションに住んでいるんだ”と指差して言える満足感が、価格に納得感を出すということだ。

ほかにも「売れづらい条件がなかった」ことが、販売のスピードアップにつながっていると栗林さんは見る。マンションの低層階には行政施設や商業施設が入ることになっているので、マンションの最下層が9階(通常のマンションでいえば13階相当)になるが、周囲に高い建物がないので、最下層でも視界を遮られることがないという。しかも、北側は国営昭和記念公園、南側は富士山、西側は多摩丘陵などが見え、どの住戸でも比較的眺望がよい点も、売れづらい住戸が生じなかったことにつながっている。

地元の年配富裕層の購入条件をクリア?

では、プレシニア層以上がなぜ多いのか?
当初懸念したように、通常の富裕層であれば、都心部に近いエリアでもマンションが買える。比較検討して、都心部を選ぶ人は、もちろんこのマンションを買わないだろう。一方で、地元(立川駅から広がる沿線沿いのエリア)への愛着が強く、都心部への関心が薄い富裕層もいる。それがプレシニア層に多かった、ということではないだろうか? 広い自宅はあるけれど、地元のナンバーワン物件であれば、住んでみたい、とりあえず買っておきたいと購入に動いたということか。子どもに受け継がせるにも適していると考えたり、相続対策の一環ととらえたりした人もいるだろう。

住宅も需要と供給のバランスで取引されるので、相場より高くても、価値を見出す需要が大きければ、問題なく売れるということなのだが、やはり不動産の相場は難しいと痛感する筆者であった。

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