赤レンガの外観で親しまれてきた東京駅丸の内駅舎が、創建当時の姿で10月1日にグランドオープンした。幾多の文人にも愛されてきた東京ステーションホテルも、駅舎の保存・復原工事に合わせて全施設を改装し、10月3日に開業した。この巨大な建築物の耐震改修には、免震工法が採用されている。
2003年に国の重要文化財にも指定されている東京駅丸の内駅舎。1914(大正3)年に建築家・辰野金吾の設計により、鉄骨レンガ造りの3階建てで創建された。赤レンガの堂々たる姿で多くの人々に愛されてきたが、1945年の東京大空襲でシンボルだった南北のドームや屋根・内装を焼失。戦後、3階建ての駅舎を2階建て駅舎として再建していた。しかし、老朽化が進んだことから、耐震改修工事に合わせて焼失した部分も一緒に復原することとして、2007年5月に着工。約5年の歳月をかけて保存・復原工事を進めてきた。
元の丸の内駅舎は、太い松の杭約1万本を地下に埋め込んで支えてきた。1923年の関東大震災でも被害を受けなかった強靱な建築物だ。今回の工事では、この松杭に代わる約450本の新しい杭を地中20mまで打ち込み、2層の地下躯体を新設するとともに、地下躯体上部にアイソレータ352台とオイルダンパー158台の免震装置を設置し、巨大地震に耐えられるようにした。
JR東日本のリリースより抜粋転載
駅舎の3階部分の復元では、中央部の屋根や南北のドーム屋根の一部に、天然スレート(粘板岩でできた屋根用の薄い板)が使われている。東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の工場が、広範囲に散乱するスレートをこつこつ回収したものが、復元の一部に使われているという。
東京駅丸の内駅舎の耐震改修では、免震レトロフィット工法が採用されている。既存建物の最下層や中間層に免震装置を組み込み、建物を免震化する改修工法だ。
では、免震装置とはどういったものか。基本的な仕組みは、地盤と建物を絶縁し、その間に「アイソレータ(絶縁体)」を挟むことで、地震エネルギーを建物に直接伝わりにくくし、地震の激しい揺れを軽減させる。アイソレータにはいくつか種類があるが、ビルやマンションなどでは、ゴムと鋼板を交互に何層も重ねた積層ゴムを使ったものが一般的だ。アイソレータだけでは、建物の揺れがなかなか止まらないので、オイルダンパーや摩擦ダンパー、粘性ダンパーなど、建物の揺れを減らす「ダンパー」を取り付ける。この2つを組み合わせることで、地震の揺れを吸収するのが免震装置だ。
高層のマンションでも、この免震装置を組み込んだ「免震マンション」が増えている。免震構造の場合、地震の揺れが軽減されることで、建物の被害だけでなく家具の倒壊などによる被害も抑えることができる点が特徴。東日本大震災以降は、免震構造に加え、災害時のための非常用発電設備や防災備蓄倉庫などを装備するマンションも増えている。地震対策は、住まい選びでも重要なポイントだ。
東京ステーションホテル
HP:http://www.tokyostationhotel.jp/
鹿島建設「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」
HP:http://www.kajima.co.jp/tech/tokyo_station/index-j.html