小浜島の「ダートゥーダー」 迫力の黒顔 謎も魅力


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 沖縄にはいろいろな芸能が伝わっていますが、八重山地方の小浜島にはひときわ変わったお面の芸能「ダートゥーダー」があります。高い鼻の黒いお面、金太郎のような前掛けを着けた4人のダートゥーダーが「フッ」という声で飛んだり、組み体操のようなコミカルな動きをしたり、見る人を引きつけます。歌や動きの意味は謎の部分が多いそうです。どのような秘密が隠されているのでしょうか。

「さんしんひー」の歌に合わせ、右向きに見渡すダートゥダー=1月30日、西原町中央公民館

 ダートゥーダーは小浜島の結願祭で演じられていましたが、奇妙さが島の人に敬遠されたのか、しばらく途絶えていました。その後、文化的な価値が見直され、2001年の結願祭で75年ぶりに復活しました。
 ダートゥーダーの研究を長年続け、本も出版した小浜島出身の黒島精耕さん(78)=石垣市=は「天に向かって飛ぶ動きなど、ルーツはカラスてんぐにある」と言います。仏教を信心する集まりから生まれ、山岳信仰の修験道(山にこもった厳しい修行で悟りを開くことを目指す)を実践する修験者の遊行芸として、全国で邪を払い、福を招いてきたものが元です。それが島に伝わったそうです。黒島さんは本土の文化に関連が深いことを見いだし、演じ手の後継者育成にも尽力しています。
 琉球大学八重山芸能研究会(八重芸)の第48回八重山芸能発表会が1月30日に西原町で開かれ、ダートゥーダーが上演されました。八重芸は島の人に了解を得て、長年ダートゥーダーを演じています。
 暗い舞台に三線の音が響き、ドラが打ち鳴らされます。
 「たーかねやーまーかーら たーにしーくみーりーばー(高嶺山から谷底見れば)」
 4人のダートゥーダーが左右にスクワットをしながら登場します。列はゆっくりと舞台から消えていきます。
 「ダートゥーダー ダートゥーダー」
 高らかな声が響き、棒を持ったダートゥーダーが左右に体を回転させながら舞台に現れ、四角形に並びます。「フッ」と、4人は天に向かって、ジャンプ。コツコツコツと互いの棒をたたき、前かがみになりました。

 「さんしんひーむー さーんさんさんしんひ」
 男性1人の歌声に合わせて、ダートゥーダーはゆっくりと左右を見渡し、会場は不思議な雰囲気に包まれます。歌が終わり、4人は舞台からはけ、横ステップで再登場しました。
 「うきちーちーゆーまーりーなー」
 聞いても意味が分からない歌声に合わせ、ダートゥーダーは左右を見渡し、天を指さして歩きます。今度はペアで抱き合い、1人は逆さまに担がれ、足をばたつかせて去っていきました。会場に拍手が起きますが、まだ「ダートゥーダー」の声が続きます。
 「うわっ。また出てきた」と、どよめく会場。短距離走のボルト選手のようなポーズで指さしながら、後ろ向きに歩くダートゥーダーに導かれ、3人で肩車したダートゥーダーが指さしを合わせます。舞台を1周し、演目は終わりました。指さしは、魔よけの呪術的儀礼の意味があるそうです。
 八重芸の松田脩平さん(20)は「面は視野が狭いから心でつながって演じた」と言います。小幡僚佑さん(19)は暗い場所にいると「宙に浮いているような感覚になる」と語ります。比嘉拓未部長(22)は「伝統を守りたい」と強調しました。皆さんの地域にも魅力的な芸能が眠っているかもしれませんね。
文・関戸塩
写真・屋嘉部長将