森谷明博●わたみん家・大船店店長

僕の原点って大学の寮なんです。寮生たちと「ワッショイ、ワッショイ」と言いながら大騒ぎする。その笑顔って忘れられない。だから僕が目指すのは、お客様の笑顔、満足度、感動、涙を生み出し、働く仲間が笑顔で働けるような店です。

夢のためには戦わなきゃいけないこともある。本部から監査が来たことがあります。飛ばされることもあるから、普通の店長はビビリながら対応します。でも僕は違った。その監査の人が、お客様がごった返している時間帯にやって来た。絶妙な加減で焼き上がった焼き鳥を持っている僕に、いくらでも後回しにできるような質問をしてくる。だから僕は「とりあえずこれ、運んでもらっていいですかね。冷めるから」って言った。喧嘩を売ったんじゃない。「1人でも多くのお客様にあらゆる出会いとふれあいの場と安らぎの空間を提供すること」がワタミの理念だから、監査よりもお客様が大事。僕は目の前の焼き鳥が冷めていくのが耐えられなかったんです。店舗の閉鎖が決定しかけるぐらいの大問題になりました。

でも、もっと上の人たちは理解があって、今も無事に店が続いている。そうやって本気で仕事しているから、ワタミグループが危機的な状況でも前年同月比で130%の売り上げができました。全国でもトップクラス。僕が偉そうなことを言ったら、桑原社長は「ああ、また森谷か」と笑うかな。

ワタミグループ内で不幸な事件が起きて、人が亡くなりました。“ブラック”という批判も正しい部分があるのでしょう。痛切な反省をしなくてはいけません。

従業員にはきちんと休んでもらっていますけど、僕はこれからも働きますよ。「ブラックだ」なんて声は関係ない。会社に必要とされているかすらわからない週休2日の悠々自適の人生もいいでしょう。だけど社会から必要とされるべく毎日懸命に働く人生にだって価値はある。本音を言えば、自分の5歳の息子と3歳の娘ともっと話したいし、だっこしてあげたい。だけど、がむしゃらに仕事する僕の背中からいつか何か感じ取ってくれるだろうと信じています。子どもが大人になったとき、「お父さんてすごいなぁ。僕も頑張らなきゃ」という心のバトンを渡したいのです。

一生懸命働くことがダメだなんて僕には信じられない。本当の優しさ、人生の重さ、そういったものが、苦難やしんどいことから逃げ続けて得られるとも思えない。

サービス業に求められることって、すごく単純なことだと思うのです。自分の感動を思い出すこと、それを人に伝えて共有するために一生懸命になること。そうすれば、人手が足りないなんて嘆かなくてもいいようなすばらしいスタッフに恵まれるはず。僕はどんなに急な坂道も、お客様とスタッフと一緒にワッショイ、ワッショイと笑い飛ばして駆け上がりたい。

(村上庄吾、原 貴彦、市瀬真以、奥谷 仁=撮影)
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