<入居者プロフィール>
加瀬太一さん(30歳)/シングル/会社員
■ 住まいデータ
所在地:福岡県福岡市城南区
アクセス:西鉄天神大牟田線「高宮駅」よりバス15分
築年数:築38年
間取り:1R/約29m2
家賃:43,000円(管理費込み)
入居時期:2013年11月
昨今、首都圏では「カスタマイズできる賃貸住宅」が増えているが、福岡市城南区樋井川の「吉浦ビル」は福岡ではその先駆け的存在。躯体をむき出しにした状態で入居者を募集し、オーナーから渡される内装資金100万円をもとに好みの内装にリノベーションできるという仕組みだ。
「珍しい契約条件だったから最初は怪しいなと思いました(笑)」とは入居者の加瀬さん。以前は天神にもほど近い南区平和エリアの賃貸マンションに住んでいたが、コンクリート打ち放しの家に住んでみたいという思いがあり、新たな住まい探しをスタート。インターネットで「コンクリート・打ち放し・福岡市」などのキーワード検索をし、吉浦ビルを紹介している不動産サイトにたどり着いたのだそう。
もともとインテリアが好きでこだわりが強いこともあり、好みにカスタマイズできる賃貸物件に大きな魅力を感じたと話す。「天神など中心部からは離れていますが、普段は自転車で移動しているからあまり気になりません。自分のライフスタイルは保ちつつ住まいも充実しているから、かなりお得感がありますよ」
入居が決まると、部屋のデザインイメージを入居者とオーナーで共有し、それをもとに工務店へ必要な建材や作業費などの見積もりを依頼する。今回加瀬さんが思い描いた住まいは、インテリア雑誌から影響を受けた”ニューヨークのブルックリンの街並み”だ。古い建物や壊れたレンガなどをそのまま活かした空間にインスパイアされ、建材やマテリアル選びを行ったそう。
加瀬さんのイメージをもとにオーナーが業者へ見積を依頼したところ、なんと、資金の100万を大きく上回る結果に…。予算は抑えたい。でもこだわるところはこだわりたい。そこで、通常は職人さんの仕事である塗装や床張りを、工務店の指導を受けて加瀬さんとオーナーの吉浦さんの二人で行うことになった。
「ぼくの仕事が終わる夜の11時ごろから、夜な夜な塗装や床張りの作業をしました。ぼくも吉浦さんもこのとき初めて電動ドリルや電動ノコギリを使ったんです。大変だったけど、どんどん部屋ができあがっていく様子を見ているとめちゃめちゃ楽しかったですよ」
加瀬さんは吉浦ビルに住むまではDIYの経験はほとんどなかったそうだが、ここまで完成度の高い部屋ができたのはなぜだろう?
「良いオーナーに出会えたのが一番大きいと思います。自分で自由にカスタマイズしてみたいとはいえ、知識や経験がないと一人ではなかなかできないですよね。自分はオーナーがアドバイスをくれて工務店の方との接点をつくってくれたことでかなりスムーズに取り組めました。賃貸だけど自分の家をつくっているという感覚です。将来新築で家を建てる日のための予行練習をしているようでした。まだまだ福岡ではこのような賃貸住宅は少ないので、住んでみたいという人には伝えていきたいですね」
ビルの管理だけにとどまらない、新たな価値観をもって入居者の思いに寄り添えるオーナーがいることで、もっと住まいが豊かになる。吉浦ビルのオーナーと入居者の関係は、福岡の賃貸業界にとっての新しい風となるはずだ。