昭和39年に入居が開始された49棟1568戸の規模を誇る東京都足立区の「花畑(はなはた)団地」。50年目という節目に新しい団地の住まい方を提案するべく、装いも新たに大変身を遂げました。(https://suumo.jp/journal/2014/02/28/58950/)
今回のプロジェクトは、UR都市機構としては初めて手掛ける「1棟丸ごとリノベーション」。果たして、どのように変わったのか?現地内覧会を取材して来ました。
現在、全国各地には「入居者の高齢化」と「建物の老朽化」という「ダブル高齢化」問題を抱えている団地が多くあります。築後数十年を経た団地は、建物自体の老朽化と、例えばエレベーターがない、間取りが今のトレンドとは言いにくい、設備も水まわりなどが古いままで使い勝手が悪いなど、物件が持つ魅力と訴求力が低下している現状が否定できません。
また、団地最盛期だった1960年代〜1970年代に入居した人たちがそのままそこで年を重ね、65歳以上の高齢者の割合が高くなっているうえに、若い入居者が増えないという問題も加わり、それが「ダブル高齢化」となっているのです。今後ますますこのような団地が増えてくると懸念されています。
そんななか、ダブル高齢化問題を抱える団地のひとつ「花畑団地」は、その問題を解決する取り組みとして、平成23年に「花畑団地 団地再生プロジェクト」が始動、デザインコンペを経て、一棟丸ごとリノベーションが実施されることになりました。
今回リノベーションの対象となった住棟は、1フロアに2戸配置で全戸角部屋の5階建ての「ボックス住棟」。広場のなかに建ち、周囲をぐるっと緑に囲まれた花畑団地のシンボルです。
デザインコンペのテーマは「団地での新しい生活シーン」。最優秀賞を受賞した藤田雄介氏(Camp Design inc.)監修のもと、4タイプの住戸プランがつくられました。
「空が広い。」藤田氏の花畑団地の第一印象から、その印象を活かしたデザインを模索し、「木製サッシ」と「ルームテラス」の採用という今回のリノベーションのアイデアが生み出されました。
木製サッシは建物にぬくもりを与えるとともに、室内の建具と窓を木製にすることにより、内側と外側との連続性を与え、外の景色へと意識が導かれるように配慮。ルームテラスでは花畑団地の豊かな環境を室内でも感じ、楽しんでもらえるとともに、住む人の使い方によって外からみた景観が変わることをイメージしています。
メインターゲット層は若い夫婦やファミリー層ですが、エレベーターを設置することで、高齢者層も不自由なく生活できる物件となっているのも特長です。
では、早速室内の特長を見てみましょう。今回、見学したのは他の居室からルームテラスが独立したAタイプです。
モデルルームに入ると、まず目にとまるのは木製サッシ。
リノベーション対象全住戸の窓に木製サッシを採用。ガラス部は複層ガラスのため、高い断熱効果が期待できるうえに、冬は結露しにくいという特性を持っている。
押入れに代わりウォークインクローゼットが新設されて、収納スペースの使い勝手が向上。取っ手が懐かしい印象の木製となっている点は、藤田氏の木へのこだわりを強く感じさせます。
そして、やはり目を引く大きな存在がルームテラス。デザインコンペで評価されたポイントは、花畑団地の住戸ごとにルームテラスの配置を変化させた空間づくりの巧みさだったとか。もともとは部屋だった場所の外壁を取り壊して、新たに窓のない半屋外空間としてつくり替えるための防水工事や断熱工事を行うことで、風と光をいつでも楽しめる開放的な空間を生み出しています。
実際にルームテラスに立つと、心地よい風を肌で感じつつも、適度な囲まれているプライベート感とゆったりとしたくつろぎ感を体験できます。家族団らんの場として、ご近所さんとのコミュニティ形成の場として、そしてプライベートな時間を楽しむ場として、ルームテラスは住まい手の気持ちまでも豊かにしてくれることでしょう。
花畑団地では敷地内に商業施設が2014年冬にオープン予定、また子育て・高齢者支援施設が2016年の完成が予定されており、今後さらに生活利便性の向上が期待できそうです。
モデルルームは全4タイプで、募集住戸は全10戸。家賃は7万1600円〜7万4400円(共益費2700円)。
入居者の募集は3月23日までとのことです。
今回のリノベーションは花畑団地にとってたった10戸のことでしかありませんが、この新しい住まいがどんな人を呼び、「ダブル高齢化」問題の解消のヒントになるのか、ぜひ、注目していきたいです。