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松木安太郎のサッカー解説 分かりやすく専門性高いその実例

 サッカー日本代表が、11月の欧州遠征で強豪オランダ・ベルギーとの2連戦を戦い、1勝1分けの好成績を収めた。来年のW杯に弾みをつけた格好だが、この2試合の中継(テレビ朝日系)で解説を務めた松木安太郎氏も、注目を集めた。

 松木氏の解説は「絶叫解説」といわれ一部では絶大な人気を誇るが、その反面、たしかなサッカー眼にも定評がある。ベルギー戦でもFWロメル・ルカクに対し、松木氏は前半18分、30分、後半15分、19分と4度にわたり、「20番(ルカク)はスペースがなければ大丈夫」と指摘。実際、日本代表はルカクにスペースを与えず、シュート0本に抑え、仕事をさせなかった。前半20分には、松木氏はこう話していた。

「本田選手が狙われているなら、サイドに出て行くといいですよね。ポジション替えて流動的に」

 事実、その後本田は松木氏が指摘した通り、サイドに流れるプレーに切り替え、ペースをつかみ、後半に逆転ゴールを決める活躍を見せた。

 このように松木氏のサッカーを観る眼は鋭い。ただ、この日FW岡崎が日本の3点目を決めたときに発した「今日カツ丼喰ったからね、俺たち」という、およそサッカーとは関係のない“カツ丼を喰ったから、カツ”というゲン担ぎ発言などが目立つため、一見すると“ただ騒いでいるだけ”のように思えるのだ。

 また、松木氏は、テレビの特性を充分に理解した解説をしているという。テレビ局関係者はこう説明する。

「テレビは尺の問題もありますし、いかに短い言葉で、万人にわかりやすく伝えるかが勝負。コメンテーターには、そういう能力が求められます。これは、サッカー解説者とて同じ。松木さんは“わかりやすくまとめる力”を持っているのです」

 ベルギー戦は、そうした松木氏の解説の魅力が存分に発揮された真骨頂であった。まずは、前半32分、FW柿谷がオフサイドを取られたシーン。FW出身である中山雅史氏の解説を、こうまとめた。

中山氏:「もう一つ膨めれば、オフサイドじゃないんですよね。FWだと前へ前へという意識が強くなってしまうんで、どうしても一歩、相手より先に出たくなっちゃうんですけど」
実況:「後ろに戻れないまでも」
中山氏:「横に1歩戻れれば」
松木氏:「“急がば回れ”だね」
中山氏:「……ええ。そうですね」

 たしかに解説者が専門用語を使えば、「よく知っている」「詳しい」などと評価される傾向があるが、難しいことを分かりやすく説明できるのが、真の専門家だ。

 サッカー初心者にとって、オフサイドはもっとも理解しにくいものといわれている。そういう意味で、松木氏の“急がば回れ”は老若男女誰が聞いても理解できる非常に明解な説明なのである。FWはオフサイドになりそうになったら、急いで近道をするよりも、むしろ回り道でも安全な道を通ったほうがいい。中山氏が約17秒を要した説明を、松木氏はたった1秒でまとめた。

 後半37分、MF香川真司に代わってMF細貝萌が投入される。選手交代で、システムが変更になりそうな場面。一般視聴者にとっては、非常にわかりづらいシーンだが、実況とピッチリポーター・名波浩氏のやりとりを踏まえて、松木氏は簡素にまとめた。

実況:「名波さん、遠藤がちょっと前に出るんですかね?」
名波氏:「遠藤をちょっと前に出してますし。遠藤自体、ボール触れてないんで、ポジション変えるのは有効的かもしれないですね」
実況:「3バックに代えますか? いや、今、酒井宏樹が戻ってます。一時的かもしれませんが、遠藤がトップ下に入って、本田が右サイド、岡崎が今、左に回っています」
松木氏:「いやだから、攻めに強いヤツが前線にいて、守りに強いヤツが中盤から後ろという考え方をすればいいってことですよね」

 少し乱暴な物言いにも聞こえるが、いわれてみれば、遠藤保仁、本田圭祐、岡崎慎司はたしかに“攻めに強いヤツ”だ。日本代表戦を少しでも観ている視聴者であれば、理解ができる。そして、DFの酒井宏樹、ボランチとして投入された細貝萌はたしかに“守りに強いヤツ”なのだ。これほどわかりやすい解説はない。

 日本が同点に追いついた直後、ベルギーの陣形が変容ぶりを目の当たりにすると、「これ不思議ですよね。得点は相手を崩すんだよね……当たり前か」と一人ボケ突っ込みも魅せた松木氏。親しみやすさ、万人へ伝える力、たしかなサッカー眼……松木解説の愛される理由が存分にわかる一戦だった。

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