世間では「二世帯住宅」や「賃貸併用住宅」への関心が高まっている。そのカギを握るのが、平成25年の“税制改正”。これにより平成27年1月から「相続税」の大幅な増税が決まり、課税対象者が増えることになりそう…ということが大きな原因らしいのだ。そこで、相続税対策としての「二世帯住宅」「賃貸・店舗併用住宅」について注目してみたい。今回は、「二世帯住宅」について紹介しよう。
平成25年の税制改正により、相続税の基礎控除額は平成27年以降、下記のように引き下げられることになった。
基礎控除までの遺産額なら相続税は課税されないが、この基礎控除額を超えると相続税の対象に。つまり、基礎控除額の引き下げにより、相続税の課税対象者が増える可能性が高まったというわけだ。
これを緩和するため、拡充されたのが「小規模宅地等の特例」。居住用や事業用の宅地等については、一定面積まで評価額が減額されるという特例だが、下記のように居住用の宅地の限度面積が拡大されるとともに、居住用宅地と事業用宅地の完全併用が可能になるなど、これまで厳しく定められていた要件が緩和されることになったのだ。
◎居住用と事業用の宅地の適用面積
【改正前】居住用240㎡・事業用400㎡までの合計400㎡まで適用可能
↓
【改正後】居住用330㎡・事業用400㎡までの合計730㎡まで適用可能
詳しくは『都心部に一戸建てを持つ人は要注意!15年1月相続税改正のポイントは?』の記事(https://suumo.jp/journal/2014/03/31/60098/)を参考にしよう。
まずは、「二世帯住宅」について説明しよう。
親世帯と子世帯が同じ建物で世帯を分けて暮らす「二世帯住宅」。それぞれのライフスタイルに合わせて、居室以外の生活スペースや設備を世帯間でどのように共用するかにより、プランはいくつかの種類に分けられる。
一般的には主に3タイプに分けられることが多いようだ(名称や分け方の基準などは住宅メーカーにより異なる)。
【1】玄関やキッチン、浴室、トイレなどを共用する「共用(同居)」タイプ
【2】一部を共用する「部分共用」タイプ
【3】すべて別々に設ける「完全分離」タイプ
建物の分け方としては、階段移動のない1階を親世帯、玄関などがなく広いスペースがとりやすい2階を子世帯、というように、上下階で世帯を分けるケースが多い。
二世帯住宅で暮らすことによる、親世帯・子世帯へのメリットもさまざま。高齢の親を近くで見守ることができる「安心感」もそのひとつとしてよく挙げられる。例えば、親が病気やケガなどをしたときに早急な対応がしやすいというのはもちろん、特に最近では高齢者を狙った犯罪を防止しやすいといった観点からも「安心感」を二世帯住宅のメリットに挙げる人が増えているようだ。
また、近年の傾向としては、ワーキングマザーが増えてきたことに伴う二世帯住宅の増加も見られる。保育園への送り迎えや仕事から帰宅するまでの世話など、親世帯に子育てをサポートしてもらえるといった子世帯側のメリットはもちろん、かわいい孫にいつでも会えるといった親世帯側のメリットもある。以前は夫の親との二世帯住宅が多かったが、最近では妻の親とのケースも増えてきている。特に妻の親との二世帯住宅を希望する人には、このようなケースが増えてきているようだ。
さらに、土地や設備を共用することによる「経済性」もよく挙げられるメリットのひとつ。この経済的メリットはプランの共用部分が多いほど大きく、例えば小さな玄関2つよりも大きな玄関1つのほうが開放感を出すことができ、冷蔵庫も大型1台のほうが電気代は抑えられ、お風呂を共用する場合は浴槽に張るお湯の量を半分に抑えることができる。
スペースや設備を共用しない完全分離タイプの二世帯住宅でも、同じ建物の中で暮らすというだけで経済的メリットはたくさん。例えば、ときどきは一緒にごはんをつくる、おかずを一品ずつ交換する、たまにしか使わない道具などはそれぞれで買わずに共用する、安くまとめ買いしたものをシェアする…などなど、暮らしの中のさまざまなシーンで、お得なことがあるだろう。
また、二世帯住宅は、住みながらのリフォームがしやすいのもメリット。独立した二世帯住宅であれば、キッチンやバス、トイレなどの設備が複数そろっているため、例えば1階の親世帯スペースをリフォームする際は2階に仮住まいをするなど、同じ建物内で暮らしながらリフォームできる。荷物の移動の負担が少なくてすむうえに、工事の様子を毎日チェックできる。
これらのメリットに加えて、相続税対策としても改めて関心が高まっているのが、二世帯住宅。なかでも“土地”の評価額を抑えることにより相続税を軽減できる「小規模宅地等の特例」に注目したい。亡くなった親と相続する子がそれぞれ別に住む場合は、親の土地だけが対象となるが、二世帯住宅なら、同じ土地に特例が適用され、相続税の評価額が最大80%減額できるというわけだ。
さらに今回、二世帯住宅についての要件が緩和されたことも注目されているポイントのひとつ。これまでは、玄関が共用、または玄関が別でも建物内で行き来できる構造でなければならなかったが、構造に関する要件が外れ、すべての二世帯住宅に特例が適用できることになったというわけだ。これらにより、二世帯住宅を建てることによる相続税対策が考えやすくなったといえそうだ。
二世帯住宅を検討していた人にとっては、今回の相続税改正はメリットも多いといえそう。ただし、節税のことばかりを考えて無理に二世帯住宅での暮らしに踏み切ってしまわないよう注意が必要。あくまで親世帯・子世帯の合意のもと、信頼できる施工会社など専門家の意見にも耳を傾けつつ、円満な二世帯生活が送れるようなプランを考えて、この制度を有効に活用したい。
次回は「賃貸併用住宅」についてチェックしていこう。