ライフ

和牛商法 会社が破綻した場合クーリングオフは適用されない

竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「和牛育成預託契約をしていた牧場が倒産しました」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
母の老後の資金のためにと勧められ、牧場と和牛育成預託契約をして投資してきました。ところが、資金繰りが悪化したため、牧場が倒産してしまいました。会社は民事再生法を申請したそうですが、これまで投資した資金はどうなるでしょうか。出資者は諦めるしかないのでしょうか。

【回答】
和牛育成預託契約とは、和牛の子牛を業者から買い、そのまま業者に預けて育ててもらい(即ち育成預託)、生育後売却し、その代金から当初の代金(投資金)以上の配当金をもらう契約です。

業者が一頭の子牛の権利を何口かに分けて売るので、購入者と特定の子牛との繋がりは薄く、単に将来の配当を受ける権利の売買のようになっています。そして、実際には子牛がいないのに投資家を募る詐欺的商法が横行しました。

そのため以前からあった、特定商品等の預託等取引契約に関する法律の対象に「哺乳類又は鳥類に属する動物であって、人が飼育するもの」が追加され、和牛商法も規制の対象になりました。法律では、業者に対して契約締結前の文書提示や、取り交わすべき事項、さらには勧誘に当たって不実を告げてはならない事項などについても規制しています。

また、契約書などの法定書面を受け取った日から起算し、14日以内に違約金等の支払いがなく解約ができること(いわゆるクーリングオフ)になっています。さらにクーリングオフ期間経過後でも、投資家は契約を将来に向かって解除できます。

その場合、代金から預託の経費等が控除されて返金されます。もし契約で違約金の定めがあっても、商品代の10%までに制限されます。またこの法律は、違反業者を刑事罰で処罰することにしています。

しかし、業者が破綻した場合に有効な回収手段を提供する法律ではなく、ご相談の場合も民事再生手続きで、権利を届け出て平等な弁済を受けるしかありません。仮に役員などに不正があり、会社に損害をかけている場合には、民事再生手続で選任される監督委員により糾され、回収が図られることもあり得ます。手続きの進行に注意してください。

※週刊ポスト2011年11月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン